ザイデルの5収差
電子線(光線)が完全な結像をすると仮定したときの軌道からのずれの量を収差という。単色電子線(光線)が近軸電子(光)線でないために生じる3次(光線が光軸となす角度αと光線の光軸からの距離rの積について3次)の収差の総称をという。5つの収差は、球面収差(α3に比例)、(軸外)コマ収差(rα2に比例)、非点収差と像面湾曲収差(r2αに比例)、歪曲収差(r3に比例)である。電子顕微鏡の場合、像拡大の初段、すなわち対物レンズに対しては、物体の拡大する範囲は小さいので、光軸上を通る電子線(r = 0)を考えればよい。したがって像のボケにはα3に比例する球面収差が最も重要である。理論上は次にコマ収差が重要である。(軸外)コマ収差補正の例はあるが、高倍率の像については(軸外)コマ収差の効果は小さい。後段にある中間レンズおよび投影レンズでは、物体(対物レンズで拡大された像)は大きいので、光軸から離れた場所を通る電子線による収差、すなわち距離rの次数の高い収差、非点収差、像面湾曲収差、歪曲収差が重要になる。最近は球面収差補正ができるようになっている。
ザイデルの5収差
ザイデル収差
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/09 06:51 UTC 版)
ザイデル収差(ザイデルしゅうさ)[1][2][3][4][5]は、幾何光学においてレンズや鏡で像をつくるときに生じるボケやゆがみなどの収差のうち、レンズにおいて単色収差すなわち色収差ではない単一の波長の光でも生じる収差で、近似計算において3次の項として説明できる収差を分類し説明したものである。名前は19世紀のドイツの研究者ルートヴィヒ・ザイデルにちなむ。5種類あることから「ザイデルの5収差」とも呼ばれる。
種類
ザイデル収差には以下の5種類がある。
- 球面収差
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光学系において点を光源とする光線が光学系を通った後、焦点1点に収束せず前後にばらつく収差。
→詳細は「球面収差」を参照
- コマ収差
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光軸外の1点を光源とする光が、像面において1点に集束しない収差。
→詳細は「コマ収差」を参照
- 非点収差
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光軸外の1点を光源とする光が、レンズに対して同心円方向と直径方向で焦点距離がずれる収差。
→詳細は「非点収差」を参照
- 像面湾曲
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レンズの前側と後側で、レンズに平行な焦点面が平面から平面に対応しない、という収差。
→詳細は「像面湾曲」を参照
- 歪曲収差
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正しい方眼の物体を光学系により投影した時、像が正しい方眼にならない収差。
→詳細は「歪曲収差」を参照
通常はこれらのすべての収差が複合して発生する。また、M像とS像での像面湾曲の度合いの違いが非点収差としてあらわれる、といったように、相互に関係している要素もある。これらはレンズ面に対する光線の入射角 に関して、スネルの法則を用いて光線の軌道を求める際に、sin α をテイラー展開した3次の項の係数としてそれぞれ表される。このため3次収差とも呼ばれる。
ザイデル収差は幾何光学的な分類方法だが、波動光学においても収差は波面収差として説明される。
参考文献
- ^ 応用物理学会光学懇話会;「幾何光学(POD版)」森北出版(2003)
- ^ 久保田 広;「応用光学(POD版)」岩波書店(2000)
- ^ 工藤 恵栄、上原 富美;「基礎光学」現代光学社(1990)
- ^ 左貝 潤一;「光学の基礎」コロナ社(1997)
- ^ 大坪 順次;「光入門」コロナ社(2002)
関連項目
ザイデルの5収差と同じ種類の言葉
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