サイクロスタイルと自動謄写器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 13:46 UTC 版)
「謄写版」の記事における「サイクロスタイルと自動謄写器」の解説
一方、英国ではハンガリー出身のデイビット・ゲステットナー(David Gestetner)が1881年、「サイクロスタイル・ホイール・ペン」(Cyclostyle wheel pen)を考案して特許を取得した。 ペン先には1インチあたり140個(140dpi)相当の細かい歯を持つ微小な鉄製の歯車を取りつけていて、金属板上にセットされた木枠に挟んで固定したワックス原紙に微細な穴を穿孔して製版したのち、謄写器の木枠に原紙をセットしインクローラーを用いてインクを圧着印刷するもので、製版器具の違いを除けばミメオグラフとほぼ同様の謄写版印刷技法である。ゲステットナーは器具に改良を加えた「ネオ・サイクロスタイル」の製造販売を1884年に始め、1890年代後半まで、木箱に用品一式を収めたミメオグラフに類似したセット形式で発売した。 さらに1891年、ゲステットナー社は謄写器の動作を自動化した自動謄写器「オートマチック・サイクロスタイル」(Automatic Cyclostyle)の発売を開始した。これは3つのローラーの回転に連動してその下を謄写器の枠と刷り台が往復するもので、1つ目のローラーがすくい取ったインクを別のローラーで均一に伸ばしつつ、3つ目のローラーで謄写器のスクリーンにインクを塗布し、紙に圧着転写。1往復すると枠が自動で跳ね上がる仕組みであった。この機構はまもなく登場した輪転謄写機考案の基礎となった。 A・B・ディック社とゲステットナー社は1893年、タイプライター用原紙と自動謄写器に関するそれぞれの特許を共有することに合意し、互いの製版面、印刷面の弱点を補う形となった。ゲステットナー社からはネオサイクロスタイルに代わる製版手段としてタイプライター用原紙が、A・B・ディック社からは手動の平台謄写器に代わる印刷手段として、オートマチック・サイクロスタイルと同じ機構の自動謄写器「ミメオグラフ・プレシーズ」(Mimeograph presses)がそれぞれ発売された。 1875年にエジソンが考案したオートグラフィック印刷(米国特許第180857号)の用具一式。ローラーで原紙にインクを塗布して印刷を行う可動枠付き印刷台(写真左)が謄写器の原型となった。 A・B・ディック社が商品化した「エジソン=ミメオグラフ」の初期の広告(1889年)。1枚の原紙から3000枚の印刷が可能とうたった。 北ベルゲン郡教育委員会で使用されていたミメオグラフのセット一式(ノルウェー・ライカンゲル市) 1891年に発売を開始した自動謄写器「オートマチック・サイクロスタイル」を宣伝するフランスでのゲステットナー社広告。 A・B・ディック社が1888年に特許を買い取って開発した「タイプライター用原紙」の関連商品として発売したエジソン=ミメオグラフタイプライター1型(1892年発売)
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