ケノトロンとプリオトロン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 10:24 UTC 版)
「オーディオン管」の記事における「ケノトロンとプリオトロン」の解説
ラングミュアーは以前から、様々な低圧・真空電気機器の性能の限界は、物理的な限界ではなく、単に製造工程における汚染や不純物によるものではないかと考えていた。 エジソンらが長年主張してきたこととは逆に、白熱灯は完全な真空ではなく、低圧の不活性ガスでガラスを満たした方が効率的で長寿命であることを実証したのが最初の成功であった。しかし、これは、酸素や水蒸気を徹底的に取り除いたガスでなければ、うまくいかない。そして、同じ方法で、新たに開発された「クーリッジ型」X線管用の整流器を製造した。フレミング・ダイオードは、数十万ボルトの電圧を整流することができるのだ。彼の整流器は、ギリシャ語の「ケノ(真空のように何もない)」と「トロン(装置、器具)」から「ケノトロン」と呼ばれるようになった。 そして、製造工程に工夫を凝らせば、予測不能な挙動を示すことで有名なオーディオン真空管に再び目を向けた。 そこで、彼は少々異端的なアプローチをとった。部分真空を安定させるのではなく、ケノトロンのような全体真空でオーディオンが機能するようにできないか、その方が安定させやすいのではないかと考えたのだ。 彼はすぐに、この「真空」オーディオンが、リー・ド・フォレスト版とは明らかに異なる特性を持っており、線形増幅が可能で、はるかに高い周波数で使用できる、全く別の装置であることに気づいた。この装置は、ギリシャ語のplio(moreまたはextra、この意味は利得、入った信号より出た信号が多いという意味)に由来し、「プリオトロン」と名付けられ、オーディオンと区別するために使用された。 彼は、自分の設計した真空管をすべてケノトロンと呼んでいたが、プリオトロンは基本的にケノトロンの特殊型であった。しかし、プリオトロンやケノトロンは商標登録されていたため、テクニカルライターは「真空管」という一般的な言葉を使う傾向があった。1920年代半ばになると、ケノトロンといえば真空管整流器を指すようになり、プリオトロンという言葉は使われなくなった。皮肉なことに、「ラジオトロン」「ケンラッド」という音に似たブランドが、本来の名称よりも長く一般に使われるようになった。
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