グルコース輸送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 10:04 UTC 版)
「AMP活性化プロテインキナーゼ」の記事における「グルコース輸送」の解説
インスリンは体内のグルコースレベルの調節を助けるホルモンである。血糖値が高い時には、ランゲルハンス島からインスリンが放出される。インスリンは他の因子とともに、GLUT4の発現と膜移行を増加させることで細部内へのグルコースの取り込みを促進する。運動条件下では血糖値は必ずしも高くなく、インスリンは必ずしも活性化していないが、筋肉はGLUT4を介してグルコースの取り込みの促進を行うことができる。この運動によって誘導されるグルコースの取り込みに対し、AMPKは部分的に関与しているようである。Goodyearらは運動時に細胞膜のGLUT4の濃度が増加しミクロソーム(英語版)膜で減少することを示し、運動によって小胞のGLUT4の細胞膜への移行が促進されることを示唆した。急激な運動によってGLUT4の移行が増加するが、持久性運動ではGLUT4のタンパク質の総量も増加する。電気的刺激による筋収縮やAICAリボヌクレオチド(英語版)(AICAR)処理によってAMPKの活性化とグルコースの取り込みの増加がみられ、運動誘導性のグルコース取り込みとAMPKとが関連付けられている。また、持久性トレーニングの効果を部分的に模した長期間のAICARの注入は、筋細胞でGLUT4タンパク質の総量を増加させる。 GLUT4の転写レベルでの発現調節には、MEF2(英語版)(myocyte enhancer factor 2)とGEF(英語版)(GLUT-4 enhancer factor)の2つの因子が必要であり、両者によってGLUT4のプロモーター活性は4倍から5倍に上昇する。AMPKはGEFを直接的にリン酸化するが、MEF2に対しては直接的な活性化は行わないようである。しかしAICAR処理によって、双方のタンパク質の核への移行が増加し、GLUT4のプロモーター領域への結合も増大する。 炭水化物の代謝に関与するタンパク質でGLUT4以外で言及すべきなのは、ヘキソキナーゼである。ヘキソキナーゼは六員環の糖、特にグルコースをリン酸化し、解糖系の第一段階を構成する。細胞内に取り込まれたグルコースはヘキソキナーゼによってリン酸化される。このリン酸化によってグルコースは細胞内にとどまるようになり、またグルコース分子の濃度が低下することで、細胞内へのグルコースの取り込みに必要な濃度勾配が維持される。AICARによる処理に伴って、ヘキソキナーゼIIの転写は増加し、長期間の注入によってヘキソキナーゼIIタンパク質の総量が増加する。
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