グドウィンの構造主義生物学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 05:45 UTC 版)
「構造主義生物学」の記事における「グドウィンの構造主義生物学」の解説
(以下の説明は、柴谷『構造主義生物学』の解説に基づく。) 柴谷の『構造主義生物学』の解説によれば、グドウィンはおよそ次のようなことを説明しているという。 生物のかたちは「分子」からでは見えてこない。生物の「かたち」を支配しているものは、物理学的・幾何学的な形態形成場であり、それは生物であるか無生物であるかを問わず、関係性として普遍的な「ジェネリックな(generic)空間の、生成的な(generative)性質である」。例えば、二次曲線の円、楕円、双曲線、放物線などが、三次元空間における円錐の二次元切断面に現れる曲線の変換群だとして理解できるのと同様に、生物の「かたち」というものも、統一的な「場」の変換として理解できる。「かたち」が生成する場における媒介変数が、生物ごとに変化しているのであって、「遺伝」というのは、その変数を安定化するものにすぎない。つまり、「かたち」のもとは空間に内在し、場の法則で変換されるものであり、遺伝子や分子に原因があるのではない。個体発生も系統発生も、このような空間のゆるぎない(robust) 「かたち」生成能にもとづいており、それが動的に分岐している階層性として理解できる。 — 柴谷篤弘『構造主義生物学』p.226 グドウィンの考えの中心的な論点は、反分子遺伝学であり、「発生的構造主義」ともいえるものである。グドウィンの理論は、ウェブスタの「"かたち"についての理論的考察」や「合理的形態学 rational morphology」、あるいはそれにもとづいた分類学や進化理論の探究と関連がある。また、グドウィンの構造主義生物学の考え方は、今日の複雑系の理論のひとつである、カウフマン(Kauffman)の秩序生成の理論と親近性があるようである。 (グドウィンらの理論と柴谷・池田らの理論では)遺伝とDNAについての見方はすっかり異なっている。グドウィンらの理論は、はじめピアジェに基づいていて、構造をDNAの「外」に求めている、DNAは空間の基本的な「構造」にたいして二次的な、むしろ偶発的なもののようである。それに対して、日本の柴谷や池田の理論のほうはソシュールに基づいていて、自然言語から出発して遺伝暗号系という生物におけるれっきとした「構造」の存在を基盤としていて、そこでは、構造をDNAの「上」(inではなくて、aboveまたはoverの意味での「上」)に求めている、この理論では、DNAは「構造」のすべてではないけれども その重要な成分である。
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