キラル化学の革新
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/18 14:27 UTC 版)
キラルなセレクター(光学分割の機能に関わる部分)をもつ、高効率の充填カラムを創製して、対掌体の分割能をもつHPLC(高速液体クロマトグラフィー )を開発した。 さらに、カラムのもつ選択性を増強するため、セレクターの結合に長鎖のスペーサーを導入した。この固定相表面の非選択的な相互作用は小さく、広範囲のセレクタンドに対して分割能を示した。 D-、および L-アミノ酸の非等量混合物の自己会合に基づく、プロトンNMRスペクトルの非等価共鳴を初めて検証し、核磁気共鳴を用いる鏡像体過剰率計測法を確立した。超臨界流体の二酸化炭素を移動相とするクロマトグラフィーによって、対掌体混合物を秒単位で分割した。 また、キラルな界面活性剤を合成して、動電クロマトグラフィーで対掌体を分割し、キラル識別能をもつミセルの形成を証明した。 通常の合成法で得られる生成物はラセミ体(対掌体の等量混合物)なので、非ラセミ体を合成する有力な手段として、「不斉合成」asymmetric synthesis は、合成化学の課題の一つとなり、不斉能を発揮する触媒の設計は、その中核をなすとされてきた。また、非ラセミ混合物の計測は、専ら、感度の低い「旋光計」を用いる手法で行われてきた。上記のように、キラルHPLCが開発され、また、NMRによるピーク分裂に基づいた、高感度の測定法が確立されたので、対掌体の非等量混合物を分割し、混合比率を計測する、従来のコンセプトは、全面的に革新された 。
※この「キラル化学の革新」の解説は、「原昭二」の解説の一部です。
「キラル化学の革新」を含む「原昭二」の記事については、「原昭二」の概要を参照ください。
- キラル化学の革新のページへのリンク