カルパインの関与する病理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/23 07:20 UTC 版)
「カルパイン」の記事における「カルパインの関与する病理」の解説
細胞内のカルパインの構造的・機能的な多様性は、広範囲の障害の発症に関与していることに反映されている。少なくとも2つのよく知られた遺伝疾患と、1つのタイプのがんが組織特異的カルパインと関連している。カルパイン3 (p94)は2A型肢帯型筋ジストロフィー (limb girdle muscular dystrophy 2A) の原因遺伝子であり、カルパイン10はII型糖尿病の感受性遺伝子であり、そしてカルパイン9は胃がんのがん抑制遺伝子として同定されている。さらに、カルパインの過活性化は、アルツハイマー病 や白内障といったカルシウム恒常性の変化が関連する多くの疾患のほか、心筋虚血、脳(神経)虚血、外傷性脳損傷や脊髄損傷後の急性ストレスに伴う二次変性などにも関与している。脳血管障害 (いわゆる虚血の滝 (ischemic cascade) の過程)、またはびまん性軸索損傷(diffuse axonal injury) のようないくつかのタイプの外傷性脳損傷の後、カルシウムイオンが流入することによって過剰量のカルパインが活性化される。カルパインの過剰な活性化は、標的タンパク質や非標的タンパク質に対する無秩序な分解を引き起こし、組織に不可逆的な損傷を与える。過剰に活性化されたカルパインによって、スペクトリンや微小管サブユニット、微小管結合タンパク質、ニューロフィラメントなどの細胞骨格に関わる分子が切断される。また、イオンチャネルや細胞接着分子、細胞表面の受容体にも損傷を与える可能性がある。その結果、細胞骨格や基底膜の分解が引き起こされる。 カルパインは、伸張による軸索傷害(axonal stretch injury)によって損傷を受けたナトリウムチャネルを分解し 、細胞内へのナトリウムイオンの流入を引き起こすことも知られている。その結果、神経は脱分極し、より多くのカルシウムイオンが流入することとなる。 カルパインの活性化がもたらす重大な結末は、虚血による心臓の傷害後の心収縮機能不全である。虚血状態の心筋が再灌流されると、心筋細胞に過剰のカルシウムが流入し、カルパインが活性化される。 近年、カルパインが血小板を過活性化することによって、高高度における静脈血栓塞栓症の促進に関与していると示された。
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