オキチモズク属内
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 06:39 UTC 版)
オキチモズク属には、本種の他に Nemalionopsis shawii とその種内変異による別品種として N. shawii f. caloriniana が知られている。 N. shawii は、フィリピンのバターン州に分布するオキチモズク属の基準種であり、本種と同じく髄層部と同化糸で形成される皮層部からなる粘性のある藻体を持つが、長さは約6.5センチメートルと短く分枝もまばらであるなどの形態的な違いによって区別される。ほかにも、同化糸の細胞がオキチモズクではシリンダー型であるのに対して N. shawii では樽型であること、同化糸の長さも N. shawii では145-400マイクロメートルと長い点でも異なるとされてきた。ただし、オキチモズクはN. shawii の品種レベルでの違いに過ぎないとする見解も早い段階から出され、この見解を支持する立場から、1979年(昭和54年)にアメリカのノースカロライナ州ウェイク郡の河川で発見されたオキチモズク属の紅藻はN. shawii の1品種N. shawii f. caloriniana として報告された。 これに対して、1993年(平成5年)にRobert G. Sheathらは各種標本を用いて形態形質や計数形態形質による分枝分類学的解析を行い、N. shawii f. caloriniana についてはオキチモズクの同物異名であり、N. shawii とオキチモズクは別種であると結論付けた。一方、2002年(平成14年)にはMartin K. MüllerらがN. shawii f. caloriniana とオキチモズクを用いて遺伝子塩基配列による分子遺伝学的形態解析を行い、18S rRNAとrbcL遺伝子の塩基の総和あたり2.88%相違があると報告した。これはN. shawii f. caloriniana とオキチモズクが別種であることを示唆するものであり、Sheathらの分枝分類学的解析と矛盾する結果となった。 さらに、2008年(平成20年)には須田彰一郎らが沖縄県内で採取したオキチモズク属の藻体を用いた形態観察と形態学的計数形質を計測して文献との比較を行った結果として、N. shawii とオキチモズクの明瞭な違いと考えられていた同化糸の長さをはじめ、他の形態形質でもN. shawii とオキチモズクの中間的な形質を示し、オキチモズクともN. shawii とも同定できなかったと報告された。 このように、オキチモズク属の種分類については混乱があり、確定させるために各種標本等のさらなる解析の必要性が指摘されている。
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