大鷸駝鳥
オオシギダチョウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/06 06:43 UTC 版)
| オオシギダチョウ | |||||||||||||||||||||||||||
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| 保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
| NEAR THREATENED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Tinamus major (J. F. Gmelin, 1789) |
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| シノニム[2] | |||||||||||||||||||||||||||
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| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Great Tinamou | |||||||||||||||||||||||||||
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分布域
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オオシギダチョウ(大鷸駝鳥、学名:Tinamus major)は、シギダチョウ科に分類される鳥類。中南米の森林に生息し、林床で種子や小動物を捕食する。体色はオリーブ色で、腹側は白色。その名の通りシギダチョウ科の中でも大型の種である。
分類
1648年にドイツの博物学者であるゲオルク・マルクグラーフは、著書の「Historia Naturalis Brasiliae (ブラジルの自然史)」の中に本種に関する記述を残した。その際 Macucagua という名称が付けられた[3]。1778年にフランスの博物学者であるジョルジュ=ルイ・ルクレール・ド・ビュフォンは、著書である「Histoire Naturelle des Oiseaux (鳥類の自然史)」の中で、フランス領ギアナで採集された標本を基に、本種に関する記述を残した。彼はマルクグラーフの命名を短縮し、Magouaという名を付けた[4]。1788年、ドイツの博物学者であるヨハン・フリードリヒ・グメリンは、カール・フォン・リンネの「自然の体系」を改訂し、その中で本種を正式に記載した。当時の学名は Tetrao major であり、グメリンは上記の著者2人を引用した[5]。現在はオオシギダチョウ属に分類されており、この属は1783年にフランスの博物学者であるジャン・エルマンによって設立された[6][7]。属名はビュフォンの用いた「Les Tinamous」という名称に由来する。フランス領ギアナの現地語名では「Tinamú」と呼ばれる[8][9]。本種を含むシギダチョウ科は走鳥類に近縁だが、飛翔することが出来る。しかし、飛行能力は強くない。走鳥類の祖先は飛翔能力があった[10]。
亜種
12の亜種が認められている[7]。
- Tinamus major major(J. F. Gmelin, 1789)ベネズエラ東部からブラジル北東部にかけて分布している[1]。
- Tinamus major percautus (Van Tyne, 1935)メキシコ南東部からベリーズにかけて分布している[1]。
- Tinamus major robustus(Sclater & Salvin, 1868)メキシコ南東部からグアテマラ東部、ホンジュラスに分布している[1]。
- Tinamus major fuscipennis(Salvadori, 1895)ニカラグア北部からパナマにかけて分布している[1]。
- Tinamus major castaneiceps(Salvadori, 1895)コスタリカ南西部からパナマ西部に分布している[1]。
- Tinamus major brunneiventris(Aldrich, 1937)パナマ中南部に分布している[1]。
- Tinamus major saturatus(Griscom, 1929)パナマ東部から北西コロンビアまでの地域に分布している[1]。
- Tinamus major latifrons(Salvadori, 1895)エクアドル西部からコロンビア南西部に分布している[1]。
- Tinamus major zuliensis(Osgood & Conover, 1922)コロンビア北東部からベネズエラ北部に分布している[1]。
- Tinamus major olivascens(Conover, 1937)アマゾンに分布している[1]。
- Tinamus major serratus(von Spix, 1825)ブラジル北西部に分布している[1]。
- Tinamus major peruvianus(Osgood & Conover, 1992)エクアドル東部、コロンビア東部からボリビア北東部にかけての地域に分布している[1]。
形態
シギダチョウ科の中でも大型で、全長は約38-46cm、平均44cm。体重は雄で700-1,142g、平均960gで、雌で945-1,249g、平均1,097gである。しかし他のシギダチョウも、本種と同等かそれ以上の大きさに成長する場合があるため、最大種ではない。体色は緑褐色で、喉と腹部は白い[10][11][12][13]。脇には黒い縞模様が入り、尾の下部は橙色から赤茶色である。頭頂部と頸部は赤褐色で、冠羽と眉斑は黒い。脚は青灰色である。体色は熱帯雨林の環境に紛れるようになっている。
移動に使われる骨格筋の割合は、鳥類の中でも最も高く、体重の56.9%を占める。そのうち43.74%は飛行に使われる。心臓の体重における割合は0.19%と、鳥類の中で最も小さい[14][15]。
分布
メキシコ、中央アメリカ、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ、ブラジル、ボリビアに分布する[1]。
生態
標高300-1,500mの熱帯雨林、低地の常緑樹林、河畔林[2]、湿地林、雲霧林といった森林地帯に生息する。森林の分断化の影響を受けにくい[1]。
多夫多妻制であり、雄が子育てを行う。産卵数は平均4個で、雄が抱卵する。雌はその後別の雄と繁殖する。雄は約3週間子育てを行い、その後に別の雌を探しに行く。雌は一回の繁殖期で、5-6匹の雄と繁殖する。繁殖期は冬から晩夏まで続く。スリナムでは一年中繁殖する。卵は大きく、光沢がある鮮やかな青または紫色である。巣は植物を材料として、木の板根の根元に作られ、作りは粗雑である[1][10]。
繁殖期を除いて単独で行動する。林床を歩き回り、落ち葉の中から餌を探す。食事は主に種子や果実などの植物で、昆虫、クモ、カエル、小型のトカゲといった小動物も捕食する。クスノキ科、バンレイシ科、フトモモ科、アカテツ科を好む。短く力強い3つの笛のような鳴き声を発し、夕方の早い時間に鳴く[1][10]。
人との関わり
生息域は6,600,000km2と広く[16]、国際自然保護連合のレッドリストでは低危険種に指定されている[1]。狩猟も行われているが、個体数への大きな影響はない[10]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r BirdLife International (2021). “Tinamus major”. IUCN Red List of Threatened Species 2021 2025年10月3日閲覧。.
- ^ a b American Ornithologists' Union (1998). “Tinamiformes: Tinamidae: Tinamous”. Check-list of North American Birds (7th ed.). Washington, D.C.: American Ornithologists' Union. p. 1. ISBN 1-891276-00-X. オリジナルの2012-06-25時点におけるアーカイブ。 2009年3月6日閲覧。
- ^ Marcgrave, Georg (1648) (Latin). Historia Naturalis Brasiliae: Liber Quintus: Qui agit de Avibus. Lugdun and Batavorum (London and Leiden): Franciscum Hackium and Elzevirium. p. 213
- ^ Buffon, Georges-Louis Leclerc de (1778). “Le Magoua” (French). Histoire Naturelle des Oiseaux. 4. Paris: De l'Imprimerie Royale. pp. 507-510, Plate 24
- ^ Gmelin, Johann Friedrich (1789) (Latin). Systema naturae per regna tria naturae: secundum classes, ordines, genera, species, cum characteribus, differentiis, synonymis, locis. 1, Part 2 (13th ed.). Lipsiae [Leipzig]: Georg. Emanuel. Beer. pp. 767-768, No. 63
- ^ Hermann, Johann (1783). Tabula affinitatum animalium olim academico specimine edita, nunc uberiore commentario illustrata cum annotationibus ad historiam naturalem animalium augendam facientibus. Argentorati [Strasbourg]: Impensis Joh. Georgii Treuttel. pp. 164, 235
- ^ a b “Ratites: Ostriches to tinamous”. IOC World Bird List Version 15.1. International Ornithologists' Union (2025年2月). 2025年10月4日閲覧。
- ^ Buffon, Georges-Louis Leclerc de (1778). “Le tinamou cendré” (French). Histoire Naturelle des Oiseaux. 4. Paris: De l'Imprimerie Royale. p. 502
- ^ Jobling, James A. (2010). The Helm Dictionary of Scientific Bird Names. London: Christopher Helm. p. 386. ISBN 978-1-4081-2501-4
- ^ a b c d e Davies, S.J.J.F. (2003). “Tinamous”. In Hutchins, Michael (ed.). Grzimek's Animal Life Encyclopedia. Vol. 8 Birds I Tinamous and Ratites to Hoatzins (2nd ed.). Farmington Hills, MI: Gale Group. pp. 57–59, 61–62. ISBN 0-7876-5784-0.
- ^ Cabot, J., F. Jutglar, E. F. J. Garcia, P. F. D. Boesman, and C.J. Sharpe (2020). Great Tinamou (Tinamus major), version 1.0. In Birds of the World (J. del Hoyo, A. Elliott, J. Sargatal, D. A. Christie, and E. de Juana, Editors). Cornell Lab of Ornithology, Ithaca, NY, USA.
- ^ Schulenberg, T. S., Stotz, D. F., Lane, D. F., O'Neill, J. P., & Parker III, T. A. (2010). Birds of Peru: Revised and Updated Edition. Princeton University Press.
- ^ Dunning Jr, J. B. (2007). CRC Handbook of Avian Body Masses. CRC Press.
- ^ Calder, William A. (1996) (英語). Size, Function, and Life History. Courier Corporation. ISBN 978-0-486-69191-6
- ^ Hartman, F. A. (1961). “Locomotor mechanisms of birds”. Smithsonian Miscellaneous Collections.
- ^ “Great Tinamou Tinamus Major Species Factsheet”. BirdLife DataZone. 2025年10月6日閲覧。
関連項目
オオシギダチョウ
オオシギダチョウと同じ種類の言葉
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