エルズバーグのパラドックスとは? わかりやすく解説

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エルズバーグのパラドックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 05:00 UTC 版)

曖昧さ回避 (経済学)」の記事における「エルズバーグのパラドックス」の解説

ダニエル・エルズバーグ1961年発表した論文提示したいくつかの数値例曖昧さ回避を持つ選好具体例一つである。特にこれらの数値例指してエルズバーグのパラドックス(英: The Ellsberg paradox)と呼ぶ。ここではエルズバーグの論文記載されている3色の玉についての数値例について記述する。 ある壺があり、その壺の中には赤玉黒玉黄玉合計90入っている。このうち赤玉個数30個と分かっているのに対して赤玉以外の60個については、黒玉黄玉内訳分からないとする。ここで次の4つギャンブル考える。 I. 壺から玉を一つランダムに取り出し赤玉ならば100ドル得られそれ以外の玉ならば何ももらえない。 II. 壺から玉を一つランダムに取り出し黒玉ならば100ドル得られそれ以外の玉ならば何ももらえない。 III. 壺から玉を一つランダムに取り出し赤玉もしくは黄玉ならば100ドル得られ黒玉ならば何ももらえない。 IV. 壺から玉を一つランダムに取り出し黒玉もしくは黄玉ならば100ドル得られ赤玉ならば何ももらえない。 さらに次のような質問考える。 Q1. ギャンブルIとIIのどちらをあなたは好ましいと思うか。 Q2. ギャンブルIIIIVのどちらをあなたは好ましいと思うか。 エルズバーグは当該論文中で、Q1についてはIをIIより好む傾向があり、Q2についてはIVIIIより好む傾向があると述べた。だがIIよりIを好みIIIよりIVを好む選好期待効用理論においては正当化されない。玉を一つランダムに取り出したときにある色の玉が出る(質問回答者考える)主観的な確率Pr(玉の色) として、各ギャンブル期待値計算するI. 100Pr(赤) II. 100Pr(黒) III. 100Pr(赤または黄) IV. 100Pr(黒または黄) となる。よって回答者期待値意思決定を行うと考えると、IIよりIを好むならば、Pr(赤) > Pr(黒) が成り立ちIIIよりIVを好むならば、Pr(黒または黄) > Pr(赤または黄) が成り立つ。しかし、ある色の玉を引くということはそれぞれ背反事象なので確率加法性から Pr(黒または黄) > Pr(赤または黄) という関係は Pr(黒) + Pr(黄) > Pr(赤) + Pr(黄) という関係と同値である。したがってIIIよりIVを好むことは Pr(黒) > Pr(赤) ということ意味する。しかし、これは明らかにIIよりIを好むことに矛盾する。つまりこの質問回答者期待値意思決定行っていないということ分かる。 エルズバーグが論文中で述べているが、IIよりIを好みIIIよりIVを好むという選好はレオナルド・サベージ(英語版)によって定式化された sure thing principle満たさないsure thing principle主観的期待効用関数による表現可能にする為に必要な選好満たすべき公理一つであるので、上記のような選好表現できる期待効用関数存在しないのである。 この例がどのような選好表しているかの一つ説明として回答者確率事前に分からないという曖昧さ回避しようとしているという考え方をエルズバーグは行っている。質問Q1Q2それぞれ好ましいとされる傾向のあるギャンブルIとIV100ドル手に入れることが出来確率回答者には事前に分かっている(Iは1/3、IV2/3)。一方ギャンブルIIIIIについては100ドル手に入れることが出来確率回答者には事前に分からない。よって回答者事前に確率分からないという曖昧さ回避しようとしているのであるとエルズバーグは結論づけている。

※この「エルズバーグのパラドックス」の解説は、「曖昧さ回避 (経済学)」の解説の一部です。
「エルズバーグのパラドックス」を含む「曖昧さ回避 (経済学)」の記事については、「曖昧さ回避 (経済学)」の概要を参照ください。

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