エルゴ球の詳細
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 17:05 UTC 版)
「エルゴ球」も参照 エルゴ球の外側の境界面はエルゴ面(静止限界)と呼ばれ、この面上では時空の引き摺りによって、ブラックホールの自転方向と逆方向に進む光が、外部の観測者にとって静止する(光は実際に止まっているわけではない。これは、そこでの時間の進みがゼロになるように見えることと同義)。質量を持つ粒子は必ず光速度未満で運動しなければならないので、無限遠にいる静止した観測者から見て、質量を持つ粒子は必ず回転して見える。時空の引き摺りをフォークが刺さったシーツに喩えると、フォークが回転するにつれシーツは引き摺られて回転する。つまり、中心部分の回転が外側に伝わり、広範囲の歪みを発生させるのである。エルゴ面の内側にある事象の地平線と静止境界との隙間部分をエルゴ球と言う。 このエルゴ球の内部では、時間は角度になり角度は時間になるという時間と角座標の意味が逆転する。なぜならば、時間的座標は単一の方向しか持たず、そしてブラックホールと共に回っている粒子は単一方向にしか回転できないからである。この奇妙な座標交換のために、無限遠の観測者からみれば、粒子のエネルギーは正とも負とも考えることができる。 粒子Aがカー・ブラックホールのエルゴ球に入り、粒子BとCに分裂したのち、粒子Bがエルゴ球を脱する場合、エネルギー保存則が負エネルギー領域に対しても成り立つと仮定するとCのエネルギーが負になるため、結果としてBのエネルギーはもともとAが持っていたエネルギーよりも大きくなる。 このようにして、自転エネルギーがブラックホールから取り出され、ブラックホールの自転は遅くなる。取り出されるエネルギーが最大となるのは、分裂が事象の地平線のぎりぎり外で起り、粒子Cが可能な限り速く逆方向に回転する場合である。 逆のプロセスを考えると、粒子が分裂せず、ブラックホールに粒子の全角運動量を与えることによって、ブラックホールの自転速度が上がるということも有り得る。 ペンローズ過程をもちいれば、進んだ文明によってならば、ブラックホールの周りに固定構造を作り、その上に都市を築いてエネルギーを利用することが出来るかもしれないという推測ができる。廃棄物をのせたシャトルをブラックホールに向けて飛し、エルゴ球で廃棄物を放出し、シャトルはエネルギーを得て都市に戻って、得られたエネルギーを利用すればブラックホールのエネルギーを利用することができる(しかし、この推測では実際にはどうやってシャトルがエネルギーを得るのか示されていない)。
※この「エルゴ球の詳細」の解説は、「ペンローズ過程」の解説の一部です。
「エルゴ球の詳細」を含む「ペンローズ過程」の記事については、「ペンローズ過程」の概要を参照ください。
- エルゴ球の詳細のページへのリンク