エルゴード‐かせつ【エルゴード仮説】
エルゴード仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/09 22:01 UTC 版)
問題を簡単化して、孤立系を考える。任意の初期条件 (例外はあっても、位相空間内での測度はゼロの点に限られている) から出発した力学的について、物理量 f の長時間平均 f が、f の観測値であると仮定してしまうと問題の数学性は明確になる。これはエルゴード問題といわれている。孤立した力学系の保存量はエネルギーだけであるという仮定の下では、f が位相空間内の等エネルギー面(英語版) 上での f の平均値に等しくなることが証明されている。量子統計力学では、これほど後退したエルゴード定理すら確立されていない。問題をさらにもっと後退させて、ジョン・フォン・ノイマンやヴォルフガング・パウリが、量子統計力学のエルゴード問題を論じたこともあったが、あまりに後退させたためにいささか同義語反復の感がある。量子統計力学のエルゴード問題はほとんどまったく未発展のままである。上記のエルゴード仮説が統計物理学の力学による基礎づけにどれほど有効であるかは疑問視されている。長時間平均 f がアンサンブル平均 ⟨f⟩ に一致する、すなわち時間平均の積分がほとんどすべての状態を取り尽くすためには、特殊な場合を除いて、非現実的なほど長い時間をかけなければならず、実際に物理量 f を観測する時間を遥かに超えてしまうことが指摘されている。また、等重率の原理が成り立つこと、言い替えればボルツマンの公式が成り立つことを仮定すると、それぞれの観測から得られる物理量 f の測定値は、系の内部エネルギーから大きく外れないため、測定の際に長時間平均をとることは必要なくなることも示されている。
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