ウェブスター見解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/25 02:12 UTC 版)
「キャロライン事件」の記事における「ウェブスター見解」の解説
1842年、英国政府は、当時米国との間にあった諸懸案を解決するため、臨時公使アッシュバートン卿をワシントンに派遣した。この時にキャロライン号事件も交渉の対象とされた。交渉の約1年前、フォーサイスの後をうけ1840年に国務長官に就任していたウェブスター米国務長官は、英国のフォックス公使宛の書簡(1841年4月24日付)の中で、武力行使が自衛のためのものとして正当化されるための要件として、自らの見解を次のように述べている。 「英国政府としては、目前に差し迫った重大な自衛の必要があり、手段の選択の余地がなく、熟慮の時間もなかったことを示す必要があろう。カナダの地方当局が、一時的な必要から米国領内に立ち入る権限を有していたとしても、非合理若しくは行き過ぎたことは一切行っていないことを示す必要があろう。自衛の必要によって正当化される行為は、このような必要性によって限定され、明らかにその限界内に止まるものでなくてはならないからである。」 アッシュバートン卿は、英国の行動が、ウェブスター国務長官のいう要件に合致することを証明し、かつ米国領土を侵したことについて遺憾の意を表し、この遺憾の意を紛争の初期に表明しなかったことについて陳謝の念を表わした。ウェブスター国務長官は、書面によって英国の陳謝を受けいれた。また、不介入の原則が重要なものであり、その例外は非常に制限されていることについての両国の意見が一致したことを喜ぶ旨述べた。 ウェブスター国務長官の見解は、自衛権、特に先制的自衛に関する代表的先例となった。その後、国際法学者は、キャロライン号事件におけるウェブスター国務長官の手紙などから、さらに自衛権行使の要件を発展させ現在では、その要件を次のようにまとめている。 必要性の原則 : 軍事的反撃が必要であるかどうか。 均衡性の原則 : その反撃は相手の攻撃とつりあっているかどうか。 即時性の原則 : その反撃が即座のものであるかどうか。 これら3つの原則は、ウェブスター見解またはキャロライン・テスト(英語版)と呼ばれ、国際法が禁止している復仇・報復を行わないためのものといわれている。この見解は第2次世界大戦後に開かれたニュルンベルク軍事法廷において国際慣習法上の自衛権の成立要件として再確認された。 また、同時にアメリカ・カナダ間の国境にあたる、メイン州とニューブランズウィック州の境界線の位置を巡る紛争を解決するため、ウェブスター=アッシュバートン条約が締結された。 「:en:Caroline test」も参照
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