イギリス、チェコ、ポーランドに関する規定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 21:23 UTC 版)
「欧州連合基本権憲章」の記事における「イギリス、チェコ、ポーランドに関する規定」の解説
リスボン条約の署名に先立って行なわれた協議で、ポーランドとイギリスは自国に対する基本権憲章の適用に関する議定書を付属させた。また2009年10月にはこの議定書について、次の加盟条約の発効でチェコに対してもその対象とするように修正することで合意した。 この議定書は2か条で構成されている。第1条第1項では、ポーランドとイギリスの国内における「法令、規則、行政規程」が憲章に整合しないということを両国の国内裁判所および欧州連合司法裁判所が判断することを除外している。まだ第1条第2項では、経済的および社会的権利についてうたっている憲章の第4編は司法判断適合性の権利を創出しないとしている。 これらの3か国が議定書を協議した理由は異なるものである。イギリスは憲章に法的拘束力を持たせると、市民が憲章で定める権利を主張しようと欧州司法裁判所に向かったり、またそれにかかる訴訟費用が増大したりするという結果を懸念して、憲章に法的拘束力を持たせるということに反対してきた。イギリスは断念された欧州憲法条約では憲章に法的拘束力を持たせることを許容していたが、リスボン条約での協議では憲章で欧州司法裁判所の権限がイギリスの国内法を超えることがないことを保障する議定書を求めた。 憲章が社会的な問題に関してリベラルな立場をとっているということに懸念を持っていたことから、2007年9月にポーランド政府はイギリスに対する議定書にポーランドもその対象にすることを望んだ。また2009年末、欧州連合加盟国の首脳らはチェコ大統領ヴァーツラフ・クラウスにリスボン条約への署名を納得させようと、チェコも対象とするように議定書を修正することを約束した。クラウスは以前から、憲章によって第二次世界大戦後にチェコ領から追放されたドイツ系民族が欧州連合司法裁判所に対して訴訟を提起するのではないかという懸念を表明していた。この問題の解決のためにリスボン条約で憲章の適用除外を求めていたのである。クラウスが求めていた議定書は最終的に提示されたものと関連性がなかったにもかかわらず、クラウスはリスボン条約に署名した。なお問題となったベネシュ布告が欧州連合司法裁判所で訴訟として扱われる余地は皆無であった。 議定書がどのような効果を持つのかという点についてはさまざまな議論がかわされている。主張には議定書はポーランドやイギリスに対する憲章の適用を除外するというものがある一方で、議定書は法的重要性を持たない、または限られているとする解釈的なものにすぎないという主張もある。
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