アルティン予想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/22 17:01 UTC 版)
「アルティンのL-函数」の記事における「アルティン予想」の解説
アルティン予想とは、非自明な既約表現 ρ にたいしアルティン L-函数 L(ρ,s) は全複素平面上で解析的である、という予想である。 この予想は、ρ が 1 次元、つまりヘッケ指標に付随する L-函数やディリクレのL-函数に対しては成り立つ。より一般的に、アルティンは、ρ が 1 次元表現から誘導される場合についてはこの予想が正しいことを示した。したがってガロア群が超可解群(英語版)(supersolvable)であれば、すべての表現に対してアルティンの予想が成り立つ。 アンドレ・ヴェイユ(André Weil)は、函数体の場合にアルティンの予想が成り立つことを証明した。 2 次元表現の射影像(射影一般線形群への自然な像)は巡回群、二面体群、四面体群、八面体群、二十面体群のいずれかで、このうち巡回群、二面体群の場合にはアルティン予想はヘッケ(英語版)の仕事から従う。ラングランズはベースチェンジ(英語版)(base change lifting)の方法を使い四面体群の場合を証明し、タネル(Tunnell)は彼の仕事を拡張し八面体群の場合も証明した。ワイルズ(Wiles)は谷山志村予想を証明するため、これらの結果を使った。リチャード・テイラー(Richard Taylor)ほかは、(非可解な)八面体の場合についていくつかの点で前進をさせた。現在、いくつかの研究が進行中である。 誘導指標のブラウアーの定理(英語版)によると、すべてのアルティンのL-函数はヘッケのL-函数の正と負の整数べきの積であることがしたがい、このことからアルティン L-函数は全複素平面上で有理型であることになる。 Langlands (1970)は、アルティン予想をラングランズ哲学において GL(n) の保型表現の L-函数にむすびつける事により証明できることを指摘した。さらに詳しくは、ラングランズ予想はアデール群 GLn(AQ) のカスプ表現をガロア群の n-次元既約表現へ結びつける。ここで対応するガロア表現のアルティンのL-函数と保型表現のL-函数は同じものとなり、アルティン予想は保型的なカスプ表現のL-函数は正則であるという既に知られている事実から従う。このことはラングランズの仕事の主要な動機のひとつであった。
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