アルゼンチン側の制約
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 04:51 UTC 版)
「フォークランド紛争」の記事における「アルゼンチン側の制約」の解説
アルゼンチン空軍はミラージュIIIやダガーといったマッハ2級のジェット戦闘機を保有しており、この2機種をあわせただけでもイギリス海軍のシーハリアーFRS.1の約2倍の数があったうえに、より低速の攻撃機もあわせれば更に差が開くことから、当初はアルゼンチン側の有利が予測されていた。 ただし実際にはアルゼンチン側の作戦機はその高速性能を十分に発揮することができなかった。フォークランド諸島の航空設備は貧弱で、超音速機の配備は困難であったため、これらの機体は本土の基地からはるばる飛来しなければならなかった。ミラージュやダガーには空中給油の能力がないために戦場での滞空時間が限られたうえに、増槽を吊下せねばならず、その他の兵装重量も相まって、実際にはシーハリアーをわずかに上回る程度の速力しか発揮できなくなっていた。またミラージュ以外の機体はいずれも攻撃機として運用されたため、対空だけでなく対地・対艦用の兵装も搭載しなければならず、機動性と速度の低下を招いたうえに、戦闘の場は主として低高度域になり、シーハリアーは優れた運動性能を発揮できた一方、アルゼンチン機の高速性能は更に減殺された。 また用兵面の理由として、根本的にアルゼンチン軍が空戦による戦闘空域の制圧に積極的では無かったというものがある。5月1日の戦闘でこそ、ミラージュIIIEA戦闘機を投入して制空戦闘を挑んだものの、同日、イギリス空軍がバルカン戦略爆撃機によってスタンリー飛行場を爆撃したことから、アルゼンチン本土への爆撃を警戒してミラージュIIIEAは本土防空のために拘置され、アルゼンチン機は護衛戦闘機無しでイギリス艦隊・上陸部隊への爆撃に投入されることになった。 この結果ミラージュIIIEAが引き下げられて以降、アルゼンチン機はシーハリアーに襲撃されても反撃せずに逃げの一手となり、航空戦は一方的な様相となった。イギリス側も航空優勢の確立までは達成できなかったものの、アルゼンチン側からすれば、航空優勢は「ほぼ」失った状態となっていた。
※この「アルゼンチン側の制約」の解説は、「フォークランド紛争」の解説の一部です。
「アルゼンチン側の制約」を含む「フォークランド紛争」の記事については、「フォークランド紛争」の概要を参照ください。
- アルゼンチン側の制約のページへのリンク