もの言う石 The Talking Stone
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「アシモフのミステリ世界」の記事における「もの言う石 The Talking Stone」の解説
※初出『F&SF』1955年10月号。ウェンデル・アース博士もの。ケイ素生物シリコニーが登場する。 宇宙船「ロバートQ」が、小惑星帯のステーションに入港してきた。超原子力エンジンの不調を修理するためだ。船内に入った整備士は、船長が隠していた卵型のケイ素生物シリコニーを偶然見つけた。それは直径1フィートはある怪物だった。これまで発見された最大のものでも、直径2インチしかないのに。船長にどこで見つけたかを問いただすと、答えをはぐらかすかのように「小惑星の上」とだけ答える。突然シリコニーは、キーキーという声で英語の言葉をしゃべりだした。船にあった古い本を読んで聞かせて、言葉を教えたらしい。シリコニーがガンマ線の多い環境では、大きく育つことを整備士は知っていた。こんなに大きいシリコニーがいたからには、その小惑星にはガンマ線が、つまりウラニウムが豊富にあるはずだ。ウラニウム採掘は国家事業で、ウラニウム星のありかを隠している船長は逮捕されなければならない。 やがてロバートQの修理が終わり、船は地球に向けて出発した。整備士は、小惑星警察にロバートQを捕まえさせるために、途中でエンジンが止まるような細工をしていた。その旨を警察に無線連絡している頃、ロバートQは流星に衝突して大破し漂流していた。乗組員は全員死亡したが、シリコニーはまだ生きていた。警察艇は瀕死のシリコニーを回収し、ウラニウム星の座標が書かれたものがどこにあるかを尋ねたが、シリコニーは「小惑星(アステロイド)」とだけ言い残して死んだ。小惑星の座標をその上に残しておくのは、箱を開けるカギを箱の中に入れておくようなものだ。もちろん警察では、ロバートQの船体の隅から隅まで、船室の壁の中まで分解して調べたが、どこにも座標の数字が書かれた場所や書類はなかった。困り果てた小惑星警察は、地球にいるウェンデル・アース博士を訪れて助言を求めた。 アース博士は、シリコニーが残した最後の言葉「小惑星」に注目した。太陽の周りを巡る小惑星も宇宙船も、シリコニーが古い本から教えられた貧弱な知識の範疇では同じものである。従って「小惑星」とは宇宙船ロバートQのことを表していると。宇宙船を警察がくまなく探しても数字を発見できなかったのは、数字のないところに書かれている数字を見つけようとしたからだと。博士は言った。「最初から数字の書いてあるところを探しなさい」。それは船籍番号やエンジン番号、力場発生機番号などが記された銘板だった。改めて調べてみると、それらの銘板には、故意に順序は変えられているものの、間違いなく小惑星の座標を示す3つの数字があった。こうしてウラニウム小惑星の位置は解明された。この成果に対して、アース博士が要求したのは、大きくて活きのいいシリコニー1匹だった。
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