笹透図鐔
桃山時代 鉄槌目地丸型毛彫地透角耳小肉 縦;74.5ミリ横;74.3ミリ |
京透の伝統的繊細さ、古正阿弥派の構成美、赤坂の洒脱味と洗練。これらに対して時代や地域性は異なるが、尾張国の鐔は武骨という言葉で捉えられ他者と比較されている。尾張の鐔を構築している美意識の根源にある武骨なる意識は、美術の域にあるそれらとは明らかに異なり、心の内にあって人々の心を逸らせ、突き動かす精神的なものにほかならない。そして、尾張鐔工の中でも金山鐔の位置付けは特殊であり、素材の持つ骨太さから特異な存在として、室町後期、特に明日をも知れぬ戦国動乱の時代に生きた武将の感性と接点を持って好まれたが、その内に秘める鉄そのものの魅力は、実用の中でのみ悟り得る用の美として、現代でもなお掌の内に立ち現われてくるのである。金山鐔の製作地は、名古屋市内の金山神社近辺説、知多半島に至る大野の金山説、岐阜県の金山説などがあるも未だ結論が導き出されておらず謎の部分が多く、これも金山鐔の神秘的な魅力を増幅させ、愛好家の心を捉えて離さない要因と言えよう。笹の葉を四方に配しただけの簡潔な図とした本作は、抽象的文様のために比較的に図柄の意味が分かりにくい作の多い金山鐔の中にあって図柄を平易に表現した作。鍛えの強い鉄地を真丸形のバランスがとれた造り込みとし、笹の葉のみで繁いで空間構成に締まりがある。素朴な槌目地の残る地鉄は、色黒く渋い光沢に包まれており、地面のみならず耳の周囲には、さらに色の黒い大小の瘤状の鉄骨が躍動するように激しく現われており、この鐔の最大の魅力となっている。 |
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