さいころ
★1a.二つのさいころに六の目を出す。
『大鏡』「師輔伝」 九条殿師輔公の娘安子が冷泉院を懐妊していた頃。庚申待ちの夜に、師輔が双六をしようと言い、「もし懐妊中の御子が男子であるならば、重六出よ」と言って、さいころを振った。するとただ1度で、6の目2つが出た(*師輔公は死後も、冷泉院を守り助けた→〔父の霊〕2)。
★1b.三つのさいころに六の目を出す。
『黄金伝説』143「聖フランキスクス(フランチェスコ)」 聖フランキスクスを信じない騎士が、「フランキスクスが本当に聖人ならば、18の目が出よ」と言ってさいころを振ると、3つのさいころに6の目が出た。その後もさいころを振るたびに6が揃って、18の目が9回も出た。
『ゲスタ・ロマノルム』170 馬に乗った聖ベルンハルドゥスに、遊び人が「あっしの魂と、その馬を賭けましょう」と、さいころ勝負を挑む。遊び人は3つのさいころを投げて17の目を出し、「勝ったも同然だ」と喜ぶが、聖ベルンハルドゥスは18の目を出した。遊び人は負けを認めて、魂を聖ベルンハルドゥスにゆだね、聖なる生活の後、幸せな死によって神のもとへおもむいた。
★1c.五つのさいころに一の目を出す。
『夜のさいころ』(川端康成) 芸人たちの旅興行に同行する青年水田が、踊り子みち子に「さいころで何か占ってくれ。1が出たら恋愛しようか」と持ちかけ、さらに「5ついちどきに振って、みんな1が出せるかい?」と聞く。みち子は1人練習して、何日か後の夜、水田が部屋に来た時、5つのさいころすべてに1を出して見せた。
★2a.さいころ賭博。
『狸賽』(落語) 男が狸をさいころに化けさせ、壺皿に伏せたさいころの目を当てる「ちょぼ一」をやる。男が「1」「2」などとつぶやくと、狸がその通りの目を出すので、仲間が怪しむ。男は困って、「5」と言う代わりに「梅鉢。天神様」と唱えて壺皿を開けると、狸が菅原道真に化けていた。
*デメテル(=イシス)とのさいころ勝負→〔冥界行〕1aの『歴史』(ヘロドトス)巻2-122。
★2b.さいころを、わざと壺皿の外へ転がし、しかもそれに気づかないふりをする。
『看板のピン』(落語) 老親分が、子分たちと「ちょぼ一」をやる。老親分が壺皿を伏せると、さいころが外へ転がって、ピン(1の目)が出る。子分たちは「親分も、もうろくしたなあ」と思いつつ、皆、ピンに張る。それを見た老親分は、「看板のピンはしまうぞ」と言って、そのさいころを袂に入れる。壺皿の中には、もう1つさいころがあって6の目が出ており、老親分が1人勝ちする。
『座頭市物語』(三隅研次) 盲目の座頭市が、丁半賭博の壺振りを買って出る。彼が壺皿を伏せると、さいころが外へ転がって、半(=奇数)の目が出る。皆は心の中で座頭市をあざけり、半に張る。座頭市は、転がっているさいころを手探りし、「おや。袂から落としてしまったか」と言って、懐にしまいこみ、それから壺皿を開ける。中のさいころは丁(=偶数)の目だった。
『賽の目』(狂言) 大有徳(だいうとく)の者が、「算勘に達した者を聟に取ろう」と考え、5百具(1千個)の賽の目の数を問う。聟の候補者がやって来るが、1人目も2人目も正答できない。3人目の男が「1の目が千個で1千、2の目が2千、3の目が3千、4の目が4千、これで1万。5の目が5千、6の目が6千で、合わせて1万1千。総計2万1千」と答える。大有徳の者は感心して、男に娘を与える。ところが、娘はたいへんな醜女だったので、男は逃げて行く。
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