夜のさいころ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/04 07:59 UTC 版)
旅興行で踊子たちを率いている水田は、夜、踊子たちが眠る隣の部屋で、いつも一人寝床で、五つのサイコロを振っている若い踊子・みち子のことが気になっていた。みち子の母親は芸者でサイコロの名人だったらしく、その癖が子供のみち子にまで移っていたらしかった。水田はみち子にサイコロを捨てさせた。無口なみち子をよく近くで見ると、思ったよりもいい娘だった。水田は、人の化粧品を使っているみち子に、化粧品を買ってやるついでに新しいサイコロを二つ買ってやった。「一が出たら、みち子と恋愛しようか」と水田が言うと、17歳のみち子は恥じらいながらも二つとも“一”にした。けれども水田は「もう一度やってごらん」と茶化す。 みち子のサイコロはまた五つになり、前のように練習していた。一つ一つ順番に全部“一”は出せるが、いちどきにみんな“一”にするのは難しかった。もう一人、みち子に注目して愛していた男優の花岡が水田に絡んできて、みち子の謎は、子供の時に性的いたずらをされたんじゃないかと吹き込み、水田は不快になった。花岡はみち子にいい役を付けて、ぱあっとさせてほしいと水田に言った。しかし寝床で、みんなの見ている前で、サイコロの目を全部いっぺんに“一”にしたみち子の無邪気な膝小僧を見た水田は、花岡の観察など真っ赤な嘘だと分かった。水田は、全部“一”の揃ったサイコロを美しい花火のように思い、一座に見切りをつけて、「ぱあっと」みち子と2人で出ていこうと思った。
※この「夜のさいころ」の解説は、「母の初恋」の解説の一部です。
「夜のさいころ」を含む「母の初恋」の記事については、「母の初恋」の概要を参照ください。
- 夜のさいころのページへのリンク