小澤の不等式
別名:小沢の不等式
小澤正直・名古屋大学大学院教授が2003年に提唱した、不確定性原理を修正する式。量子力学の基本原理として広く知られるハイゼンベルクの「不確定性原理」が成立しない場合があることを示唆するもの。
ハイゼンベルクの不確定性原理は、簡略に述べてしまえば、量子力学の世界では観測する行為によって観測対象の運動や位置に影響を与えてしまうため、観測前の状態を正確に測定することはできない、というものである。この理論は量子力学の基礎として広く認められ、全く誤差のない測定は原理的に不可能であるという一般的認識として受け入れられていると言える。
小澤の不等式は、ハイゼンベルクが示した式の中に「測定誤差や測定による対象への影響」と、測定対象そのものが持つ「量子ゆらぎ」の混同があるという指摘を土台として、両者を厳密に区別するための項を補った式である。
2012年1月15日に「Nature Physics」電子版に掲載された実験結果では、ハイゼンベルクの不確定性原理が破れ、小澤の不等式が正当であることが示された。
関連サイト:
Experimental demonstration of a universally valid error–disturbance uncertainty relation in spin measurements - Nature Physics
ハイゼンベルクの不確定性原理を破った!小澤の不等式を実験実証 - 日経サイエンス 2012年1月16日
おざわ‐の‐ふとうしき〔をざは‐〕【小沢の不等式】
読み方:おざわのふとうしき
平成15年(2003)に日本の小沢正直が提唱した不確定性原理を修正する式。1927年にハイゼンベルクが提唱した不確定性原理の式は、Aqを測定による粒子の位置の誤差、Bpを位置の測定に伴う粒子の運動量の乱れとするとプランク定数を使い、AqBp≧h/4πと表される。小沢はここに測定前の位置と運動量の量子ゆらぎCqとCpを導入し、AqBp+CqBp+CpAq≧h/4πという式を提唱。測定値の誤差と測定による乱れを量子ゆらぎから区別したもので、これを小沢の不等式という。平成24年(2012)、長谷川祐司らが不確定性関係にある中性子のスピンの二つの成分を測定し、一方の測定誤差を零に近づけた際、もう一方の乱れは無限大に発散せず、ある有限の値に留まり、なおかつハイゼンベルクの式で表される左辺の誤差と乱れの積AqBpが右辺のh/4πより小さくなることが示された。このことにより小沢の不等式が実験的に正しいことが明らかになった。
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