あくびの生物学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 15:44 UTC 版)
あくびが発生する原因や生物学的意義は、現時点では未解明である。従来、肺での酸素-二酸化炭素交換を高める、顔面のストレッチ、内耳の圧力を外気と調整する、などの仮説が提案されてきた。より最近の学説としては、あくびは体温の調節に使われるという説もある。オルバニー大学の Gordon G. Gallup らによれば、あくびは脳の温度を調節する働きがあるかもしれないという。 あくびは、感情の調節などにも関与する神経伝達物質によって引き起こされることもある。例えば、ドーパミン、セロトニンやアセチルコリン受容体などの刺激によりあくびが引き起こされる。セロトニン系の働きを促進する抗うつ薬の一種であるパロキセチンを服用した患者は、異常に多い回数のあくびをする場合がある。反対に、エンドルフィンのような脳内麻薬(オピオイド)の働きによって、あくびの発生が抑えられるという研究がある。 あくびは「うつる (伝染する)」ことが知られている。英語ではこの特徴は「共鳴的 (sympathetic)」あるいは「伝染性 (contagious)」と呼ばれているが、この原因もよくわかっていない。最近の研究では、これは集団的な直感 (herd instinct) であるという説や、群居性の動物のあいだで眠る時間を互いに知らせるためのシグナルになっているという説がある。また、あくびは違う種のあいだでも伝染する (イヌの前であくびをしてみるとよい)。2007年に行われた研究によれば、自閉的傾向をもつ子供は通常の子供とは違って、他人があくびをするビデオを見せてもあくびをしないという。 古代ギリシャでは、あくびは人間の魂が天に向かって逃げようとしているときに起こるのだと信じられていた。あくびをするとき、口に手をあてるのは、『魂を逃がさないようにする為だった』と言われている。
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