『赤と黒』翻訳論争とは? わかりやすく解説

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『赤と黒』翻訳論争

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 15:52 UTC 版)

野崎歓」の記事における「『赤と黒』翻訳論争」の解説

35年ぶりの新訳となった赤と黒に関しては、辻原登堀江敏幸辻仁成といった芥川龍之介賞作家たちが評価し亀山郁夫鴻巣友季子中条省平らも賞賛読者の広い支持集めている。 他方立命館大学文学部教授下川茂は、野崎訳したスタンダールの『赤と黒』(光文社文庫2007年)に対し誤訳が多すぎるとの批判行っている。下川は「前代未聞欠陥翻訳で、日本におけるスタンダール受容史研究史載せることも憚られる駄本」としたうえで「仏文学関係の出版物これほど誤訳の多い翻訳見たとがない」と指摘し「まるで誤訳博覧会」と主張している。2008年3月付の第3刷で同書19箇所訂正したが、下川は「2月末に野崎には誤訳個所リスト一部伝わっている。今回訂正はそこで指摘され箇所だけを訂正したものと思われる」と批判したうえで、誤訳の例を列挙し誤訳数百箇所上る」と指摘している。下川は、いったん絶版として改訳するよう要請する書簡野崎宛て送付した。 しかし、光文社文芸編集部編集長は「読者からの反応はほとんどすべてが好意的ですし、読みやすく瑞々しい新訳スタンダール魅力わかったという喜びの声だけが届いております。当編集部しまして些末誤訳論争与するはまったくありません」と反論している。 この件について作家戸松淳矩は、光文社側は読者の反応ではなく翻訳適否について回答すべきと指摘し瑣末な誤訳主張するなら反証を示すべきと述べ野崎訳文における問題点について言及がないことに批判している。また内田樹は、誤訳との指摘対し訳者応えるように双方向的な公開性担保重要だ指摘し、「野崎訳をめぐる問題は『指摘修正』の円滑なコミュニケーション成り立たなかったことが原因」と考察している。その一方で、「(指摘修正の)効率についての配慮」を欠いた、「いきなり大上段から相手脳天斬りつける」ような下川の手法にも、戸松・内田とも苦言呈している。北海道大学佐藤美希は、野崎単純なミスによる誤訳認めつつ、論争の背景には「新訳ブーム」における新し翻訳観と、下川の持つ規範的な翻訳観との根本的な対立があると論じている。

※この「『赤と黒』翻訳論争」の解説は、「野崎歓」の解説の一部です。
「『赤と黒』翻訳論争」を含む「野崎歓」の記事については、「野崎歓」の概要を参照ください。

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