『天の夕顔』主人公モデル問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 08:32 UTC 版)
「中河与一」の記事における「『天の夕顔』主人公モデル問題」の解説
中河の代表作『天の夕顔』は、不二樹浩三郎という按摩の身の上話に基づく作品だったため、不二樹は中河に対してこの作品を自分との共著とすることを要求した。しかし中河は「話をしてくれただけで、それがあなたに何の関係があるのですか。法廷へ出ても何処へ出ても」とこの要求を退けると共に、主人公のモデルの実名公表を拒み続けたため、不二樹との間に深刻な確執が生じた。不二樹から中河に脅迫状が届き、その直後に中河家の愛犬が不審な死を遂げたこともある。一連の経緯について中河が警視庁成城警察署に相談したものの、刑事事件には発展しなかった。一方、不二樹の側でも中河を訴えようとしたが弁護士費用の問題からこれを果たせず、その代わり『名作「天の夕顔」粉砕の快挙──小説味読精読の規範書』(1976年)と題する書物を自費出版してこの作品が中河の創造力の所産ではないことを世に訴え続けた。不二樹は1990年に93歳で死去した。 不二樹浩三郎は明治30年に大阪で生まれ、同志社大学卒業後、英語教員をしながら登山に打ち込み、各地を転々とした後、奥飛騨山之村に住み着く。その後東京の柔道場に通って按摩師となり、中河与一と出会い、召集を控えていたため、自分が書こうと温めていた体験を中河に口述。戦後、マッサージ師をしながら私家版を発行した。
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