『七つの月』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 14:31 UTC 版)
『浮世/憂世』(邦題『七つの月』) は、1950年代のアメリカ社会を背景に12歳の少女オリヴィアが語る日系家族の物語である。日系人は終戦とともに強制収容所から解放されたとはいえ、いまだ仕事に就くのは難しく、オリヴィアの父は、古ぼけたセダンに妻、義母、4人の子どもたちを乗せ、仕事を求めて州から州へと移動する。この幹線道路とガソリンスタンド、モーテルを転々とする生活がオリヴィアの世界であり、文字通りのうつろう世界、「浮世」である。また、この浮遊感は、母マリコが自ら望んで結婚したのではない夫チャーリーを心から愛することができず、かといってその善良さゆえに憎むこともできず、不満を抱えながら夫を満足させることもできないという家族内に潜む不安を象徴している。 この作品に対する批評家の意見は分かれた。日系人のなかでもミチコ・カクタニは「辛い経験をユーモラスかつ感性豊かに描いている」、「移民の子として成長するとはどういうことなのか、アメリカ社会に帰属しながら、同時にまたアメリカ社会の外にいるとはどういうことなのかを考えさせる」と評価したが、歴史的記述が不正確だという批判もあり、カドハタは、「日系」アメリカ人作家として扱われることに戸惑いを覚えながらも、「日系アメリカ人作家はみんな自分の心の底から書いているのであって、日系人を代表しているわけではない」と反論している。 1992年に発表された『愛の谷間 (In the Heart of the Valley of Love)』は2052年のロサンゼルスを舞台とした未来小説であり、貧富の差や人種問題などの社会問題を扱っている。1995年にはSF小説または幻想小説の『グラスマウンテン (The Glass Mountains)』を発表した。次作の『きらきら』が発表されたのは9年後の2004年のことである。
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