『マルセイユ上陸』
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「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『マルセイユ上陸』」の解説
フィレンツェで代理結婚式を挙げたマリーは船旅でフランスに向かい、1600年11月3日にマルセイユに上陸した。ルーベンスはこの作品でも、ありふれた事物を極めて荘厳な事物として描き出している。実際にマリーがマルセイユに上陸したときにはタラップは上向きで、マリーはタラップを上って行ったが、ルーベンスは斜め下向きにタラップを表現し、マリーはそのタラップを降りて行く様子が描かれている。マリーに従っているのはマリーの叔母トスカーナ大公妃クリスティーナとマリーの姉マントヴァ公妃エレオノーラで、兜と黄金のフルール・ド・リスが刺しゅうされたマントを身に着けて擬人化されたフランス王国が、両手を広げてマリーを迎え入れている。両隣を姉と叔母に付き添われたマリーの頭上では、天使が2本のトランペットでこの上なく優雅な音色を奏で、マリーの到着を全フランス国民に知らしめている。画面下部には、未来のフランス王妃のマルセイユまでの長い船旅を守護し、無事な航海を見守り続けた海の神ネプトゥヌスとネレイス、トリトンが海面から身を乗りだしている。画面左上のアーチ状の構築物にはメディチ家の紋章が描かれ、その下にはレガリアを携えたマルタ騎士団員が立っている。ルーベンスはこの作品に天界と俗界、そして史実と寓意を音律豊かに描き上げて鑑賞者に供している。ロヒール・アーヴェルマイテは『マルセイユ上陸』について、興味深い考察を残した。 彼(ルーベンス)は、彼女(マリー)の周りを極めて豪奢な付属物で飾り立てている。どの作品でも彼女は背景の一部に押し込められて見えるほどだ。たとえば『マルセイユ上陸』でもっとも鑑賞者の目を引くのは官能的なネレイスたちであり、両手を広げたフランス王国に迎えられているマリーはほとんど目立ってはいない。
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