『マリー・ド・メディシスの運命』
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「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『マリー・ド・メディシスの運命』」の解説
連作『マリー・ド・メディシスの生涯』の最初の作品は『マリー・ド・メディシスの運命』である。ローマ神話に出てくる3柱の運命の女神パルカが身をよじって雲に坐し、天界の王であるユピテルとユノを見上げている。裸身のパルカたちは美しく、マリーの運命の糸を紡ぐ姿で描かれている。パルカたちの存在が生まれてくるマリーの幸運と統治者としての成功を保証しており、これ以降の作品群にマリーの幸福な生涯が描かれることを告げている。ローマ神話のパルカ(ギリシア神話のモイラと同一視される)は人間の寿命を決める女神で、一人目が運命の糸を紡ぎ、二人目が運命の糸の長さを決め、最後の一人が運命の糸を断ち切ることによって、その人間の寿命を決定するとされていた。しかしながら『マリー・ド・メディシスの運命』では、運命の糸を断ち切る役割のパルカは描かれておらず、マリーが特権階級であることと、その生涯が不朽であることが強調されている。『マリー・ド・メディシスの生涯』の最後の作品でもこのテーマが再登場しており、マリーは天界の女王として自身の王宮へと昇天し、その生涯が永遠の名声に満ちたものだった様子が描かれている。初期の研究者たちは、ユノが出産の女神として描かれていると考えてきた。しかしながら後年の研究者たちは、ルーベンスが『マリー・ド・メディシスの生涯』全作を通じて、ユノをマリーの分身、あるいは化身として表現したと解釈している。したがってユノの夫で多情で知られる神ユピテルは、マリーの夫で何人もの愛人がいたアンリ4世の象徴として描かれていると言われている。
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