『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
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「加藤陽子」の記事における「『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』」の解説
『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』は、栄光学園中学校・高等学校の歴史研究部の生徒たちに行った講義をまとめた書籍である。きっかけは、上記の高校教科書の執筆経験を踏まえ、中央公論に発表した文章「私が書きたい『理想の教科書』」の内容を、編集者の鈴木久仁子がぜひ実行するようにと説得したことにあった。 日清戦争から太平洋戦争までの日本の戦争を取り扱っており、「侵略・被侵略」という構図ではなく、他国からの観点や国際情勢、社会への影響といった大きな視点から戦争を論じる点に特徴がある。また、日本切腹中国介錯論を述べた胡適や、太平洋戦争の前から戦争は不可能だと主張した軍人・水野広徳といった、一般にはあまり知られない人物も紹介している。 沼野充義は、中高生向けだからといって叙述のレベルを下げることなく、最新の研究成果も用いつつ、読みやすく、かつ「歴史の流れを本当に決めるものは何か見抜こうとする姿勢」がある書籍となっていると評価している。同書は、2009年9月時点で7刷8万部と売れ行き好調となっており、政治家の片山虎之助も本書を読み「歴史を「新鮮なもの」にしてくれる書物」だと述べている。また、同書は第9回小林秀雄賞を受賞している。 本書の続編として『戦争まで』があり、同様の中高生向け講義をまとめたもので、太平洋戦争に至るまでの国際交渉を扱っている。紀伊國屋じんぶん大賞を受賞した。歴史学者の成田龍一は、指導者間の複雑な国際交渉を巧みに叙述している点を高く評価している。他方で、成田は、加藤の著作が指導者レベルの問題のみに焦点を当てていることで、「国民」の問題を等閑視しており、結果として戦争教育と平和教育の分断を招く恐れがあると主張している。
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