「17世紀の全般的危機」論とは? わかりやすく解説

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「17世紀の全般的危機」論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 17:22 UTC 版)

ヒュー・トレヴァー=ローパー」の記事における「「17世紀の全般的危機」論」の解説

トレヴァー=ローパーの提唱した有名な学説に「17世紀の全般的危機」論がある。トレヴァー=ローパーは、17世紀中葉西ヨーロッパには人口的、社会的宗教的経済的、そして政治的な諸問題一度のしかかり政治経済社会深刻な衰退見られたと主張した。この「全般的危機」とはイングランド内戦フランスのフロンド内戦ネーデルラント八十年戦争)、ポルトガルポルトガル王政復古戦争)、ナポリカタルーニャ諸国スペイン帝国対する諸反乱、そして混乱頂点であるドイツ三十年戦争などからなりトレヴァー=ローパーはこれらは全て共通の問題から生じたものであったとする。トレヴァー=ローパーによれば、この「全般的危機」の最大原因は、「宮廷」と「地方」の対立であった。すなわち中央集権化官僚制化を進展させる主権国家君主代表される宮廷」と、封建的伝統地域領地基盤とする貴族ジェントリら「地方諸勢力の間に根深い対立があり、それが17世紀ヨーロッパ混迷の時代もたらした、とトレヴァー=ローパー考えたのである加えて宗教改革とルネサンスもたらした精神的宗教的変化も、「全般的危機」の重要な副次的原因だとする。 「全般的危機」論は、17世紀ヨーロッパ諸問題トレヴァー=ローパー考えるよりもっと深く社会的経済的な部分根ざしていると考える、エリック・ホブズボームのようなマルクス主義歴史家との間に大きな論争巻き起こしたオランダ人歴史家イヴォ・シェーファー、デンマーク人歴史家ニールス・ステーンスガールド、ソ連歴史家A・D・ルブリャンスカヤといった第三グループは、そもそも全般的危機」などは存在しなかったと主張したトレヴァー=ローパーの「全般的危機」論には、ロラン・ムニエ (en) 、ジョン・エリオット (en) 、ローレンス・ストーンE・K・クロスマン、エリック・ホブズボームJ・Hヘクスターといった17世紀ヨーロッパ史専門家の間で賛否両論があり、彼らの間で大きな議論巻き起こした。 時がたつにつれ、論争白熱したものになっていった。イタリアマルクス主義歴史家ロサリオ・ヴィラーリは、トレヴァー=ローパームニエ研究に対して、以下のように述べた、「官僚制発展国家確立への欲求の間の不均衡という仮説は、あまりに曖昧信用する足らずうぬぼれの強い修辞頼ったもので、有用な分析というよりは政治的保守主義産物である」。そしてヴィラーリは続けてトレヴァー=ローパーがヴィラーリの言うところの「イングランド革命」(マルクス主義者によるイングランド内戦を指す語)の重要性貶めていることを非難しトレヴァー=ローパーの言う「全般的危機」は観念的な意味でのヨーロッパ全体革命運動の一部である、と主張するトレヴァー=ローパー非難したもう一人マルクス主義史家ソ連A・D・ルブリャンスカヤで、彼女は「宮廷」と「地方」の対立という概念虚構であるとして攻撃しそのうえで全般的危機」など存在しなかったと断じた。ルブリャンスカヤは、トレヴァー=ローパーが「全般的危機」と呼んだものは、単なる資本主義勃興期現れ通常の歴史的作用に過ぎない切り捨てた

※この「「17世紀の全般的危機」論」の解説は、「ヒュー・トレヴァー=ローパー」の解説の一部です。
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