「母語」仮説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 08:19 UTC 版)
「母語」仮説は2004年にこの問題の可能な解決法として提案された。ウィリアム・テカムザー・フィッチは、ダーウィンの血縁選択説—血縁者間での遺伝子の利益の収束—がこの問題の答えの一部を成すと提言した。言語は元来「母語」であったとフィッチは主張している。最初のうち、母とその生物学的な子の間でのコミュニケーションのために言語が進化して、後に血縁関係にある大人たちにも広まると、話し手と聞き手の利益が一致する。遺伝子の利益が共有されると本来信頼できないシグナルであった言葉のために信頼と共同作業が生まれ、言葉が頼みがいのあるものとして受容されるようになって初めて進化し始めるとフィッチは主張している。 この理論を批判する者は、血縁選択が人に特有の物ではないことを指摘する。類人猿の母親はその子と遺伝子を共有しているし全ての動物がそうである。ではなぜ人だけが言葉をしゃべるのか?さらに、初期の人類が言語によるコミュニケーションを遺伝的に近縁な者とのみに制限していたというのも信じがたい。非血縁者とコミュニケーションをとったり互いに影響しあったりすることがインセスト・タブーによって禁じられていたに違いない。だから、フィッチの最初の前提を受け入れたとしても、仮定された「母語」のネットワークが血縁者から非血縁者へと広がることが説明できない。
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