「世紀末」の2つの特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 10:17 UTC 版)
「世紀末芸術」の記事における「「世紀末」の2つの特性」の解説
ところで、「世紀末」とは単に年代や時代区分を指すものではない。たとえば19世紀後半の絵画には、一方でリアリズムを標榜する印象派・後期印象派の流れがあり、それとほぼ並行してアンチ・リアリズムの象徴主義絵画があった。同時にアール・ヌーヴォーと呼ばれる新芸術運動もあれば、伝統的なアカデミー派の絵画も健在だった。しかし、美術や文学の領域では単に19世紀末という限定された時代区分を指すというよりは、その時代に特有のきわだった個性・傾向を指している。クロード・モネやルノワールが「世紀末」にカテゴライズされることは、まずない。 そうした「世紀末」芸術の特性の1つが様式における象徴主義であり、もう1つが主題における、死やエロスへのこだわりなどの特殊性であり、また、社会通念から逸脱した「退廃的」な主題やモティーフを好む傾向であった。そして、芸術家たちは、この2つの特性を展開するための素材を神話、伝説、歴史、聖書、文学、歌劇等に求めた。しかし、これはアカデミー派の「歴史画」とは一線を画しており、「世紀末」の作家たちは説話自体の意味するものを自己の世界に引きつけ、再解釈をしたうえで象徴的、寓意的に提示したのである。それゆえ、その芸術は説話を物語るのみならず、激しい社会の変化のなかでの自己の内面世界をも物語ることとなった。冒頭に掲げたサロメやスフィンクス、オルフェウスなど「異形」の題材が、ことのほか愛されたのもそのためなのである。
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