β-菱面体ホウ素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 16:21 UTC 版)
β-菱面体ホウ素は105から108個のホウ素原子を含んだ単位格子を有する。格子中のホウ素の大部分は正20面体のB12クラスターおよび五角錐のB6クラスターを形成しており、B12クラスターを構成する原子の一部を共有し合った侵入型クラスターであるB28や、B6が3つ合わさった形を持つデルタ多面体B10クラスターなども形成されている。さらに、B12クラスターを中心としてその周囲にB6クラスターが集まった球状のB84クラスターも形成され、それは菱面体格子の頂点部分に位置している。菱面体の中央には単体のホウ素原子が存在している。B28クラスターは菱面体格子の対角線上に位置しており、格子の中央にある単独のホウ素原子との間でB28-B-B28鎖が形成されている。B10クラスターもまた、格子の中央で単独のホウ素原子とB10-B-B10鎖を形成している。B12クラスターは格子の{100}面に平行に広がっており、B12クラスターとB28クラスターは{111}面に平行に広がっている。 β-菱面体ホウ素はp型半導体であり、そのバンドギャップは1.56 eVである。β-菱面体ホウ素は空間充填率が0.36と非常に低く、そのためホウ素の同素体の中で最も密度が低い。その空間充填率の低さに起因して多種の金属原子を含包することが可能な空隙を多数有している。この空隙にドープされた金属原子はβ-菱面体ホウ素の電気特性などを様々に変化させることが知られており、例えばバナジウム原子をドープさせるとβ-菱面体ホウ素は半導体のバンド構造から金属のバンド構造に転移する。また、このような多数の空隙自体がドナーやアクセプターとして電子授受に関与しており、不純物元素のドープに対して自己補償現象を示すことも知られている。 α-菱面体ホウ素は生成速度が非常に遅いため、溶融したホウ素を結晶化させると常にβ-菱面体ホウ素が得られる。また、タングステン上においてハロゲン化ホウ素を1200°C以上の温度で水素還元することでも得られ、この場合900から1000°Cの温度ではα-菱面体ホウ素が形成される。β-菱面体ホウ素は広い温度範囲で安定ではあるものの熱的な平衡状態が不明瞭であるためα型とβ型のどちらが標準状態で最も安定な相であるかは長く不明であったが、β型が熱力学的に最も安定であるという総意が徐々に広まっていった。
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