α-菱面体ホウ素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 16:21 UTC 版)
α-菱面体ホウ素は水素化ホウ素の熱分解や、タングステン上でヨウ化ホウ素を熱分解するなどの方法で合成される赤色の結晶である。アモルファスホウ素を長時間加熱することでも得られるが、高温状態ではβ-菱面体ホウ素に変化しやすく大きな結晶を得るのは困難であるため実用的な用途は得られていない。 α-菱面体ホウ素は12のホウ素原子からなるクラスターを有しており、このB12の構造はそれぞれのホウ素原子が5つの原子と隣接し合った正20面体からなっている。この結合が通常の共有結合であれば各々のホウ素原子は5つの電子を供与することになるがホウ素は価電子を3個しか持っておらず、電子不足であるB12の20面体構造は3つの隣接した原子がそれぞれ軌道を提供することで形成される三中心結合によって形成されている。通常のホウ素-ホウ素結合の結合距離は0.16から0.19 nmであるが、三中心結合による結合の結合距離は0.201 nmと通常の結合よりも結合長が長い。これらの三中心結合による結合は単位格子中の{111}面で見られる。α-菱面体ホウ素はこのような正20面体クラスターが立方最密充填構造に類似した構造で詰まっており、ホウ素の同素体の中で最も比重が高い。この菱面体格子の中央部分には空隙が存在しており、そこにリチウムをドープすることで超伝導体となることが理論的に予測されている。また、リチウムと共にリンもしくはヒ素をドープすればバンドギャップが小さくなりナローバンドギャップ半導体となることも示されている。
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