湖沼 湖沼の概要

湖沼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/30 23:15 UTC 版)

概説

断層湖の諏訪湖
沖縄県の玉泉洞

陸水は陸氷、地下水地表水に分けられる[1]。地表水は流水または静水として存在し、凹地に滞留する静水及びその凹地を「湖沼」、特に静水が滞留する凹地とその地理的範囲を「湖盆」と呼ぶ[1]。一方、地下水に関しては地下河川を通じて地底湖などの水域が形成される[2]

湖沼学上の分類

湖沼学では湖沼を湖(深い水底を持ち少なくとも中央部に水生植物が生えないもの)、沼(浅い水底でその全面で水生植物(沈水植物)の生育が可能なもの)、沼沢(ごく浅い水底で抽水植物が全面に繁茂するもの)に分ける[1]。また、池は人造の静水域のことをいう[1]

ただし、歴史的には様々な分類が行われており諸説存在する。

  • スイスの陸水学フランソワ・フォーレルの説では、中央部において沿岸植物の侵入を受けない深さをもつものを湖とし、水底の植物がいたるところで繁茂するものを沼とした。
  • アメリカの動物学者ポール・ウェルチの説では、をかぶる不毛のをもつものを湖とし、湖が小さく浅く変化したものや人工的なものなどを池とした。
  • A. J. ホーンとC. R. ゴールドマンの説では、主としてによって混合されるものを湖とし、主として対流によって混合されるものを池とする分類方法を提唱している。

1876年明治9年)の『地所名称区別細目』においては陸地の一か所に水が滞留したもので天然の広くて深いものが湖、浅くて底が質のものが沼、平地を掘りまたはを堰き止めて人工的に造られたものが池とされている[1]。日本の淡水生態学の開祖とも言える上野益三は小型で浅く全水面に沿岸植物が広がっているものを沼とし、人工施設によって全貯水量を管理できるものを池とした。

地名との関係性

湖沼学上の分類は固有の地名には当てはまらない[1]。例えば湖沼学ではカスピ海は世界最大の湖である[1]。また、奥日光の菅沼(最大水深92 m)などは水深の深い湖である[1]。ただ、福島県の「沼沢沼」が「沼沢湖」、静岡県の「狸沼」が「田貫湖」となるなど改称する池沼も増えている[1]

なお、日本では河川法によって、ほとんどの湖沼は「河川」として名称と範囲が指定されている。だが、実際の「湖沼」がどのようなものかについて、法令による定義はない[3]

湖沼の形成要因

日本で最高所(標高2,905 m)の湖沼である御嶽山の二ノ池(火口湖)

何らかの要因で陸地内部に窪地が形成され、なおかつそこに水がたまることによって湖沼が形成される。要因として以下のような例を挙げることができるが、複数の要因が複合して形成されたものや形成要因がはっきりしない湖沼もある。陸水学者のエブリン・ハッチンソンは、湖沼の形成要因を地殻変動(構造湖)、火山活動(火山湖)、氷河活動(氷河湖)、その他の4種類に分類した。

日本においては陸水学者の吉村信吉が要因を侵蝕盆地、堰塞盆地、爆裂盆地、構造盆地に分類している。また、同じく陸水学者の田中正明は侵蝕作用(水蝕湖、氷蝕湖、溶蝕湖)、堰止湖(火山、氷河、川、地すべりなど)、火口湖構造湖(褶曲湖、断層湖、カルデラ湖)に分類している。

地殻変動

断層
地殻の一部が分断されて上下にずれると高低差が生じて窪地が形成される。単一の断層によって形成される場合(例:アルバート湖)と、多数の断層によって形成される場合(例:バイカル湖タンガニーカ湖死海琵琶湖)とがある。地殻が左右にずれる断層においても断層線が曲線状になっている場合には食い違いによって窪地が形成されることがある(例:ネス湖諏訪湖)。断層湖または地溝湖と呼ばれる。
隆起や沈降
海底が隆起して陸地になるときに海が分断され湖沼として残されることがある(例:カスピ海)。一方、陸上においても下流へと流出していた水が地殻の沈降や隆起によって行き場を失い湖沼となることがある(例:ビクトリア湖チチカカ湖)。

火山活動

ピナトゥボ山カルデラ湖
火山の火口
火山の爆発によって地表の土砂が吹き飛ばされると窪地が形成される。山頂火口に形成されるもの(例:大浪池)と、水蒸気爆発によって形成されるもの(例:ニオス湖目潟)がある。火口湖(かこうこ)と呼ばれる。おおむね湖の水質は強酸性であることが多い。
カルデラ
火山噴火によって地下のマグマが噴出し、残された空洞が落ち込んで窪地となったもの(例:トバ湖屈斜路湖摩周湖)。カルデラ湖と呼ばれる。カルデラ内の平坦部(火口原)に形成されたものを火口原湖という。
火山噴出物による堰き止め
溶岩や火山灰などが谷の一部を埋めて川を堰き止めると湖沼がつくられる(例:中禅寺湖阿寒湖富士五湖桧原湖大正池)。
火山の冷却
火山が冷却されると地殻が収縮し窪地が形成される(例:イエローストーン湖)。

氷河

氷河の作用によってできたタスマン湖

広義の氷河湖である。

氷河による侵食
氷河の運動が地面を侵食し窪地(U字谷)が形成され湖沼となる(例:ボーデン湖)。いわゆる狭義の氷河湖である。日本には例がない。
氷河による沈降
氷河の重さによって地殻が沈降して窪地が形成され湖沼となる(例:コモ湖)。
氷河による堆積物
氷河が溶けて消失するときに氷河に含まれる岩石や土砂が土手のように堆積し、囲まれた窪地が湖沼となる。
氷河そのものによる堰き止め
氷河を望む斜面を流れる川が氷河に突き当たると水の行き場を失い湖沼となる場合がある。
氷の融解
氷河や永久凍土が部分的に融解して湖沼となったもの(例:ボストーク湖)。解氷湖あるいはサーモカルスト湖と呼ばれる。

その他自然的要因のもの

地すべりによる堰き止め
地震などによって斜面が崩壊し川を堰き止めると湖沼がつくられる(例:震生湖)。大地震の際に出来た場合には余震などで決壊する二次災害をもたらす場合がある。
化学的な溶解
岩石、特に石灰岩が雨水などによって溶かされて窪地が形成される(例:大池)。カルスト湖と呼ばれる。
アラスカ河跡湖
潟湖松川浦
川の蛇行
かつて川が蛇行して流れていたものが、氾濫による河道の短絡によって蛇行部分が流路から取り残された後、流路と連結していた部分が土砂の堆積で閉塞して湖沼となる。河跡湖(かせきこ)あるいは三日月湖(みかづきこ)と呼ばれる。
川による堰き止め
川によって運ばれる土砂が支流を堰き止めて湖沼となる(例:印旛沼)。
海流や波浪
海流または波浪が海岸付近の砂を流動させて砂州をつくり、海を区切ることで湖沼となる(例:パトス湖ヴェネツィアの潟サロマ湖)。潟湖(せきこ、かたこ)またはラグーンと呼ばれる。海跡湖の一種。樺太北部の東海岸に多く見られる。
海水面変動
海水面の下降によって陸地内に海が取り残されて湖沼となる(例:オキーチョビー湖)。海跡湖の一種。
砂漠や砂浜などにおいては風が起伏のある地形を形成する。(例:佐潟)。砂丘湖(さきゅうこ)と呼ばれる。
植物の活動
植物が生育しやすい場所には植物の生産物が積み重なって標高が高くなり、相対的に植物が生育しにくい場所が窪地となる(例えば湧水の近くなど)。
天体の落下
隕石小惑星彗星等、天体の落下によって凹地(クレーター)ができ水がたまることによって湖ができることがある(例:カラクル湖、ボスムトゥイ湖、ミスタスティン湖、クリアウォーター湖、ピングアルク湖等)。1908年ツングースカ大爆発跡においても、落下天体の最終爆発地点の北8km付近でそれが成因である湖沼(チェコ湖)が近年発見されている。なお、マニクアガン・クレーターのように、天体衝突によるクレーター地形を利用してダム湖を建設した例もある。

人工的なもの

人為的に造られた湖は人造湖(じんぞうこ)とよばれる。多くは人工の堰堤によって川をせき止めたり湾を仕切ったりして造られる。後者の例に児島湖諫早湾調整池など。旧ソビエト連邦領内には、核実験によってできたクレーターに水が溜まった人造湖(セミパラチンスク核実験場#原子の湖を参照)もある。

ダム湖
ダムによって造られた湖。計画水面以下の元の地形に谷が多いと、湖岸線が複雑な形になることが多い。朱鞠内湖(日本最大の湛水面積の人造湖)、奥多摩湖宮ヶ瀬湖九頭竜湖ミード湖など。

湖沼の変化

湖盆地形の変化

湖盆地形の変化は5段階に分けられる。

  1. 青年期 - 堆積が進んでおらず湖盆の原型が残る段階[1]
  2. 壮年期 - 湖棚や湖底平原が形成されるものの湖盆全体を堆積物を覆うまでの段階[1]
  3. 老年期 - 湖棚崖が堆積物で埋まり湖底全体がなだらかに変化した段階[1]
  4. 沼 - 湖底平原が浅くなり湖棚は埋まって湖面全体に植物が繁茂する段階[1]
  5. 沼沢 - 浅化が進み水面全体が抽水植物に覆われ沈水植物が衰退する段階[1]

古代湖

およそ十万年以上存続している湖。琵琶湖バイカル湖カスピ海チチカカ湖など。特に、バイカル湖は2000万年以上前からあると考えられており、世界で最も古い湖とされる。また、福井県三方郡にある三方五湖(みかたごこ)にある水月湖は約11,200年- 52,800年前にわたる過去約5万年間の年縞とよばれる湖底堆積物が発見されており地質学的年代決定での世界標準となっている。

消滅・面積減少

ダムや灌漑、温暖化によって湖に流れ込む水量が減り、蒸発する量が増えると消滅する。例としては、世界第4位であったアラル海[4]、中東でカスピ海に次ぐ面積を持っていたオルーミーイェ湖の他、ポオポ湖ロプノールなどがある。

自然に消滅する例としては、東雲湖のように堆積物によって水位が下がる。天然ダムの決壊などによっても消滅する。


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 3.湖としての霞ケ浦”. 茨城県. 2019年9月27日閲覧。
  2. ^ 竹門 康弘. “河川生態系における垂直方向の構造と生態系間のつながり”. 公益財団法人リバーフロント研究所. 2019年9月27日閲覧。
  3. ^ 中央環境審議会水環境部会陸域環境基準専門委員会資料(2003年2月21日)
  4. ^ アラル海―20世紀最大の環境破壊朝日新聞





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