建築物管理 日本での沿革

建築物管理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/03 05:32 UTC 版)

日本での沿革

戦前までは、大規模な建築物はほとんど無く、そういった建築物もビルオーナーが管理要員を直接雇用していた。

戦後の1940年代後半に、GHQ丸の内地区の建築物を数多く接収し、その清掃を日本人に組織的に行わせたのが始まりといわれる。

1950年代も、サンフランシスコ講和条約締結後にアメリカ合衆国大使館の清掃を外部委託したことから、徐々に日本の官公庁や一般建築物も、清掃を外部委託し始めた。

1960年代においては、高度経済成長に伴う建築物の増加により大きく成長し、清掃のみならず、常駐警備・防災、設備管理、業務サービスなど総合的に行う事業者が現れた。

その後、1965年起工、1968年にオープンした霞が関ビルを皮切りに、大都市(特に東京)を中心に日本は高層ビル建築ラッシュを迎えた。

1970年代に入り、新宿新都心の開発が始まり京王プラザホテル新宿住友ビルの竣工、また池袋にはサンシャイン60が建設されるなど、ますます高層ビル建築が進んだ。

1980年代に入ると一旦円高不況で景気が低迷するも、バブル景気に突入し、土地神話による大都市の再開発プロジェクトなども進んだ。そのような中で、建築物管理業はさらに多様化して発展し、事業者数・売上高ともに拡大していった。

しかし、バブル崩壊により、1990年代以降はさまざまな問題を抱え、2010年現在においても、業界全体の低迷が見られる。

日本の業界の課題

  • 管理費の低下 - 長期不況下で賃料収入が低迷し、請負原資となる管理費が低下
  • ビルマネジメント事業者の登場 - 不動産証券化などにより、個別建築物ごとの金融会計営業労務監査などの収益・資産管理業務を専門的にビルオーナーから請け負い、ビルメンテナンスはその下位に位置づけられるようになった。
  • 労働条件の悪化 - 事業者の乱立により品質を無視した値下げ合戦が後を絶たず、非正規雇用も増大している。交通費の支給を抑える為、ビルマネジメント業者の事務所付近の居住者より労働先(契約先)付近の居住者の採用を優先する傾向がある。また、オーナーとの契約を履行するために人員数確保の必要がある場合、現場で急な退職者や長期病休者が現れた際の人員補充において、既に務めている労働者より高賃金で募集が行われ、先輩・上司(現場責任者・教育係、ベテランや有資格者)より後輩・部下(見習い・新入社員、実質的な未経験者や無資格者)の方が高給取りになるケースがある。この背景に、人件費の大半を請負料金で捻出する為、勤続年数を重ねても定期昇給が難しい業界体質が挙げられ、求人広告を見て知った労働者が自分の給料と比較して後輩格の給料が高いと判明した場合でも、事業者が後輩格の給料と同格・上位へ扱う事を認めず、労働意欲の低下や労働トラブルに繋がる事が珍しくない。
  • 雇用のミスマッチ - 定期昇給が難しく非正規雇用者の割合が多い業界体質の為、 現場サイドの作業員の募集に当たり、公的年金を満額受給している様な高齢者が比較的集まりやすい。高齢による視力や聴力、瞬発力や歩行能力といった体力の衰えから、勤務中や通退勤時、労災負傷に遭遇しやすい点が否めない。オーナー不在時におけるオーナーに対する第三者からのクレーム対応等が求められる場合があり、電話対応や文書作成といった事務処理能力も求められる。とくに公的年金受給前の年齢層を採用する際、上述のビルメン資格の取得状況以外に、簡易的なオーナー代行業務を遂行できる基礎学力または学歴の有無、営業・接客能力等も審査されるべきである。[独自研究?]
  • 品質管理の不備 - 事業者が乱立し、事業者によって品質がまちまちであるため、業界全体が外部より信頼を失っている。
  • 付帯業務 - ビルオーナー側より本来の建築物管理業務(契約)とかけ離れた仕事に迫られる場合がある。また、設備管理や清掃、警備を同じビルマネジメント業者で一括して請け負っている場合、例えばトイレの掃除を清掃員では無く警備員が行うとか冬期の除雪や屋上や屋根の雪下ろしを清掃員が手伝うなど、業務の垣根を超える事がある。[独自研究?]
  • 物価高最低賃金の上昇 - 契約料金(受注価格)が長期間据え置かれているのに対し、昨今の物価の急騰や最低賃金の上昇といった社会的要因に反して契約料金の値上げに応じないビルオーナーに対して、やむを得ず、作業員の人員数や実働日数・時間の短縮、業務内容の簡素化・無人化を突きつける事も起こり得る。これにより、労働日数や労働時間が削られて実質的な収入が減る作業員も現れ、他方、実質的な収入が減らない作業員は人員が削られた影響で自身への業務の負担が増えてしまい、いずれにせよ現場の作業員の労働意欲やビルマネジメント会社ないしビルオーナーへの忠誠心低下を招き、また、ビルマネジメント事業所の利益が減る為、作業に必要な用具や制服、消耗品の支給が消極的または遅延傾向になる等から、結果として料金の見直しに応じないオーナー側へ提供するサービス内容の質の低下の要因に繋がる恐れがある。[独自研究?]

事業者の種類

日本における主な建築物管理業者は、大きく分けて親会社のグループに属する系列会社とグループに属さない独立系とに分類出来る。系列会社は主に、不動産系、ゼネコン系、メーカー系、金融系、商業系、鉄道系などがあり、中には学校法人や福祉法人等の団体が関与している管理会社もある。

具体的な事業者については、Category:建築物管理業を参照。

  • 不動産系 - 親会社である不動産会社が所有・運営している建築物を主な顧客とし、親会社と連携し、営業経理事務・対外交渉・収益確保などのビルマネジメント事業を主とした会社と、その子会社(孫会社)として清掃、警備、設備管理等の現業部門の会社を有している場合が多い。都市部の超高層建築物などはこの系列の管理も多い。
  • ゼネコン系 - 親会社であるゼネコンが施工した建築物を主な顧客とする。一般的な建築物管理業務のみならず、親会社と連携して改修・改造工事も行っている。
  • メーカー系 - 電機メーカー計装メーカー等の系列で、一般的な建築物管理業務のみならず、親会社の製品(エレベーターエスカレーター電力機器空調機器、計装設備等)を熟知し、整備・修理などができることを強みにしている。
  • 金融系 - 保険会社銀行等の金融機関の系列で、金融機関の保有する本・支店・コールセンター等の建物、データセンター、出資している建物・施設、系列企業の大口顧客(取引先)等を主な顧客としている。業法による規制の名残りで、社名に親会社名を冠しない会社が多いのも特徴である。
  • 商業系 - 親会社が保有・運営する大手チェーンストアの店舗、ショッピングモール、娯楽施設等を顧客としている。イベントの支援等も行う。
  • 鉄道系 - 親会社が保有する鉄道施設駅ビル。また、系列企業が保有する百貨店ホテルなどを主な顧客としている。さらに、親会社が関与する沿線の再開発物件なども受注している。

大企業の子会社である事業者については、親会社が持つ信頼性・ブランドを活かしたり、スケールメリットを発揮し、品質面や技術面の得意分野を強みにして差別化している。また、グループ会社などの固定客を持ち、請負価格も安定していることから、賃金を除く労働条件や待遇(休日や福利厚生等)についても親会社に準じるなど、経営・雇用が比較的安定している。

独立系事業者については、品質面や技術面は千差万別で差が激しく特定の顧客を持たないことが多い。そのため、価格競争の影響を受けやすく経営状況も千差万別で、労働条件の悪化を招きやすいとされる。ただし、これについては、系列の会社でもグループ外の受注を進めているところでは、独立系と同様に競争に晒されるため、実際の勤務等の条件は契約物件に左右されやすいのが実情である。




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