化学物質 単離、精製、特性評価、および同定

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化学物質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/14 00:52 UTC 版)

単離、精製、特性評価、および同定

混合物から純粋な物質を単離しなければならないことは多く、たとえば天然資源(多くの化学物質が混在することが多い)や化学反応後(化学物質の混合物が生成されることが多い)に行われる。

測定

メタン燃焼反応の化学量論図

化学量論(かがくりょうろん、: stoichiometry)とは、化学反応の前、反応中、反応後における反応物生成物の質量どうしの関係である。

化学量論は、反応物の総質量は生成物の総質量に等しいという質量保存の法則に基づいており、反応物生成物の量の関係は、一般に正の整数比になるという洞察につながる。このことは、それぞれの反応物の量が既知であれば、生成物の量を計算できることを意味する。逆に、ある反応物の量が既知で、生成物の量が経験的に決定できる場合は、他の反応物の量も計算できる。

これを上の図で説明すると、平衡化学式(balanced equation) は次のとおりである。

CH
4
+ 2 O
2
→ CO
2
+ 2 H
2
O

ここで、メタン1分子酸素ガス2分子と反応して、二酸化炭素1分子と2分子を生成する。この化学式は完全燃焼の一例である。化学量論はこのような量的関係を測定し、ある反応において生成される、あるいは必要とされる生成物と反応物の量を決定するために使用される。反応化学量論(reaction stoichiometry)は、化学反応に関与する物質間の量的関係を記述することを扱う。上記の例の場合、反応化学量論では、メタンと酸素が反応して二酸化炭素と水を生成する際の量的な関係を測定する。

モル原子量との関係はよく理解されているため、化学量論によって得られる比率を利用して、平衡化学式で記述された反応における質量による量を決定することができる。これは、組成化学量論(composition stoichiometry)という。

気体化学量論(gas stoichiometry)は、気体が既知の温度、圧力、体積にあって、理想気体であると仮定できる気体を含む反応を扱う。気体の場合、理想気体の法則によって体積比は理想的に同じになるが、一つの反応の質量比は反応物と生成物の分子質量から計算しなければならない。実際には、同位体が存在するため、質量比を計算する際にはモル質量が代用される。

化学物質と危険性

現在、世の中に存在する化学物質は何十万種とあり、市場で広く出回っているものだけでも数万の物質がある[19]

一般に化学物質と言うと危険というイメージが広がっている。確かに化学物質は使用方法によっては有害なものもある一方で、昔から人間が生活で用いてきたものも多い[20]。そういったものとしては、例えばアルコール染料などが挙げられる。市場で出回っている化学物質の中で有害とされてきた物質は1割ほどではないかとも言われている。ただし、従来「安全」とされてきた物質であっても使いかたによっては健康に悪い影響を与えることがあることも徐々に判明してきている。また同様に、家屋の密閉度が高くなったことで、今まで見過ごされていた化学物質がシックハウス症候群といった症状を引き起こすようなケースも現れてきている[19]

化学物質は固体液体気体ガス)、ミスト等々の状態で我々の周りに存在している。固体が特に問題となるのは状になっている場合である。口の中やの穴にとどまることになる。一部は咳とともに体外へと排出されるが、人間の鼻や口からは絶えず粘液が流れ出ており、その多くが胃へと流れてゆく。つまり呼吸により鼻や口へと入った粉は、気管に溜まったり、やがて、などの消化器系へと移動してしまう可能性が高い。気体の化学物質は主としてから吸収される。一部は肺以外の粘膜を通して血液中へと移動する[19]

危険性の態様

作業者リスク
化学物質を取り扱う作業者が化学物質を吸い込んだり触れることで生じる作業者の健康リスク[21]
製品経由リスク
製品に含まれる化学物質によって人や環境中の生物に生じるリスク[21]
環境経由リスク
大気や水などの環境中に排出された化学物質によって人や環境中の生物に生じるリスク[21]
フィジカルリスク
事故によって生じる設備や建物、人や環境中の生物に生じるリスク[21]

危険性の高い化学物質から身を守る方法

日常生活や一般の仕事の場で、危険性の高い化学物質から身を守る方法としては次のようなことが挙げられている[22]

  • 口に入れない、唇に接触させない。
  • においを嗅がない。吸い込まない。
  • 素肌・素手で触れない。
  • 化学物質どうしを近づけない。
  • やむを得ず扱う時は換気を確保し、風上に身を置く。
  • 保管は屋外の離れた場所にする。

有害な化学物質への職業ばく露を防止するためには、有害な化学物質の代替化、装置の密閉化や局所排気装置等の設置、適切な管理や取扱い、保護具の着用などが重要である。このうち、もっとも効果が高いのは有害な化学物質の代替化であるが、安易な代替化はかえって危険性を増大させるという指摘もある[23]。また、保護具の着用も適切なものを選択し、適切に管理・使用しなければならない。

化学物質による食中毒

食中毒の中でも、何らかの原因によってヒ素などの無機物質PCBメチルアルコールなどの有機化合物などの化学物質が食品中に混入し人を侵襲して起きる食中毒は「化学物質による食中毒」と定義されている[24]

日本で起きた「化学物質による食中毒」事件で特に知られた件に限っても、今までに以下のような事件が起きている[24]

化学物質が人の口を通して健康に被害をもたらす例として、ヒ素による中毒が挙げられる。日本では、茨城県で高濃度のヒ素が井戸水から検出され健康への影響が出ているとされており、他国ではバングラデシュ中国ネパールベトナムカンボジアなどのアジア諸国においてヒ素による中毒が広がっているという[24]

食中毒には様々な原因のものがあるが、他の原因の食中毒であれば消費者の側で予防することができる場合があるのに対して、化学物質による食中毒というのは消費者の側で予防することは困難だということが言える[24]


  1. ^ Hale, Bob (2013-09-19) (英語). Necessary Beings: An Essay on Ontology, Modality, and the Relations Between Them. OUP Oxford. ISBN 9780191648342. オリジナルの2018-01-13時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180113233820/https://books.google.com/books?id=L7poAgAAQBAJ&pg=PA280&dq=chemical+substance+is+a+form+of+matter+having+constant+chemical+composition+and+characteristic+properties&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwi-k_LI_dXUAhUHyWMKHa8vCowQ6AEIMjAC#v=onepage&q=chemical%20substance%20is%20a%20form%20of%20matter%20having%20constant%20chemical%20composition%20and%20characteristic%20properties&f=false 
  2. ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版:  (2006-) "Chemical Substance".
  3. ^ Simples and Compounds”. www.iupac.org (2005年). 2018年5月15日閲覧。
  4. ^ Hunter, Lawrence E. (2012-01-13) (英語). The Processes of Life: An Introduction to Molecular Biology. MIT Press. ISBN 9780262299947. オリジナルの2018-01-13時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180113233819/https://books.google.com/books?id=jNbxCwAAQBAJ&pg=PA50&dq=chemical+substance+cannot+be+separated+into+components+by+physical+separation+method&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwiSrP7Q_NXUAhUH9mMKHdN0DDsQ6AEIMDAB#v=onepage&q=chemical%20substance%20cannot%20be%20separated%20into%20components%20by%20physical%20separation%20method&f=false 
  5. ^ Petrucci, Ralph H.; Herring, F. Geoffrey; Madura, Jeffry D.; Bissonnette, Carey (2011) (英語). General Chemistry: Principles and Modern Applications. Pearson Canada. ISBN 9780137032129. OCLC 967377094. https://books.google.com/books?id=lrRXRwAACAAJ 
  6. ^ Pure Substance – DiracDelta Science & Engineering Encyclopedia”. Diracdelta.co.uk. 2013年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月6日閲覧。
  7. ^ Appendix IV: Chemical Substance Index Names Archived 2007-12-03 at the Wayback Machine.
  8. ^ About the TSCA Chemical Substance Inventory”. US EPA. 2023年9月22日閲覧。
  9. ^ Hill, J. W.; Petrucci, R. H.; McCreary, T. W.; Perry, S. S. General Chemistry, 4th ed., p37, Pearson Prentice Hall, Upper Saddle River, New Jersey, 2005.
  10. ^ Law of Definite Proportions Archived November 18, 2007, at the Wayback Machine.
  11. ^ Hill, J. W.; Petrucci, R. H.; McCreary, T. W.; Perry, S. S. General Chemistry, 4th ed., pp 45–46, Pearson Prentice Hall, Upper Saddle River, New Jersey, 2005.
  12. ^ The boundary between metalloids and non-metals is imprecise, as explained in the previous reference.
  13. ^ compound Archived 2017-11-07 at the Wayback Machine. in Oxford Online Dictionaries
  14. ^ a b chemical Archived 2017-11-07 at the Wayback Machine. in Oxford Online Dictionaries
  15. ^ a b Random House Unabridged Dictionary Archived 2017-11-07 at the Wayback Machine., 1997
  16. ^ What is a chemical”. Nicnas.gov.au (2005年6月1日). 2013年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月6日閲覧。
  17. ^ Joachim Schummer. “Coping with the Growth of Chemical Knowledge: Challenges for Chemistry Documentation, Education, and Working Chemists”. Rz.uni-karlsruhe.de. 2013年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月6日閲覧。
  18. ^ Chemical Abstracts substance count”. Cas.org. 2021年2月15日閲覧。
  19. ^ a b c 亀井太『化学物質取扱いマニュアル』pp. 9–15
  20. ^ 環境コラムVol.26-暮らしの中の化学物質。”. 花王 (2003年9月1日). 2004年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月24日閲覧。
  21. ^ a b c d 暮らしの中の化学物質(石井 員良)、名古屋市、2019年10月6日閲覧。
  22. ^ 亀井太『化学物質取扱いマニュアル』
  23. ^ 有害な化学物質の代替化はリスクを常に低下させるのか”. 2019年3月21日閲覧。
  24. ^ a b c d 社団法人日本食品衛生協会『食品衛生責任者ハンドブック 第4版』p.86


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