主食 日本

主食

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 18:29 UTC 版)

日本

縄文時代 - 明治時代中葉

縄文時代の集落の周りには栗林やブナ林などが人工的に作られた跡が残っていることから、胡桃(くるみ)、団栗(どんぐり)などの木の実が、縄文人の主食だったことがわかっている[15]西田正規も学術論文で、栗やクルミが主食だったと考えるべきだ、と指摘している[16]

(縄文人の子孫であるとされる)アイヌの人々は、縄文時代以降もずっと、明治時代中葉までずっといわゆる「採集の民」であって、漁猟(狩猟)や植物採取で生きており、海岸付近に住む場合はヒエアワなどの原始的な農耕を小規模に行いはしたが、内陸部に住む場合は必ずしも農耕をおこなわず、アイヌの主食は一般にはシャケ)・シカ鹿)であった、と渡辺仁は指摘している[17]

縄文時代の末期ごろから日本列島に渡来する人々が増えたわけであるが、後から日本列島に渡来した人々は水田稲作を日本列島に持ち込んだ。

弥生時代 -

少なくとも昭和30年代(1955年-1964年)までは、多くの人たちが米を常食することはできなかった。実生活上の主食は複数の穀物を組み合わせたものであった。水田地帯にあっても農家では昭和30年代(1955年-1964年)までは日常的には大麦の挽き割り押し麦を混ぜた麦飯、大根飯など米に根菜類を混ぜたかて飯が普通だった。実際の主食はこのように多様で、サツマイモトウモロコシなども17世紀ごろから盛んに作られていた[18]

第二次世界大戦敗戦の後、1951年(昭和26年)朝鮮特需で経済力を回復しサンフランシスコ講和条約で国際復帰を果たした日本は、1955年(昭和30年)から高度成長期に入った。このころから米の増産は著しく、1959年(昭和34年)には1250万トン、1967年(昭和42年)の大豊作では1445万トンを記録している。そうしたなかで、1960年(昭和35年)に始められた栄養改善運動では、白米偏重の是正が叫ばれるようになった。そのため、1962年(昭和37年)に米の消費量は戦後最高を記録し、一人一日あたり324グラムのピークに達したが、以後年々減少し米は市場に余り米の過剰時代に入った。そして、1970年(昭和45年)以降は減反政策といわれる生産調整政策がとられることになった[19]。高度成長期の後半、とくに1970年(昭和45年)以降、世界各地からさまざまな食材や食べ物が輸入され日本人の食生活は多様化していった。しかしその多様さだけに限定してみると、高度成長期以前においてもそう変わらなかった。大きく異なっているのは、戦後までは、立地条件や経済的事由などによって主食の米を常食できず、自作の、あるいは入手できる食糧・食材を組み合わせていたということである。対して現代では、食べ物の選択肢が飛躍的に増え、そのなかから個人の嗜好によって、何を食べるかが選択されるようになったことにあるといえよう[20]

日本の主食関連文献

  • 甲元真之 1986「弥生人は何を食べたか」『季刊考古学』雄山閣、14:14-17
  • 小山修三ほか 1981「『斐太後風土記』による食糧資源の計量的研究」『国立民族学博物館研究報告』6
  • 小山修三・五島淑子 1985「日本人の主食の歴史」『論集東アジアの食事文化』平凡社 pp.473-499
  • 鬼頭宏 1983「江戸時代の米食」『歴史公論』1983年4月号、pp.43-49
  • 『考古学者のドングリ交遊記: 縄文の主食を求めて』岩永哲夫 、鉱脈社、2011
  • 『列島の考古学 弥生時代』河出書房新社 、2011  ISBN 978-4309714431

  1. ^ a b 広辞苑第5版
  2. ^ コトバンク[1]
  3. ^ 世界大百科事典 第2版
  4. ^ Dimensions of Need: An atlas of food and agriculture”. Food and Agriculture Organization of the United Nations (1995年). 2013年4月17日閲覧。
  5. ^ Allianz. “Food security: Ten Crops that Feed the World”. Allianz. 2013年4月18日閲覧。
  6. ^ FAOSTAT: Production-Crops, 2010 data”. Food and Agriculture Organization of the United Nations (2011年). 2013年4月18日閲覧。
  7. ^ あくまでも一国平均であり、主要生産地域ではより高くなる。
  8. ^ a b Norway, Oslo.(Rough Guides Snapshot Norway)ISBN 9780241312742
  9. ^ The Most Essential Ingredients In German Cuisine
  10. ^ gastrotourismo, STAPLE FOOD – Bread
  11. ^ French bread and french baguette - food from france
  12. ^ a b c d e f What Are the Staple Foods in France?
  13. ^ a b c d e f [2]
  14. ^ a b Chinahighlights
  15. ^ [3]
  16. ^ 西田正規 「縄文時代の人間 - 植物関係」- 国立民族学博物館研究報告, 1981 [4]
  17. ^ 『日本の考古学: 弥生時代』河出書房新社 2011年、p.379に記述あり。
  18. ^ 新谷 尚紀 他 『民俗小事典 食』 吉川弘文館、2013年、ISBN 978-4-642-08087-3 、26-27頁、「主食」の項
  19. ^ 原田 信男 『コメを選んだ日本の歴史』 文芸春秋、2006年、ISBN 4-16-660505-4、221-223頁、「高度経済成長期と農政」の項
  20. ^ 野本 寛一 『食の民俗事典』 柊風舎、2011年、ISBN 978-490-3530-51-2 、14頁、「主食としての米」の項
  21. ^ a b c d LEAF TV, Mexican staple foods
  22. ^ Discover Peru
  23. ^ Nutrient data laboratory”. United States Department of Agriculture. 2013年3月4日閲覧。
  24. ^ United Nations Food and Agriculture Organization: Agriculture and Consumer Protection. “Rice and Human Nutrition”. 2010年10月15日閲覧。






主食と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「主食」の関連用語

検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



主食のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの主食 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS