一万円紙幣 未発行紙幣

一万円紙幣

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 16:40 UTC 版)

未発行紙幣

B壱万円券
1953年(昭和28年)に下図案が公表されるも、終戦直後の急激なインフレーションによる社会的混乱の記憶が生々しい時期であったこともあり、インフレーションを助長するとの懸念から高額紙幣の発行に対する反対意見が非常に根強く、最終的に白紙となり製造や発行には至らなかった[11]。表面には無しの聖徳太子の肖像と法隆寺西院伽藍全景、裏面には鳳凰が双向する図柄が描かれ、透かしは法隆寺夢殿であった[76]。再検討の結果のちにC号券として1957年(昭和32年)に五千円紙幣が、1958年(昭和33年)に一万円紙幣がそれぞれ発行されている[77]。寸法は縦84mm、横180mmの大型の券面であった[18]。B壱万円券で予定されていたデザインのうち、法隆寺夢殿の透かしおよび裏面の鳳凰の図案はC一万円券の図柄として[18]、笏無しの聖徳太子の肖像はC五千円券の透かしの図柄としてそれぞれ活用されている。

さらに高額の未発行紙幣

D五万円券D拾万円券
それぞれ野口英世・聖徳太子の肖像のデザインで、D号券改刷の際に発行が検討されていた[78]。裏面の図柄は、五万円券が猪苗代湖磐梯山の風景、拾万円券が法隆寺金堂の鳳凰の彫刻、および法隆寺と奈良盆地の山並みの風景がそれぞれ検討されていた[79]。なお野口英世は後年、E千円券の肖像として起用されている。

変遷

概ね20年程度の間隔で改刷が行われ、図柄を改めると同時に最新の偽造防止技術を導入することで偽造防止力を確保している。

  • 1958年昭和33年)11月20日:C一万円券の様式を制定[7]
  • 1958年(昭和33年)12月1日C一万円券発行開始[7]。図柄は聖徳太子鳳凰
  • 1984年(昭和59年)6月25日:D一万円券の様式を制定[19]
  • 1984年(昭和59年)11月1日D一万円券発行開始[19]。図柄は福澤諭吉。大蔵省銘で記番号は黒色。
  • 1986年(昭和61年)1月4日:C一万円券の日本銀行からの支払停止[3]
  • 1993年平成5年)6月24日:偽造防止力を向上したD一万円券の一部改造券の様式を制定[27]
  • 1993年(平成5年)12月1日:偽造防止力を向上したD一万円券の一部改造券発行開始(ミニ改刷)[27]。記番号を褐色に変更。
  • 2001年(平成13年)3月30日:銘板表記を変更したD一万円券の様式を制定[29]
  • 2001年(平成13年)5月14日:銘板表記を変更したD一万円券発行開始[29]。財務省銘に変更。
  • 2003年(平成15年)6月13日:銘板表記を再変更したD一万円券の様式を制定[30]
  • 2003年(平成15年)7月1日:銘板表記を再変更したD一万円券発行開始[30]。国立銘に変更。
  • 2004年(平成16年)8月13日:E一万円券の様式を制定[34]
  • 2004年(平成16年)11月1日E一万円券発行開始[34]。図柄は福澤諭吉と平等院鳳凰堂鳳凰像。記番号は黒色。表面はD号券と同じ題材だがデザインは異なる。
  • 2007年(平成19年)4月2日:D一万円券の日本銀行からの支払停止[3]
  • 2011年(平成23年)4月26日:記番号の印刷色を変更したE一万円券の様式を制定[27]
  • 2011年(平成23年)7月19日:記番号の印刷色を変更したE一万円券発行開始[27]。記番号を褐色に変更。
  • 2023年令和5年)12月15日:新一万円券の様式を制定[50]
  • 2024年(令和6年)7月3日:新一万円券発行開始予定[53][52]。図柄は渋沢栄一東京駅丸の内駅舎。

脚注


注釈

  1. ^ B号券以降の日本銀行券の中で記番号が4ヶ所に印刷されている紙幣は、この紙幣とC五千円券のみである。
  2. ^ 現在平等院鳳凰堂の中堂屋根上に取り付けられているものは複製品となっており、本物は屋内に保管展示されている。
  3. ^ マイクロ文字、特殊発光インキ、深凹版印刷、潜像模様、パールインク等。
  4. ^ 千円紙幣では前例あり。
  5. ^ このほか、E五千円券は「八角形」、D二千円券は点字の「に」を模した「丸印が縦に3つ」、E千円券は「横棒」の識別マークである。
  6. ^ B号券からE号券までの紙幣では全券種ともに製造番号の両端の英字が各1桁、つまり「A000001A」から始まっていた。「Z900000Z」まで使い果たすと左側の英字だけ「AA」と2桁に変わるが、右端の英字は必ず1桁であったため最終番号は「ZZ900000Z」となり、それを使い果たすと文字色を変更して「A000001A」に戻る形式だった。新紙幣では1桁制が廃止され両端とも初めから2桁の英字、すなわち「AA000001AA」から製造開始される形となった。
  7. ^ ただし、現在も有効券となっている紙幣を含めた場合はこの限りではない。

出典

  1. ^ 一万円券の偽造防止技術について - 日本銀行
  2. ^ a b 現在発行されている銀行券・貨幣 - 日本銀行
  3. ^ a b c d e 現在発行されていないが有効な銀行券 一万円券”. 日本銀行. 2021年6月19日閲覧。
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  6. ^ ミツマタ出荷で集落再生 京都・福知山、紙幣原料に”. 京都新聞社. 2017年6月13日閲覧。
  7. ^ a b c d e 1958年(昭和33年)11月20日大蔵省告示第237号「十二月一日から発行する日本銀行券壱万円の様式を定める件
  8. ^ a b c d e f 大蔵省印刷局『日本銀行券製造100年・歴史と技術』大蔵省印刷局、1984年11月、306-313頁。 
  9. ^ 大蔵省印刷局『日本のお金 近代通貨ハンドブック』大蔵省印刷局、1994年6月、242-255頁。ISBN 9784173121601 
  10. ^ “「安倍政権は天文学的な金額の利権を求めて紙幣の刷新を決めた」Twitterでデマ広がる(篠原修司)”. Yahoo!ニュース. (2019年4月10日). https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4c512531c0db482d08966441797ea4f6f52a3b0e 2020年12月1日閲覧。 
  11. ^ a b 植村峻 2015, pp. 215–216.
  12. ^ a b c d e f g h i j k 植村峻 2015, pp. 216–222.
  13. ^ “悲鳴を上げる窓口 小銭扱う興行街や駅など”. 朝日新聞 朝刊 (東京): pp. 7. (1953年9月3日) 
  14. ^ 日本銀行調査局『図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨』東洋経済新報社、1975年、219-220頁。 
  15. ^ 日本銀行調査局『図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨』東洋経済新報社、1975年、214-216頁。 
  16. ^ 日本銀行調査局『図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨』東洋経済新報社、1975年、218-221頁。 
  17. ^ 日本銀行調査局『図録日本の貨幣 9 管理通貨制度下の通貨』東洋経済新報社、1975年、190頁。 
  18. ^ a b c 植村峻『紙幣肖像の歴史』東京美術、1989年11月、198-203頁。ISBN 9784808705435 
  19. ^ a b c d e f g h i j k 1984年(昭和59年)6月25日大蔵省告示第76号「昭和五十九年十一月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件
  20. ^ 鈴木和三郎『日本の現行貨幣 収集の手引き』内外貨幣研究会、2011年11月、72頁。 
  21. ^ a b c d e f 植村峻 2015, pp. 232–234.
  22. ^ a b 植村峻 2015, pp. 234–237.
  23. ^ a b 植村峻 2015, pp. 237–239.
  24. ^ 大蔵省印刷局『日本銀行券製造100年・歴史と技術』大蔵省印刷局、1984年11月、39頁。 
  25. ^ 植村峻 2015, pp. 242–243.
  26. ^ a b c d e 植村峻 2015, pp. 245–246.
  27. ^ a b c d e f g 1993年(平成5年)6月24日大蔵省告示第134号「平成五年十二月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件
  28. ^ a b c d e f g 植村峻 2015, pp. 248–249.
  29. ^ a b c d e 2001年(平成13年)3月30日財務省告示第85号「平成十三年五月十四日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件
  30. ^ a b c d e 2003年(平成15年)6月13日財務省告示第482号「平成十五年七月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件
  31. ^ 大蔵省印刷局『日本のお金 近代通貨ハンドブック』大蔵省印刷局、1994年6月、162-164頁。ISBN 9784173121601 
  32. ^ 大蔵省印刷局『日本のお金 近代通貨ハンドブック』大蔵省印刷局、1994年6月、195-196頁。ISBN 9784173121601 
  33. ^ 植村峻 2015, pp. 246–247.
  34. ^ a b c d e f g h i 2004年(平成16年)8月13日財務省告示第374号「平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件
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  74. ^ 少額商品に1万円札→店員「1万円入ります」と大声、その目的は? いつから習慣? - YAHOOニュース 2021年3月24日
  75. ^ お札の特長、独立行政法人国立印刷局。
  76. ^ “一万円札年末にお目見え”. 朝日新聞 朝刊 (東京): pp. 7. (1953年9月3日) 
  77. ^ “「一万円札」発行へ”. 朝日新聞 朝刊 (東京): pp. 7. (1955年12月30日) 
  78. ^ 北 (2007, pp. 7–9)
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