一万円紙幣
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未発行紙幣
- B壱万円券
- 1953年(昭和28年)に下図案が公表されるも、終戦直後の急激なインフレーションによる社会的混乱の記憶が生々しい時期であったこともあり、インフレーションを助長するとの懸念から高額紙幣の発行に対する反対意見が非常に根強く、最終的に白紙となり製造や発行には至らなかった[11]。表面には笏無しの聖徳太子の肖像と法隆寺西院伽藍全景、裏面には鳳凰が双向する図柄が描かれ、透かしは法隆寺夢殿であった[76]。再検討の結果のちにC号券として1957年(昭和32年)に五千円紙幣が、1958年(昭和33年)に一万円紙幣がそれぞれ発行されている[77]。寸法は縦84mm、横180mmの大型の券面であった[18]。B壱万円券で予定されていたデザインのうち、法隆寺夢殿の透かしおよび裏面の鳳凰の図案はC一万円券の図柄として[18]、笏無しの聖徳太子の肖像はC五千円券の透かしの図柄としてそれぞれ活用されている。
さらに高額の未発行紙幣
- D五万円券・D拾万円券
- それぞれ野口英世・聖徳太子の肖像のデザインで、D号券改刷の際に発行が検討されていた[78]。裏面の図柄は、五万円券が猪苗代湖と磐梯山の風景、拾万円券が法隆寺金堂の鳳凰の彫刻、および法隆寺と奈良盆地の山並みの風景がそれぞれ検討されていた[79]。なお野口英世は後年、E千円券の肖像として起用されている。
変遷
概ね20年程度の間隔で改刷が行われ、図柄を改めると同時に最新の偽造防止技術を導入することで偽造防止力を確保している。
- 1958年(昭和33年)11月20日:C一万円券の様式を制定[7]。
- 1958年(昭和33年)12月1日:C一万円券発行開始[7]。図柄は聖徳太子と鳳凰。
- 1984年(昭和59年)6月25日:D一万円券の様式を制定[19]。
- 1984年(昭和59年)11月1日:D一万円券発行開始[19]。図柄は福澤諭吉と雉。大蔵省銘で記番号は黒色。
- 1986年(昭和61年)1月4日:C一万円券の日本銀行からの支払停止[3]。
- 1993年(平成5年)6月24日:偽造防止力を向上したD一万円券の一部改造券の様式を制定[27]。
- 1993年(平成5年)12月1日:偽造防止力を向上したD一万円券の一部改造券発行開始(ミニ改刷)[27]。記番号を褐色に変更。
- 2001年(平成13年)3月30日:銘板表記を変更したD一万円券の様式を制定[29]。
- 2001年(平成13年)5月14日:銘板表記を変更したD一万円券発行開始[29]。財務省銘に変更。
- 2003年(平成15年)6月13日:銘板表記を再変更したD一万円券の様式を制定[30]。
- 2003年(平成15年)7月1日:銘板表記を再変更したD一万円券発行開始[30]。国立銘に変更。
- 2004年(平成16年)8月13日:E一万円券の様式を制定[34]。
- 2004年(平成16年)11月1日:E一万円券発行開始[34]。図柄は福澤諭吉と平等院鳳凰堂鳳凰像。記番号は黒色。表面はD号券と同じ題材だがデザインは異なる。
- 2007年(平成19年)4月2日:D一万円券の日本銀行からの支払停止[3]。
- 2011年(平成23年)4月26日:記番号の印刷色を変更したE一万円券の様式を制定[27]。
- 2011年(平成23年)7月19日:記番号の印刷色を変更したE一万円券発行開始[27]。記番号を褐色に変更。
- 2023年(令和5年)12月15日:新一万円券の様式を制定[50]。
- 2024年(令和6年)7月3日:新一万円券発行開始予定[53][52]。図柄は渋沢栄一と東京駅丸の内駅舎。
脚注
注釈
- ^ B号券以降の日本銀行券の中で記番号が4ヶ所に印刷されている紙幣は、この紙幣とC五千円券のみである。
- ^ 現在平等院鳳凰堂の中堂屋根上に取り付けられているものは複製品となっており、本物は屋内に保管展示されている。
- ^ マイクロ文字、特殊発光インキ、深凹版印刷、潜像模様、パールインク等。
- ^ 千円紙幣では前例あり。
- ^ このほか、E五千円券は「八角形」、D二千円券は点字の「に」を模した「丸印が縦に3つ」、E千円券は「横棒」の識別マークである。
- ^ B号券からE号券までの紙幣では全券種ともに製造番号の両端の英字が各1桁、つまり「A000001A」から始まっていた。「Z900000Z」まで使い果たすと左側の英字だけ「AA」と2桁に変わるが、右端の英字は必ず1桁であったため最終番号は「ZZ900000Z」となり、それを使い果たすと文字色を変更して「A000001A」に戻る形式だった。新紙幣では1桁制が廃止され両端とも初めから2桁の英字、すなわち「AA000001AA」から製造開始される形となった。
- ^ ただし、現在も有効券となっている紙幣を含めた場合はこの限りではない。
出典
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- ^ 少額商品に1万円札→店員「1万円入ります」と大声、その目的は? いつから習慣? - YAHOOニュース 2021年3月24日
- ^ お札の特長、独立行政法人国立印刷局。
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- ^ “「一万円札」発行へ”. 朝日新聞 朝刊 (東京): pp. 7. (1955年12月30日)
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- ^ 「追跡・聖徳太子拾万円札プラン 日の目見なかったデザイン再現」『アエラ』1988年12月6日、6頁。
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