ラテン文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/16 05:51 UTC 版)
日本語における呼称
日本語における「ローマ字」という呼称は、ラテン文字の別名であるが、日本語のラテン文字を用いた音訳や翻字による表記法「ローマ字」の呼称でもあるため、どちらの意味なのかやや紛らわしく、前者を指してローマ文字と呼び分けることもある。
漢字で表記する場合は、日本産業規格 (JIS) の規格票において、「欧字(おうじ)」という表現が見られる。このほか特に、ラテン文字のうち基本26文字(英: basic Latin alphabet、ベーシックラテン・アルファベット)は英語の表記に用いることから「英字(えいじ)」と呼び、よく「英字新聞」などの語において用いる[注 1]。
また、ラテン文字の基本26文字については「アルファベット」と呼ぶことも一般的であるが、これは英語のalphabetを片仮名で音訳したものであり、イギリス人やアメリカ人をはじめとする英語圏の人々と同じく、日本人や日本の英語教育の場などにおいては、英語の表記のための文字、つまり結果として基本ラテン文字を指すことが多い。
他方、日本語における呼称として一般でないが、ドイツ人をはじめとするドイツ語圏の人々と同じく、日本人のドイツ語学習者の間では、ドイツ語の発音にならう「アルファベート」と呼ぶことで、基本26文字にウムラウトと呼ばれるダイアクリティカルマークのついた文字やエスツェットと称されるリガチャなども加えた「ドイツ語アルファベット」を指す。また、フランス人をはじめとするフランス語圏の人々と同じく、日本人のフランス語学習者の間では、フランス語の発音にならう「アルファベ」と呼ぶことで、フランス語の表記に用いるアクサンテギュやアクサングラーヴ、セディーユなどのアクセント記号などをつけた文字やその他のリガチャなどを加えた「フランス語アルファベット」を指す。
注釈
- ^ なお、他の言語に対し同様の表現が使われることはまれであり、たとえば漢字略称で「仏語」とされるフランス語の表記に用いても、フランス語で用いていることを強調しない場合は「仏字」などとは呼ばない。したがってフランス語で書かれていることがさほど重要ではない場合、ひとまとめに「英字」と称することさえ珍しくない。
- ^ なお、ギリシャ文字の文字数は22文字、現代ギリシャ語においても24文字とさらに少ない。
- ^ ルーマニアの語源は「ローマの」といった意味であり、ラテン文字を用いる。
- ^ なお、モルドバ語は1996年にモルドバ共和国の公用語ではなくなり、名称が違うだけで同じ言語ともされるルーマニア語が現在のモルドバ共和国の公用語である。
- ^ たとえば、学校教育により訓令式に慣れた日本人にとって、ヘボン式の「つ」の表記「tsu」は、見慣れないことから日本人でさえ読みづらいことがあり、あるいはMicrosoft 日本語 IMEのローマ字入力に慣れたユーザーにとって、ヘボン式のラ行に「l」を用いる表記は、事前に断りがなければ小書き仮名文字の表記として誤読される可能性がある。
- ^ 主に教育現場において、児童が混乱するなどの理由から統一が求められている[18]。なお、この記事に関して「あくまで国語教育の中で行われるローマ字教育に対する問題を、英語教育が関係するとの誤解のもと書かれている」という指摘がある[19]。
- ^ 特に紀元前338年に、第二次ラティウム戦争で共和政ローマが勝利し、それ以前のラテン人にラテン市民権を与えたことで、ローマ共和国の人々としてラテン人はローマ人と呼ばれるようになる。
- ^ なお、ルーン文字に関しては、その多くがラテン文字に由来するとされるため、異字体が別の文字として追加されただけともいえる。
出典
- ^ 梶茂樹、中島由美、林徹『事典世界のことば141』(初版第1刷)大修館書店、東京、2009年4月20日、266頁。ISBN 9784469012798。 NCID BA89745081。
- ^ 町田和彦『世界の文字を楽しむ小事典』(初版第1刷)大修館書店、東京、2011年11月15日、124-128頁。ISBN 9784469213355。 NCID BB07474128。
- ^ 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 編『図説 アジア文字入門』(初版発行)河出書房新社、東京、2005年4月30日、102頁。ISBN 9784309760629。 NCID BA71677265。
- ^ 町田和彦 編『図説 世界の文字とことば』(初版発行)河出書房新社、東京〈ふくろうの本〉、2009年12月30日、19頁。ISBN 9784309761336。 NCID BB00577235。
- ^ 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 編『図説 アジア文字入門』(初版発行)河出書房新社、東京〈ふくろうの本〉、2005年4月30日、105頁。ISBN 9784309760629。 NCID BA71677265。
- ^ 町田和彦 編『図説 世界の文字とことば』(初版発行)河出書房新社、東京〈ふくろうの本〉、2009年12月30日、61頁。ISBN 9784309761336。 NCID BB00577235。
- ^ a b 柴宜弘 著、柴宜弘 編『バルカンを知るための66章』(第2版第1刷)明石書店、東京〈エリア・スタディーズ〉、2016年1月31日、272頁。ISBN 9784750342986。 NCID BB20639903。
- ^ 柴宜弘 著、柴宜弘 編『バルカンを知るための66章』(第2版第1刷)明石書店、東京〈エリア・スタディーズ〉、2016年1月31日、269-270頁。ISBN 9784750342986。 NCID BB20639903。
- ^ 宇山智彦 著、宇山智彦 編『中央アジアを知るための60章』(初版第1刷)明石書店、東京〈エリア・スタディーズ〉、2003年3月10日、104頁。ISBN 9784750331379。 NCID BB01243734。
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- ^ a b c d Khalaf, Salim. “The Phoenician Alphabet” (英語). Encyclopedia Phoeniciana. Salim George Khalaf. 2023年3月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年2月14日閲覧。
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- ^ 日本語での各文字の名称は『広辞苑』第五版、岩波書店、1998年に拠る。
- ^ 編、赤羽美鳥, 澤田治美 訳(フランス語)『世界の文字の歴史文化図鑑 : ビジュアル版 : ヒエログリフからマルチメディアまで』(第1刷)柊風舎、東京、2012年4月15日、284-285頁。ISBN 9784903530574。 NCID BB09123769。
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