メカトロニクス メカトロニクスの概要

メカトロニクス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 00:29 UTC 版)

メカトロニクスとその周辺領域

概要

語源

メカトロニクスは、昭和44年(1969年)に安川電機の技術者であった森徹郎によって出願された[2]言葉で、機械装置(メカニズム、mechanism)と電子工学(エレクトロニクス、electronics)を合わせた和製英語である[3]。昭和47年(1972年)1月に安川電機の商標として登録された[4](特許公昭46-32714[2])。この言葉は出願前から現場を中心に使われており[5]、商標登録によって一般にも広まっていった。現在は安川電機が商標権を放棄し一般名称として使われている[2]。海外にも普及していき、メカトロニクスを冠する学術論文集も、日本の欧文誌『Journal of Robotics and Mechatronics』が1989年[6]国際自動制御連盟英語版(IFAC)の『Journal of Mechatronics』が1991年[7][8]、アメリカの『Transaction on Mechatronics』が1996年に創刊されている[1]

メカトロニクス製品

従来、機械製品に複雑な動作をさせるには、リンク機構カム歯車など多くの機構部品を組み合わせる必要があった。このような製品は、大型・高価になりやすく、複雑で組み立てにくいものとなっていた[3][9]

そこで、制御の部分を電子回路化し、センサアクチュエータと組み合わせることによって、複雑な動作を簡単に実現したり、機械要素の組み合わせだけでは実現できないような機能を持たせることが可能になる。今日では制御にマイクロプロセッサ(マイコン)を用いることによって、自動化や適応制御など、より豊富で便利な機能を実現している。また、同一の機構であっても、電子回路やマイコンプログラム(ファームウェア)の変更で、仕様の変更や追加を容易に対応できる利点ももつ[3][9]

以上のような特長により、従来機械産業とされてきた、時計カメラ自動車工作機械など、ほとんどの分野でメカトロニクス化が進んできている。また、ロボットハードディスクCDプレーヤー、自動改札機ATMなど、メカトロニクスによってはじめて成り立つ分野も数多くある[10]

FAのためのメカトロニクス

ファクトリーオートメーション(FA)においては、与えられた目的に対し、センサ、コントローラ、アクチュエータ、メカニズムをシステムとしていかに構築するかが問題となる。アクチュエータとしては各種モータのみならず、空気圧機器も良く使われる。メカニズムにはカム、リンク(スライダクランク機構等)、ゼネバ歯車ベルト等の機械要素もふんだんに使われ、コントローラとしては、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)が使われることが多い[11]。メカトロニクスを対象とする資格試験や競技大会においてもFAを意識したものが多い(#資格・免許#競技会の節を参照)。

特徴

名称は機械+電子の機電一体であるが、実際は機械工学電気工学電子工学情報工学の融合である[1][3]。また、センサコンピュータコントローラ)・動力源(パワー源)・アクチュエータメカニズムを要素とするシステムとして構成され[12][13]ハードウェアソフトウェアの構成には多様性があり、ソフトウェアに比重を置くとインテリジェンスやフレキシビリティを持たせることができる[3]

メカトロニクスの定義や範疇には幅があり、取り扱う人の立場[14]、時代[3]、用途によっても変わってくる[10]。事例として時計を考えると、機械式時計は全てが機械であり、クォーツ時計はほとんどがエレクトロニクス化したメカトロニクス、電波時計はマイコン・モーターを搭載して通信も行う高度なメカトロニクスになる[14]ミシンの例では、当初は完全に機械式であったものが、補助機構が別モータで制御されるようになり、さらにすべてのモータがコンピュータ制御で同期が取られるようになっていった[15][16]

また、応用展開に合わせて、以下のような技術、機器が存在する[17]

  • 精密メカトロニクス
  • オプトメカトロニクス
  • 知能化メカトロニクス
  • 医療・バイオメカトロニクス
  • マイクロ・ナノメカトロニクス
  • ネットワークメカトロニクス

  1. ^ a b c JSME便覧γ7 2008, p. 9.
  2. ^ a b c 佐古長四郎 『おもしろ万華鏡―村の広場のこぼれ話』 文芸社、2005年4月、68頁、ISBN 978-4835589640
  3. ^ a b c d e f 黒澤 1983.
  4. ^ 日経産業新聞』1982年1月1日付記事。
  5. ^ 黒澤豊樹「メカトロニクス誕生の背景と最近の動向」『メカトロニクス』第6巻第8号、1981年、 3頁。
  6. ^ Back number”. JRM. 富士技術出版. 2014年1月11日閲覧。
  7. ^ Volume 1, Issue 1 Pages 1-114 (1991)”. Mechatronics. ScienceDirect 2018年6月24日閲覧。
  8. ^ Mechatronics The Science of Intelligent Machines”. Journals. エルゼビア. ISSN 0957-4158 2018年6月24日閲覧。
  9. ^ a b JSME便覧γ7 2008.
  10. ^ a b JSME便覧γ7 2008, pp. 11–12.
  11. ^ a b 熊谷 2007.
  12. ^ メカトロニクス入門 1984, pp. 19–20.
  13. ^ 熊谷 2018.
  14. ^ a b 西田麻美 『メカトロニクスTheビギニング日刊工業新聞社、2010年、2-3頁、ISBN 978-4-526-06383-1
  15. ^ 熊谷 2018, pp. 10–11.
  16. ^ JSME便覧γ7 2008, p. 11.
  17. ^ JSME便覧γ7 2008, p. 191-246.
  18. ^ a b 媒体概要”. メカトロニクス. Gichoビジネスコミュニケーションズ. 2018年6月24日閲覧。
  19. ^ 購読について”. メカトロニクス. Gichoビジネスコミュニケーションズ. 2018年6月24日閲覧。
  20. ^ メカトロニクス・デジタル版”. Gichoビジネスコミュニケーションズ. 2018年6月24日閲覧。
  21. ^ IEEE/ASME Transaction on Mechatronics”. IEEEASME. 2018年6月24日閲覧。
  22. ^ 部門欧文誌”. 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門 (2018年2月5日) 2018年6月24日閲覧。
  23. ^ 富士技術出版: Journal of Robotics and Mechatronics、2014年1月11日閲覧。
  24. ^ TTAM メカトロニクス技術認定試験”. 自動化推進協会. 2018年6月24日閲覧。
  25. ^ 職業訓練指導員免許のごあんない”. 東京都産業労働局. 2015年1月12日閲覧。
  26. ^ 第51回技能五輪全国大会「メカトロニクス」職種 競技課題 (PDF)”. ものづくり基盤強化> 第51回技能五輪全国大会. 中央職業能力開発協会 (2013年8月20日). 2015年1月12日閲覧。
  27. ^ メカトロ甲子園”. 2014年1月9日閲覧。[リンク切れ]
  28. ^ 松浦大輔「研究室対抗メカトロ設計コンテスト」、『日本機械学会誌』第109巻第1057号、2006年12月、 964-965頁。
  29. ^ メカトロ設計コンテスト”. 東京工業大学岩附研究室. 2018年6月24日閲覧。


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