ショウガ ショウガの概要

ショウガ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/19 14:17 UTC 版)

ショウガ
ショウガ
分類APGIII
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: ショウガ目 Zingiberales
: ショウガ科 Zingiberaceae
: ショウガ属 Zingiber
: ショウガ Z. officinale
学名
Zingiber officinale
(Willd.) Roscoe (1807)[1]
シノニム
和名
ショウガ
英名
Ginger
江戸時代の農業百科事典『成形図説』のイラスト(1804)

名称

和名ショウガの由来は、大陸からミョウガとともに持ち込まれた際、香りの強いほうを「兄香(せのか)」、弱いほうを「妹香(めのか)」とよんだことから、これがのちにショウガ・ミョウガに転訛したとする説と(詳しくは「ミョウガ」を参照)、漢語「生薑(しゃうきゃう)」が「ミャウガ」からの干渉によって転訛したという説とが有る[4]

別名はハジカミ[5]。古くはサンショウと同じく「はじかみ」と呼ばれ、区別のために「ふさはじかみ」「くれのはじかみ」ともよばれた。

英名は Common ginger(コモン・ジンジャー)といい、日本でもジンジャーの別称で呼ばれている[6]仏名は Gingember(ジャンジャンブル) [6]伊名は Zenzero(ゼンゼロ)[6]、中国植物名(漢名)は、「姜」(きょう)[1][5]、あるいは「薑」[1]という。

gingerの由来は、古代インドで使われていたるサンスクリット語sringa-veraで、「枝角の形」を意味する語から来ている[7]

由来

熱帯アジアが原産[8][9]という説が最も有力だが、野生のショウガが発見されたことがないためショウガの原産地は厳密には不確定である[10]。長い間インドのポンディシェリの近くにgingi地方という地域があって、そこがショウガの原産地と考えられていた。それがラテン語のジンジベル(Zingiber)の語源という説もあったが、今日ではサンスクリット語のショウガ(śṛṅga-vera)のペルシア語訳(dzungebir)が語源と見られている[11]

インドでは紀元前300 - 500年前にはすでに保存食や医薬品として使われ、中国でも論語の郷党編の中で孔子の食生活にはじかみの記述があり、紀元前650年には食用として利用されていたことが窺われる。ヨーロッパには紀元1世紀ごろには伝わっていたとされる。しかしヨーロッパの気候は栽培に向かず、産物として輸入はされたが古代ギリシア人ラテン人も料理にショウガを活用することは少なく、主に生薬として利用した[12]

日本には2 - 3世紀ごろに中国より伝わり奈良時代には栽培が始まっていた[13]。『古事記』に記載があるように早くから用いられている。

中世のヨーロッパではショウガの需要がコショウに匹敵するほど高まった。14世紀のイギリスでの相場はショウガ1ポンド(約450グラム)でヒツジ一匹の価格に相当した。ヨーロッパ人が植物としてのショウガを初めて見て記録したのは、13世紀にマルコ・ポーロがインド・中国で見た時のものが初めてであるという。15世紀末に新大陸が発見されると、ショウガはすぐに栽培作物として持ち込まれ、16世紀半ばには西インド諸島はショウガの産地となった[14]

特徴

多年生草本[9]。暖地や温室で栽培される[5]。地下に横たわる根茎は多肉で、淡黄色をしており、辛味と独特な香りがある[9]。地上には葉だけが出る。葉はまっすぐに立った茎から両側に楕円形の葉を互生したように見えるが、この茎はいわゆる偽茎で、各々の葉の葉鞘が折り重なるように巻いたものである[9]

花期は夏から秋にかけて[8]。暖かい地方では、花は根茎から別の茎として高さ20 cm前後の花茎を伸ばして、その先に鱗片の重なった苞葉がつく[8]。花はその苞葉の間から抜け出て開き[8]、黄色く、唇弁は赤紫に黄色の斑点を持つ。ただし、熱帯原産であるショウガは日本では気温が足りず、花が開花することはごく稀で[8]、根茎による栄養繁殖が主である[15]。このため、品種の分化は少ない。

ショウガの根茎は、ギンゲロールジンゲロンショウガオールに由来する特有の辛味と、ジンギベレン、ジンギベロール、シネオールシトラールに由来する独特の香りを持つ[16]。産地により香りの傾向が異なり、アフリカ産は樟脳のような匂い、インド産はシトラールの匂いに特色がある。


  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Zingiber officinale (Willd.) Roscoe ショウガ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月14日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Zingiber oligophyllum K.Schum. ショウガ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 166.
  4. ^ ショウガ/生姜/しょうが」語源由来辞典(2023年6月)
  5. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 41.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m 講談社編 2013, p. 110.
  7. ^ a b 料理書にみる中国,朝鮮,日本料理中のショウガ利用比較 著:吉田 真美、後藤 潔、田名部 尚子
  8. ^ a b c d e 田中孝治 1995, p. 184.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l 馬場篤 1996, p. 65.
  10. ^ バーバラ・サンティッチ; ジェフ・ブライアント 著、山本紀夫 訳『世界の食用植物文化図鑑』柊風社、2010年、283頁。ISBN 9784903530352 
  11. ^ マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著、玉村豊男 訳『世界食物百科』原書房、1998年、514-515頁。ISBN 4562030534 
  12. ^ a b Herbs at a Glance - Ginger (Report). アメリカ国立補完統合衛生センター. 30 November 2016.
  13. ^ 遠藤栄; 遠藤栄一『ガリ屋がまとめた生姜の話』創元社、201、32-37頁。 
  14. ^ リュシアン・ギュイヨ著 池崎一郎、平山弓月、八木尚子訳『香辛料の世界史』、白水社、1987年、pp102-105
  15. ^ 青葉高著「日本の野菜」八坂書房、2000年、196頁
  16. ^ a b c d e 田中孝治 1995, p. 185.
  17. ^ 伊藤慎吾、シャンカール・ノグチ監修『世界で使われる256種:ハーブ&スパイス事典』、誠文堂新光社、2013年、p77
  18. ^ a b c d e f g 野菜ブック しょうが”. 農畜産業振興機構. 2013年4月16日閲覧。
  19. ^ a b c d e やさい図鑑(根菜類)”. 愛知県. 2013年4月16日閲覧。
  20. ^ a b c d e f 小池すみこ 1998, p. 78.
  21. ^ a b ちば旬鮮図鑑 ちばの葉しょうが”. 千葉県. 2013年4月16日閲覧。
  22. ^ ショウガに花が咲いた! 原産地インドでも「まれ」 浜松市西区 静岡新聞
  23. ^ a b c d e f g h 金子美登 2012, p. 196.
  24. ^ a b c d 金子美登 2012, p. 197.
  25. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 252.
  26. ^ a b c 小池すみこ 1998, p. 79.
  27. ^ a b c d e 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 167.
  28. ^ アニサキス症と天然物由来の有効化学物質の検索 (PDF) 東京都健康安全研究センター
  29. ^ a b 奥深いガリの世界”. 東京すしアカデミー. 2020年9月16日閲覧。
  30. ^ a b c 仝選甫「薬食兼用の天産物 No.12 生姜(ショウガ)」『漢方医薬新聞』2009年12月10日、12面。
  31. ^ 医薬品の範囲に関する基準” (pdf). 別添3. 「「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」の食品衛生法上の取扱いの改正について」の一部改正について: 厚生労働省 (H27 4 改正46通知本文(最新版)). 2016年4月26日閲覧。
  32. ^ 難波恒雄; 富山医科薬科大学和漢薬研究所 (2007-11-30). 和漢薬の辞典 (新装版 ed.). 朝倉書店. pp. 143-144. ISBN 978-4-254-34008-2 
  33. ^ a b c 宮川豊美、川村一男、食中毒菌に対する香味野菜の発育阻止作用 『和洋女子大学紀要』 家政系編 29, p.13-19, 1989-03-31, ISSN 0916-0035, NAID 110000472201
  34. ^ 野田克彦、磯崎さとみ、谷口春雄、スパイス類の大腸菌増殖抑制と促進効果 『日本食品工業学会誌』 1985年 32巻 11号 p.791-796, doi:10.3136/nskkk1962.32.11_791
  35. ^ a b 池内慧士郎、酵母の増殖・醗酵特性に及ぼすショウガの作用に関する研究 (PDF)
  36. ^ 高橋大輔、鈴木隆、加藤良一、食品の持つ抗菌性を調べる実験の教材化 『教育科学』 2010年 15巻 1号 p.1-20, ISSN 0513-4668、山形大学紀要
  37. ^ 円谷悦造、浅井美都、太田美智男「調理食品での腸管出血性大腸菌O157:H7をはじめとする食中毒菌に対する食酢の抗菌作用」『日本栄養・食糧学会誌』第51巻第2号、1998年、101-106頁、doi:10.4327/jsnfs.51.101 
  38. ^ Ethnopharmacologic investigation of ginger (Zingiber officinale) Journal of Ethnopharmacology Volume 27, Issues 1–2, November 1989, Pages 129–140
  39. ^ Chen, Jaw-Chyun; Li-Jiau Huang, Shih-Lu Wu, Sheng-Chu Kuo, Tin-Yun Ho, Chien-Yun Hsiang (2007). “Ginger and Its Bioactive Component Inhibit Enterotoxigenic Escherichia coli Heat-Labile Enterotoxin-Induced Diarrhea in Mice”. Journal of Agricultural and Food Chemistry 55 (21): 8390–8397. doi:10.1021/jf071460f. PMID 17880155. 
  40. ^ 大澤俊彦、がん予防と食品 『日本食生活学会誌』 2009年 20巻 1号 pp. 11 - 16, doi:10.2740/jisdh.20.11
  41. ^ ショウガ 著:大野智(島根大学) サイト:厚生労働省eJIM
  42. ^ a b c Ginger サイト:drugs.com
  43. ^ 生姜による食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1例
  44. ^ 健康食品・サプリ〈成分〉のすべて : ナチュラルメディシン・データベース日本対応版
  45. ^ Pickersgill, Barbara (2005). Prance, Ghillean; Nesbitt, Mark. eds. The Cultural History of Plants. Routledge. pp. 163–164. ISBN 0415927463 


「ショウガ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ショウガ」の関連用語

1
100% |||||

2
100% |||||

3
100% |||||

4
100% |||||

5
100% |||||

6
98% |||||

7
98% |||||

8
98% |||||

9
98% |||||

10
98% |||||

ショウガのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ショウガのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのショウガ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS