位置と機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/24 04:04 UTC 版)
「嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子」の記事における「位置と機能」の解説
CFTRの機能はリン酸化とATPに依存したアニオンチャネルであり、特定のアニオン(Cl−など)のコンダクタンスを増加させ、電気化学的勾配に従って移動させる。ATPによって駆動されるCTFRのコンフォメーション変化は、アニオンが電気化学的勾配に従って膜を越えて移動する際のゲートを開いたり閉じたりする。これは他のABC輸送体とは対照的であり、これらではATPによって駆動されるコンフォメーション変化によって基質の電気化学的勾配に逆らった、膜を越えた移動が行われる。本質的には、CFTRは開いたコンフォメーション状態で「漏れる」、「壊れた」ABC輸送体として進化したイオンチャネルである。 CFTRには2つのTMDが存在し、それぞれNBDと連結されている。CFTRにはRドメインと呼ばれる他のドメインも存在する。ABC輸送体スーパーファミリーの他のメンバーは、原核生物で栄養素の取り込みに関与していたり、真核生物でさまざまな基質の搬出に関与していたりする。ABC輸送体は、ATPの加水分解による自由エネルギーを、基質の電気化学的勾配に逆らった、細胞膜を挟んだ移動に変換するために進化したものである。ABC輸送体には2つの主要なコンフォメーションが存在し、1つは積み荷結合部位が細胞質側を向いた内向きの状態(ATP非結合状態)、もう1つは外向きの状態(ATP結合状態)である。各NBDへのATPの結合はNBDの二量体化を引き起こし、膜貫通ヘリックスの再配置をもたらす。これによって積み荷結合部位のアクセス性が内向きから外向きへ変化する。ATPの結合とその後の加水分解によって内向きと外向きの積み荷結合部位が交互に露出することで、電気化学的勾配に逆らった一方向への積み荷の輸送が保証される。CFTRでは、内向きコンフォメーションと外向きコンフォメーションを繰り返すことでチャネルの開口と閉口が行われる。特に、NBDの二量体化(ATP結合によって有利となる)は外向きコンフォメーションへの移行と共役しており、アニオンのための開いた膜貫通経路が形成される。その後の加水分解によってNBD二量体は不安定化され、内向きコンフォメーションが有利な状態となり、アニオン透過性経路は閉じられる。 CFTRは、肺、肝臓、膵臓、消化管、女性器、男性器など多くの器官の上皮細胞に存在する。 肺の気道では、CFTRは肺塩類細胞(pulmonary ionocyte)と呼ばれる少数の特殊な細胞で最も高度に発現している。皮膚では、CFTRは皮脂腺とエクリン腺で強く発現している。エクリン腺では、CFTRは汗管を構成する上皮細胞の頂端膜に位置している。 通常、CFTRは塩化物イオンやチオシアン酸イオン(負電荷を持つもの)の上皮細胞から気道液や粘液への移動を可能にする。正に帯電したナトリウムイオンも受動的に輸送されて粘液中の総電解質濃度は増加し、浸透圧によって水が細胞外に移動する。 気管支や卵管に並ぶ、運動性の繊毛を持つ上皮細胞では、CFTRは頂端膜に位置しているが繊毛には位置していない。一方、上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)は繊毛全長にわたって位置している。 汗腺でのCFTRの欠陥は塩化ナトリウムとチオシアン酸ナトリウムの再吸収の低下を引き起こし、汗の塩分が高くなる。このことは嚢胞性線維症の臨床的に重要な検査である汗試験(英語版)の基礎となっており、遺伝子スクリーニングでの診断に利用されることも多い。
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位置と機能
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「上皮性ナトリウムチャネル」の記事における「位置と機能」の解説
ENaCは極性のある上皮細胞の頂端膜の位置しており、特に腎臓(主に集合管)、肺、皮膚、生殖器、結腸に位置している。ENaCは、遠位ネフロン、循環器と生殖器、外分泌腺の上皮細胞において、頂端膜を越えたNa+の再吸収を促進する。Na+の濃度は細胞外液の浸透圧の主要な決定因子であるため、Na+濃度の変化は体液の移動に影響を与え、したがって体液の体積と血圧に影響を与える。結腸と腎臓におけるENaCの活性は、鉱質コルチコイドのアルドステロンによって調節される。ENaCはトリアムテレンまたはアミロライドによって遮断され、これらは医療的には利尿薬として機能する。腎臓では心房性ナトリウム利尿ペプチドによって阻害され、ナトリウム利尿(英語版)と利尿が引き起こされる。 ENaCは脳において血圧の調節に重要な役割を果たす。バソプレシン(VP)ニューロンは、神経内分泌の調節と心血管系の恒常性の維持のための自律神経応答に主要な役割を果たす。高い食塩摂取量はENaCの発現と活性の増大を引き起こし、VPニューロンの定常状態での脱分極を引き起こす。これは、食事での食塩摂取がENaCの活性を介してVPニューロンの活性に影響を与える機構の1つである。脳のENaCは食事中のナトリウムに対する血圧応答にも関与している。 高解像度の免疫蛍光染色(英語版)を利用した研究では、ENaCは気道と女性器の多繊毛細胞(multi-ciliated cell)の表面を覆う繊毛の全長にわたって位置していることが明らかにされている。これら運動性繊毛を有する上皮細胞では、ENaCは繊毛周囲液(periciliary fluid)の浸透圧の調節因子として機能し、その機能は体液を繊毛の運動性に必要な深さに維持しておくために必須である。繊毛の運動は、気道では粘膜繊毛クリアランス(英語版)に必須であり、女性器では卵母細胞の移動に必須である。 ENaCとは対照的に、塩化物イオンの輸送を調節するCFTRは繊毛上には見られない。これらの知見は、ENaCがCFTRとの直接的な相互作用によってダウンレギュレーションされるという、以前の仮説とは矛盾するものである。嚢胞性線維症の患者では、CFTRはENaCをダウンレギュレーションすることができないため、肺での過剰吸収と再発性の肺感染症が引き起こされる。ENaCはリガンド依存性イオンチャネルである可能性が示唆されている。 皮膚の表皮層では、ENaCは角化細胞、皮脂腺、平滑筋細胞で発現している。これらの細胞ではENaCは主に細胞質に位置している。エクリン腺では、ENaCは主に汗管の内腔に面した頂端膜に位置している。汗管でのENaCの主要な機能は、汗として分泌されたNa+の再吸収である。全身性偽性低アルドステロン症I型(systemic pseudohypoaldosteronism type I)を引き起こすENaCの変異を有する患者では、特に暑い気候で大量のNa+が失われる。 また、ENaCは味覚受容器にも見つかり、塩味の知覚に重要な役割を果たす。齧歯類では塩味は事実上完全にENaCによって媒介されている一方、ヒトではその重要性は低いようであり、約20%がENaCによるものとされる。
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