不死
『吸血鬼ドラキュラ』(ストーカー)14「ドクター・セワードの日記・続」 吸血鬼は不死者である。彼らは人間の生き血を吸って生き続ける。若返ることもある。血を吸われた人間は、吸血鬼の仲間になる。不死者は、死ぬことができる者を呪い、不死の仲間をふやそうとする。通常の人間は、死ねばその魂は天の神のもとへ召される。しかし不死者は、永遠に神のもとへ行けないのである。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第4章 ゴルゴン3姉妹のうち、ステノとエウリュアレは不死で、メドゥサのみが不死でなかった。それゆえペルセウスは、メドゥサの首を取った。
『火の鳥』(手塚治虫) 火の鳥は、弓で射ようと槍で突こうと絶対に死なない。ある時期が来ると、火の鳥は炎の中に飛びこんで我が身を焼き、新しい体に生まれ変わる。火の鳥の血を飲んだ者も不死になる。
*不死の蛇頭→〔封印〕1aの『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章。
★2a.不死ではあるが、老衰する。
『アプロディーテへの讃歌』 曙の女神エオスはトロイア王家のティトノスを愛し、ゼウスに請うて彼を不死にした。しかし不老を願うのを失念したため、しだいにティトノスは老衰し、身動きもできなくなった。女神はティトノスを部屋に入れ扉を固く閉じた。ただ彼の声だけは今も流れ出ている〔*後には、ティトノスは蝉に化したと言われる〕。
『ガリヴァー旅行記』(スウィフト)第3篇第10章 ラグナグ国には、不死の人間が稀に生まれる。彼らは不死といっても若いままではいられず、年とともに老衰し、髪も歯も抜け、記憶力もなくなり病気にもなる。それでも永久に死ねない。不死人間は、ラグナグの一般国民からは、軽蔑され憎まれている。この国を訪れた「私(ガリヴァー)」は、不死人間の実態を見て、長寿への願望が失せてしまった。
*長寿ではあるが老衰する→〔年数〕2の『変身物語』(オヴィディウス)巻14。
*不死ではあるが、眠り続ける→〔長い眠り〕3の『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第7章。
*不死ではあるが、健康ではない→〔半死半生〕1の『半人前』(星新一)。
『淮南子』「人間訓」第18 隠士の単豹(ぜんぴょう)は、巌(いわや)に住んで谷の水を飲み、木綿や麻織を着ず、五穀を口にせず、70歳になってもなお、童子の顔つきであった。しかしある時不意に、飢えた虎にあって食い殺された。
★3.不死を求める人。
『ギルガメシュ叙事詩』 親友エンキドゥが神々から死を宣告され、12日間の病気の後に死ぬ。ギルガメシュは、「自分もやがては死の運命を免れないのだ」と知って恐れ、永遠の生命を求める旅に出る。彼は、地の果て・死の海の彼方に不死者ウトナピシュティムを訪れ、不死の秘密を聞き出そうとするが、眠りこんでしまう→〔眠る男〕2。
『史記』「秦始皇本紀」第6 方士徐市(じょふつ=徐福)らが「海中に3つの神山があり、仙人が住む」と秦の始皇帝に上申し、不死の神薬を求めて船出する。しかし数年を経ても神薬を得られず、徐市らは「大魚に妨げられて島まで行けない」と、嘘の報告をする。始皇帝は自ら大魚を射止めようと海沿いを旅し、途中で病死する。
『太平広記』巻4所引『仙伝拾遺』 秦の始皇帝は、東海にある島・祖洲に生えている不死の草を得たいと欲した。始皇帝の命令で、徐福が童男・童女それぞれ3千人を引き連れ、祖洲を目指して船出した。しかし彼らは帰って来なかった。それから1千年近く後、唐の開元年間に、重病の人が薬を求めて祖洲に渡り、徐福に会って病気を治してもらった。
*徐福の船は、日本の紀州熊野の浦に着いた→〔女護が島〕4の『椿説弓張月』後篇巻之1第17回。
『火の鳥』(手塚治虫)「乱世編」 平清盛は不死を求め、宋国から火焔鳥を取り寄せる。火焔鳥は千載を生き、その生き血を飲む者は不死になるという。しかし清盛が得たのは普通の孔雀にすぎなかった。治承5年(1181)閏2月、高熱で危篤に陥った清盛は孔雀の血を飲み、寵愛する吹子に「若返る感じがする。お前を抱きたい」と言って息絶える。
★4.不死性を他にゆずる。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章 ケンタウロス族のケイロンはヘラクレスの矢で膝を射られ、重い傷を負った。ケイロンは洞穴にこもって死にたいと願ったが、不死の身なのでそれができなかった。プロメテウスが、ケイロンの不死性を引き受けることをゼウスに申し出、ようやくケイロンは死ぬことができた。
『不死の人』(ボルヘス) ディオクレティアヌス帝時代(3~4世紀)の軍人だった「わたし」は、不死の河を求めて旅をし、その水を飲んで不死となった。河の周りには不死の人々が住んでいたが、10世紀頃、不死の人々は「別の地方に、不死性を消してくれる別の河があるだろう」と考え、全世界に散らばった。「わたし」は1921年に、ある港町郊外の河の水を飲んで、可死の身となった。1929年に「わたし」は死んだ。
★6.不死の薬を得る。
『さざれ石』(御伽草子) 第13代・成務天皇(在位131~190)に男女38人の子があり、その末娘さざれ石の宮は、薬師如来を信仰していた。ある時、薬師如来の使者・金毘羅大将が来て、不老不死の薬をさざれ石の宮に与える。そのため8百余年を経ても、宮は若い姿だった。後に薬師如来が、さざれ石の宮を肉身のまま浄瑠璃世界に迎えた。
『竹取物語』 かぐや姫は月世界へ帰るに際して、不死の薬と手紙を帝に贈った。帝は「逢ふこともなみだに浮かぶわが身には死なぬ薬もなににかはせむ」と詠歌し、天にもっとも近い山(=富士山)の頂で、この2品に火をつけて燃やすよう、臣下に命じた→〔地名〕1。
*不死の飲料アムリタ(甘露)を得る→〔海〕7cの『マハーバーラタ』第1巻「序章の巻」。
*不死の薬を得そこなう→〔墓〕6bの『ケルトの神話』(井村君江)「銀の腕のヌァザとブレス王」。
*変若水(しじみず)を浴びれば不死になる→〔死の起源〕1の『月と不死』(ネフスキー)。
*不死を得そこなう→〔食物〕3の『アダパ物語』(古代アッカド)・〔天人女房〕1aの『太平広記』巻63所引『玄怪録』(玉巵娘子)。
*年をとらぬ人々→〔作中人物〕1cの『サザエさん』(長谷川町子)第29巻118ページ。
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