日本の右翼団体 概要

日本の右翼団体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/26 04:28 UTC 版)

概要

日本の右翼団体は、通常は観念右翼、正統右翼、仁侠右翼革新右翼街宣右翼宗教右翼新右翼行動する保守右派系市民グループなどに分類される。また「右翼団体」の呼称はあくまで左翼との比較における名称であるため、自ら右翼団体と標榜することはなく一般には「愛国者団体」という表現をする(連絡機関の団体名にも「愛国」の文字が見られる)。伝統的な意味の右翼思想は、伝統や文化の価値を重視する保守主義であり、日本の右翼が思想的な源流を主張するのは近世の国学や、明治維新の三傑と目されながらも士族の反乱である西南戦争を起こした西郷隆盛征韓論を貫き自由民権運動を行った板垣退助などである[1]。これらは、西洋化につながる近代化や、それを推進する中央政府を警戒し、地域の宗教や歴史や習俗の独立性や継続性を重視する、保守的・伝統的・地方主義的な右翼潮流として、以後の政府や資本家の用心棒的な「観念右翼」や、社会主義に対抗し、国内の腐敗を除去する「革新」を打ち出す[2]。「革新右翼」とは別に存在していくことになる。明治6年(1873年)、書契事件などに代表される朝鮮王朝の横暴に憤慨し征韓論を唱え、「明治6年の政変」で下野した板垣退助らは、翌年(1874年1月12日、「愛国公党」を組織し、1月17日、政府に『民撰議院設立建白書』を提出した[3]。これが日本で最初に「愛国」の名を冠した団体であり政治結社である[3]。頭山満の向陽社(玄洋社の前身)も、この系統を引き自由民権運動の結社として産声をあげた[3]

日本では、車両を用いて駅前や街頭、官公庁近辺や糾弾対象となる企業や集会場の周辺等での大音量による抗議活動や、大音量の音楽を流して走行する「街宣右翼」が広く知られ「典型的な右翼」と見られがちであるが、この活動方法は1970年昭和45年)内外にあらわれたものである。

また、一部の団体は暴力団と表裏一体の右翼団体(仁侠右翼、右翼標榜暴力団)の場合もあり、思想面での政治運動には積極的ではなく、企業恐喝政治家有名人恐喝などを目的としたいわゆる偽装右翼団体の可能性もある[4][5][6][7][8]


注釈

  1. ^ 明治初年は戊辰戦争が決着しておらず、また尊攘派や脱藩浮浪問題は解決しているとはいえず、明治新政府による天皇行幸(東行)すら新政府中枢による政治の壟断として反論が噴出する状態であった。「久留米と肥後大に関係之様子に而、浮浪をこぶし則今攘夷之議を申立、迂活之ものは大に為其惑わされ候ものも不少、随面御発輦之事を疑惑を立、宮堂上等方へ迫り建言いたし、宮堂上方もまた為其に駆使せられ頻に奔走、一時其混乱不用意」(木戸孝允書簡、明治2年3月10日)。尊王派の不穏な動きには一部の公家や脱藩浮浪が結びつく傾向があった。『東京「遷都」の政治過程』佐々木克(京都大学人文學報 1990年)[1] P.60(PDF-P.21)。二卿事件も参照。
  2. ^ 日本人拉致問題などでの従来の日本政府外交政策における姿勢や中国・韓国への『謝罪外交』を弱腰、土下座外交として批判している。
  3. ^ 1982年(昭和57年)9月、歴史教科書問題でベトナム共産党の機関紙「ニャンザン」に日本にとって批判的とされるような記述があった

出典

  1. ^ 猪野健治『日本の右翼』
  2. ^ 「右翼―3.第二次世界大戦前の日本における右翼運動とファシズム」 小学館日本大百科全書
  3. ^ a b c d e f 『板垣精神 : 明治維新百五十年・板垣退助先生薨去百回忌記念』”. 一般社団法人 板垣退助先生顕彰会 (2019年2月11日). 2019年8月30日閲覧。
  4. ^ a b 2006年(平成18年)10月19日東京・外国特派員協会での講演にて。ビデオニュース・ドッドコム
  5. ^ a b c Paul Baylis, "Korean activist braces for `storm of fascism'"
  6. ^ 「今こそ日本的変格を目指す右翼民族派が立つ時」『朝まで生テレビ!激論!日本の右翼』全国朝日放送、1990年
  7. ^ a b 李鳳宇『パッチギ!的 世界は映画で変えられる』岩波書店、2007年(平成19年)、p192
  8. ^ a b 岡留安則『噂の真相25年戦記』集英社新書、2005年(平成17年)、p58。
  9. ^ 田中『敗因を衝く―軍閥専横の実相』中公新書。
  10. ^ a b 『世界大百科事典』 平凡社、2007年(平成19年)、「右翼」の項目
  11. ^ 『国史大事典』第2巻 吉川弘文館、1980年(昭和55年)、「右翼運動」の項目(執筆者:高橋正衛)
  12. ^ 「再軍備ナショナリズムの出現と展望」南基正(東北大学大学院法学研究科 渥美財団21世紀東アジア研究フォーラム)[2] (PDF) P.4
  13. ^ 平凡社『世界大百科事典』1988年(昭和63年)
  14. ^ 野村秋介見沢知廉四宮正貴鈴木邦男木村三浩など。
  15. ^ 安田浩一氏「在特会は崖っぷち状態まで追い詰められている」│NEWSポストセブン
  16. ^ 国連人権委、ヘイトスピーチ禁止勧告 日本に実行求める:朝日新聞デジタル
  17. ^ 法務省:ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動 ヘイトスピーチ,許さない。
  18. ^ 東京でも「金正恩を許すな」統一日報
  19. ^ 「右翼思想犯罪事件の綜合的研究」。所収、今井清一・高橋正衛編『現代史資料4国家主義運動』みすず書房、1988年(昭和63年)。
  20. ^ 右翼学生調査に文部省着手 問題は愛国学生連盟 東京朝日新聞 1932.3.20 (昭和7)、神戸大学経済経営研究所 新聞記事文庫
  21. ^ 堀幸雄『戦後の右翼勢力』勁草書房、1983年(昭和58年)。
  22. ^ 日本を知るには裏社会を知る必要がある菅沼光弘講演 外国特派員協会、2006年10月19日)ビデオニュース・ドッドコム2006年(平成18年)10月27日
  23. ^ 「今こそ日本的変格を目指す右翼民族派が立つ時」『朝まで生テレビ!激論!日本の右翼』全国朝日放送、1990年(平成2年)
  24. ^ 私が参加する集会は大丈夫か―右翼暴力から表現の自由をどう守るか 弁護士毛利正道





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  日本の右翼団体のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「日本の右翼団体」の関連用語

日本の右翼団体のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



日本の右翼団体のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの日本の右翼団体 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS