旭川市旭山動物園 歴史

旭川市旭山動物園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 14:37 UTC 版)

歴史

旧動物園正門

かつて動物園は大都市にしかない施設であり、北海道では1951年にようやく札幌市円山動物園が開園した。高度経済成長の到来した1960年前後から全国の地方都市で盛んに動物園が建設されるようになり、1963年にはおびひろ動物園が開園した。

旭川市でも動物園開設を求める声が大きくなり、当時の五十嵐広三市長(後の建設大臣内閣官房長官)が、1964年度以降開園へ向け予算をつけた。建設地には市内数カ所の候補があったが、地形や地質が適していたこと、また市内中心部から旭川電気軌道の路面電車(旭川電気軌道東旭川線1972年限りで廃止)が運行されていたことなどが決め手となり、市の東部にある旭山が選ばれた。1966年4月着工、1967年6月完工、総事業費は約2億5千万円であった。各地に預託されていた動物を運び入れて開園したのは1967年7月1日である。当初の動物は75種505匹だった。なお、これにはコイ200匹も含まれている。当時は動物園以外に遊園地も併設されており、観覧車メリーゴーラウンドジェットコースター1983年設置)などが設けられていた[10]

当初40万人ほどだった年間入園者数は、旭川市の人口増とともに右肩上がりに増加したが、1983年の約59万7千人をピークに減少に転じた。1994年にはニシローランドゴリラ[11]ワオキツネザルが相次いでエキノコックス症で死亡するという事態が発生、施設面も含めて予防策を検討するために8月27日で営業を切り上げた。人間への感染の恐れはほとんどなかったが、市民の不安は大きく、入園者減少に追い打ちをかける形となった。1996年には約26万人まで入園者数は落ち込んだ[11]

これを打開すべく、1997年より行動展示を実現する施設づくりに着手した。同年には巨大な鳥籠の中を鳥が飛び回る「ととりの村」が完成。翌年以降「もうじゅう館」、「さる山」、「ぺんぎん館」、「オランウータン舎」、「ほっきょくぐま館」、「あざらし館」、「くもざる・かぴばら館」、チンパンジーの森と毎年のように新施設をオープンさせ、そのたびに入園者を増やしていった。一方で遊園地の遊具の更新はほとんど行われなくなり、結局2007年に遊園地自体を廃止した[10]

2005年11月15日NHKの番組「プロジェクトX〜挑戦者たち〜・旭山動物園〜ペンギン翔ぶ〜」に取り上げられた。また、2006年5月13日には、フジテレビ系列で旭山動物園をモチーフとしたスペシャルドラマ「奇跡の動物園〜旭山動物園物語〜」が放送、次いで2007年5月11日2008年5月16日に続編が放送され、その後もたびたびドラマの撮影や映画の撮影が行われている。

年間入園者数は、2005年度には前年比55万人増の206万人、2006年度には304万人、2007年度には307万人を記録している。恩賜上野動物園の350万人に肉薄し、夏休み期間中はそれを凌ぐ入場者を集め、北海道を代表する観光地のひとつとなった。なお、入園者数は2007年度をピークにその後はブームの沈静化に伴い減少に転じたが、2011年度頃からは160万人台の入園者数となって減少に歯止めがかかった(2015年度現在)。現在でも恩賜上野動物園・名古屋市東山動植物園に次ぐ日本第3位の入園者数を誇り、2位までの動物園が大都市にあり、かつジャイアントパンダコアラなどの集客力のある動物を飼育していることを考慮すると驚異的な成績と考えられる。展示施設はその後も毎年のように充実を続けており、今でも北海道を代表する観光地のひとつであることに変わりはない。特に外国人の来園が多く、北海道に外国人観光客を誘致するための重要な観光地のひとつと位置づけられている。

Webページではマイクロソフトと連携し、Microsoft Windows Vistaの標準機能であるWPFを活用した、旭山動物園の紹介や動物について詳細に紹介する無料コンテンツ「Mother Earth〜母なる地球」が2007年に作られた。

2009年4月には、旭川市が制定した旭山動物園オフィシャルサポーター制度で承認された「あさひやま"もっと夢"基金応援サイト 旭山動物園モバイル」がJNN系列である北海道放送よりリリースされ、「あざらし館」「ほっきょくぐま館」「ぺんぎん館」のライブカメラや、開園当時の様子などの貴重なテレビ放送の動画を配信した。2013年3月のHBCフィーチャーフォン向け有料サービス終了に伴い配信を終了。


  1. ^ a b 旭川市旭山動物園条例
  2. ^ a b c d 旭川市旭山動物園施設概要 旭川市旭山動物園
  3. ^ 旭川市旭山動物園 入園者数〔2015(H27)年度〜2019(R1)年度〕
  4. ^ 特にアジアからの観光客が顕著。[要出典]
  5. ^ 旭山動物園、真冬も熱い 動物生き生き、団体急増 朝日新聞 2006年02月03日記事]
  6. ^ 全国500か所のレジャー・集客施設 入場者数ランキング 綜合ユニコム 2011年10月3日
  7. ^ 2011年10月30日放送スタイルプラス
  8. ^ http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/zoo/news/kikin/kikin.html
  9. ^ イベント紹介と年間スケジュール”. 旭川市 旭山動物園. 2018年4月1日閲覧。
  10. ^ a b さらば「遊戯施設」(平成19年秋) - 旭山動物園ヒストリー・読み物
  11. ^ a b c ヒューマンインタビュー 牧田雄一郎さん(60) *旭山動物園で開園以来勤務し今月末で退職する飼育員*動物たちとともに40年*今後も地元に密着を 旭川報道部・小川郁子 2008/03/23 北海道新聞旭川支社 2013-3-26閲覧
  12. ^ a b c d e 旭川市旭山動物園 年度別入園者数(昭和42年度~平成28年度分)”. 旭川市. 2017年12月3日閲覧。
  13. ^ 2003年2月13日共同通信
  14. ^ 北海道新聞文化賞”. 北海道新聞社. 2023年12月21日閲覧。
  15. ^ “旭山動物園が遊園地廃止へ…アフリカ館など“本業”を拡大”. MSN産経ニュース. (2007年10月16日). オリジナルの2007年10月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071018025638/http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071016/trd0710161147003-n1.htm 2022年9月22日閲覧。 
  16. ^ “レッサーパンダの橋が登場 旭山動物園に新施設”. MSN産経ニュース. (2007年12月19日). オリジナルの2008年1月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080102054406/http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071219/trd0712190932006-n1.htm 2022年9月22日閲覧。 
  17. ^ “キツネ襲撃?おとりフラミンゴ1羽死に1羽不明”. 読売新聞. (2012年8月18日). http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120818-OYT1T00181.htm 2012年8月23日閲覧。 
  18. ^ “バイバイ「ザブコ」 旭山動物園、49歳のカバ衰弱死”. 北海道新聞. (2013年11月28日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/506914.html 2013年11月28日閲覧。 
  19. ^ 旭川市旭山動物園 国土交通省 p.7
  20. ^ 旭川市旭山動物園開園50周年記念事業ロゴマーク - 旭川市旭山動物園(2017年1月18日更新)2017年12月16日閲覧
  21. ^ 旭山動物園開園50周年記念事業の実施について - 旭川市旭山動物園(2017年4月24日)2017年12月16日閲覧
  22. ^ 旭山動物園開園50周年記念日イベントについて(7月1日・7月2日) - 旭川市旭山動物園(6月21日更新)2017年12月16日閲覧
  23. ^ 旭山「登録博物館」に道内の動物園で初 - 北海道新聞2024年3月6日
  24. ^ “旭山動物園で人気のシロサイ「ノシオ」が天国へ”. MSN産経ニュース. (2009年11月19日). オリジナルの2009年11月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20091130163550/http://sankei.jp.msn.com/life/trend/091119/trd0911191811011-n1.htm 2022年9月22日閲覧。 
  25. ^ “旭山動物園、海鳥館新設へ : 北海道発”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2013年4月27日). オリジナルの2013-4-29 09:00時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2013-0429-0900-26/www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20130427-OYT8T00069.htm 2013年4月29日閲覧。 
  26. ^ 開園期間・時間”. 旭川市旭山動物園. 2023年12月21日閲覧。
  27. ^ [1] - 旭川市旭山動物園2023年冬季日本語パンフレット
  28. ^ [2] - 旭川市旭山動物園ホームページ
  29. ^ 旭山動物園往復バスセット券”. 北海道中央バス. 2023年12月21日閲覧。
  30. ^ 旭山動物園きっぷ(2021年度設定)”. JR北海道. 2021年4月7日閲覧。
  31. ^ JR北海道「特急ライラック旭山動物園号の運行」及び「特急旭山動物園号ラストラン」について”. 旭山にゅーす・ぶろぐ. 旭川市旭山動物園. 2018年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月19日閲覧。






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