啓蒙思想 定義と特徴

啓蒙思想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 04:41 UTC 版)

定義と特徴

イギリス経験論を体系化したロック
代表的なサロンを主催したポンパドゥール夫人
彼女のサロンには著名な啓蒙思想家が出入りしていた。

啓蒙思想はあらゆる人間が共通の理性をもっていると措定し、世界に何らかの根本法則があり、それは理性によって認知可能であるとする考え方である。方法論としては17世紀以来の自然科学的方法を重視した。理性による認識がそのまま科学的研究と結びつくと考えられ、宗教と科学の分離を促した一方、啓蒙主義に基づく自然科学や社会科学の研究は認識論に著しく接近している。これらの研究を支える理論哲学としては経験論が主流であった。

啓蒙主義は科学者の理神論的あるいは無神論的傾向を深めさせた。イギリスにおいては自然神学が流行したが、これは自然科学的な方法において聖書に基づくキリスト教神学を再評価しようという考え方である。この神学はの計画は合理的であるという意味で既存の聖書的神学とは異なり、啓蒙主義的なものである。自然神学の具体例としてはイギリスのトーマス・バーネットをあげることができる。バーネットは聖書にある(ノアの方舟物語における)「大洪水」を自然科学的な法則によって起こったものであると考え、デカルトの地質学説に基づいて熱心に研究した。また啓蒙主義の時代には聖書を聖典としてではなく歴史的資料としての文献として研究することもおこなわれた。キリスト教的な歴史的地球観とは異なった定常的地球観が主張され、自然神学などでも支持された。

啓蒙主義は進歩主義的であると同時に回帰的である。これは啓蒙主義の理性絶対主義に起因する。理性主義はあらゆる領域での理性の拡大を促し、さまざまな科学的発見により合理的な進歩が裏付けられていると考えられた。しかし自然人と文明人に等しく理性を措定することは、文明の進歩からはなれて自然に回帰するような思想傾向をも生み出した。この時代の思想にローマギリシャの古典時代を重視するルネサンス的傾向が見られることも、このような回帰的傾向のあらわれである。また時間的な一時代の生活形態が空間的などこかに存在しうるというようなことを漠然と仮定する考え方も指摘できる。具体的な例を挙げれば、地理上の発見により明らか先にされたアメリカ先住民を未開的段階にあるとし、ヨーロッパ的文明社会の前史的な原始状態であるとする考え方である。それがユートピア的幻想を伴って原始社会や古典古代を美化する思想をはぐくんだ。とはいえ全体としてみれば思想の主流は進歩主義的であったといえる。

政治思想としては自然法論が発達し、とくに社会契約説が流行した。また理性の普遍性や不変性は人間の平等の根拠とされ、平等主義の主張となって現れた。一般的に性善説的傾向が強く、この時代の自然法はほぼ理性法と同義である。理性を信頼する傾向は往々にして実践理性(すなわち良心)の絶対化に進み、政治思想において急進的な傾向を生むこととなった。しかし自然状態に対する分析的研究や認識論の深化によって実践理性の共通性・絶対性は次第に疑われ始めることになる。経験法則の認知主体としての純粋理性と道徳法則の実践主体である実践理性との分裂傾向は徐々に大きな問題となり、啓蒙思想の存立基盤を揺るがすこととなった。

啓蒙思想の舞台

これらの啓蒙思想が展開されたのは、絶対王政の貴族たちが主催する個人的な社交場であるサロンであったり、アカデミーや科学協会といったような新しいタイプの知的専門機関であった。旧来の神学的な大学と啓蒙思想は対立関係にあることも多かったが、啓蒙思想を積極的に取り入れる新しい種類の大学も各地に登場した。旧来の大学でも従来もっとも権威があった神学部を学問的中心から外し、新しいカリキュラムを導入することがおこなわれるようになった。








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