亜急性硬化性全脳炎 亜急性硬化性全脳炎の概要

亜急性硬化性全脳炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/17 03:32 UTC 版)

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概要

亜急性硬化性全脳炎は、よく見られるウイルスによる急性の感染症と比べて、発症までにだいぶ時間がかかる。亜急性と付くのは、そのためである。具体的には、麻疹ウイルスが感染し麻疹になったあと、ウイルスが中枢神経系へと潜伏した後に変異を起こして、SSPEウイルス(SSPEは亜急性硬化性全脳炎の英語名の頭文字)となって、それがに持続感染することで、亜急性硬化性全脳炎が発生する。

様々な治療が試みられてきたものの、2020年現在においても延命治療が可能なだけで、根治法は存在しない。したがって、亜急性硬化性全脳炎を発症した場合、その患者は死亡する。

患者像

亜急性硬化性全脳炎の発症者は、その9割以上が14歳以下の小児である。既述の通り、原因となるSSPEウイルスは中枢神経系へ感染後に変異を起こした麻疹ウイルスである。したがって、通常は麻疹の罹患者の中のごく一部の者が、数年後に亜急性硬化性全脳炎を発症するという経過を辿る。

麻疹に感染してから亜急性硬化性全脳炎を発症するまでの潜伏期間は2年から10年程度と考えられており、その発症頻度は10万人に1.7人程度(麻疹罹患者の0.0017 %程度[注釈 1])とされている。ただし、特に1歳以下の者が麻疹に罹患した場合、または、免疫抑制剤使用中に麻疹に罹患した場合には、のちに亜急性硬化性全脳炎を発症する危険性が高いことが知られている[1]

この他、妊娠中の女性が麻疹に罹患したことによって、のちに亜急性硬化性全脳炎を発症する症例も、ごく稀に存在する[2]

なお、1989年時点では、亜急性硬化性全脳炎発症者のうちの約90 %は麻疹の既往がある者であり、他に発症者の5 %は麻疹ワクチンの接種を受けた者であると発表されたが[3]、これに対して2007年12月には、麻疹ワクチンの接種が『亜急性硬化性全脳炎の原因となったという証拠は無い』という研究結果も発表されている[2]。しかしながら、麻疹に罹患していないはずなのに、どういうわけか亜急性硬化性全脳炎を発症したという症例も、極めて稀ながら存在している[1]

症状

亜急性硬化性全脳炎を発症したヒトは、その後、数ヶ月から数年間をかけて神経症状の進行が見られる。具体的には、性格の変化、知能低下(学業成績低下、記憶力低下)、脱力発作(例えば、手に持っている物を本人の意思とは無関係に落としてしまう、など)、起立歩行障害などが起こる。さらに進行すると、不随意運動、痙攣、摂食障害、自律神経の異常が現れてくる [注釈 2]。 最終的には意識も消失し、その後に死亡するという転帰をたどることが一般的である。

予後

亜急性硬化性全脳炎に対しては、インターフェロンイノシンプラノベクスによる免疫賦活治療、リバビリン投与などの抗ウイルス薬治療などを行うことで、症状の進行を遅らせて延命させる程度の効果は得られる場合もある。しかしながら、2019年現在においても延命が可能なだけで、亜急性硬化性全脳炎の根治を望める治療法は確立されていない。

なお、亜急性硬化性全脳炎による症状の1つで、痙攣が出た時などには対症療法が行われたり、起立歩行障害などに対しては理学療法が行われることもある。ちなみに、ごくごく稀に治癒する症例も存在はするものの[1]、基本的に予後不良であり、亜急性硬化性全脳炎を発症した者の死亡は、不可避である。


  1. ^ ただし別な値が書かれている文献もある。概ね麻疹罹患者の十万人に1人から数十万人に1人程度とされている。
  2. ^ ただし、ここまでに挙げた症状は、必ずしも亜急性硬化性全脳炎だけで起こる症状ではないことを留意されたい。例えば、てんかん欠神発作などでも手に持っている物を本人の意思とは無関係に落としてしまうといったことは起こり得る。実際に、亜急性硬化性全脳炎を発症することの多い年代である学童期の女児が、授業中に動作が止まって鉛筆を落とすということを繰り返していた原因が、実は欠伸発作だったという症例の報告などもある。無論、治療法も全く異なるので、気になる症状が出ている場合は、鑑別診断を受けるべきである。
  1. ^ a b c d 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)診療ガイドライン(案)
  2. ^ a b Campbell H. et al. Review of the effect of measles vaccination on the epidemiology of SSPE. Int J Epidemiol. 2007 Dec;36(6):1334-48. Epub 2007 Nov 23. PubMed
  3. ^ Okuno Y, Nakao T, et al. Incidence of subacute sclerosing panencephalitis following measles and measles vaccination in Japan. Int J Epidemiol. 1989 Sep;18(3):684-9. [1]


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