主要国首脳会議 経緯

主要国首脳会議

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/22 04:19 UTC 版)

経緯

発足時の名称は「先進国首脳会議」。

冷戦下の1973年オイルショックと、それに続く世界不況に起源を持つ。1973年3月25日、この不況を憂慮したアメリカ財務長官ジョージ・シュルツは、将来の経済的課題を討議する会議を模索するため、西ドイツ・フランス・イギリスからそれぞれ財務大臣(ヘルムート・シュミットヴァレリー・ジスカールデスタンアンソニー・バーバー英語版)を招集し、ワシントンD.C.で非公式の会合を行った[25]。この時、アメリカ大統領ニクソンは会場としてホワイトハウスを提供し、会合が地階の図書室で開催されたことから、この4か国は「ライブラリーグループ」と呼ばれた[26]。現在のG7財務相・中央銀行総裁会議の前身である。同年秋に開かれた国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会の際に行われた非公式会合の場で、シュルツは先の4か国に日本を加えることを提唱し、合意された[25]

1975年、フランスで大統領となったジスカールデスタンは、ライブラリーグループのメンバーに日本を加えた“工業化された4つの主要民主主義国”の首脳をフランスのランブイエに招待し、フランスを含めて5か国で初めての首脳会議を開き、定期的に首脳会議を持つことを提案した。このときの出席者は、主催国(議長国)を持ち回りで交代しつつ年に1回会議を持つことに合意した。こうしていわゆる「G5」が生まれた[27]。しかし、これを不服としたイタリアの首相アルド・モロが第1回会議に乗り込んで来た為、その場でイタリアが追加されG6となる。

しかし、これではヨーロッパに偏る為[28]、翌年のプエルトリコの首都サンフアンでのサミットで米国のジェラルド・フォード大統領の要請によりカナダが参加し「G7」となる。

冷戦の終結に続く1991年の第17回先進国首脳会議(ロンドン・サミット)終了後、旧東側諸国の盟主で、かつてはG7諸国と対立していたソ連(現・ロシア)とサミットの枠外で会合を行うようになった。ロシアは1994年のナポリ会合以降は首脳会議のうち政治討議に参加するようになり、1997年のデンバー会議以降は「世界経済」「金融」などの一部セッションを除き基本的に全ての日程に参加することになった。1998年のバーミンガム会議以降は従来の「G7サミット」に代わり「G8サミット」という呼称が用いられるようになった。さらに2003年エビアン・サミット以降、ロシアは「世界経済」に関するセッションを含め完全に全ての日程に参加するようになった。一方ロシアは経済力が大きくないなどの理由により、7か国財務大臣・中央銀行総裁会議には完全参加していなかった。

ロシアの参加には米大統領ビル・クリントンの示唆などもあった。これは当時のロシア大統領ボリス・エリツィンに経済改革を進めさせ、また北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大政策に関して中立を保つようにさせるためのクリントンのジェスチャーだった。ロシアは加入当初は経済破綻で貧困状態であったために先進国とは言い難く、一人当たり名目GDPも1999年には1334ドルに過ぎない発展途上国状態であった。このころ、名称が「先進国首脳会議」から「主要国首脳会議」に変更された。

他方、2005年2月18日、米上院議員ジョー・リーバーマンジョン・マケインがロシア大統領ウラジーミル・プーチンによって民主的、政治的自由が確保されるまではG8への参加を見合わせるようにロシアに呼びかけるなどの動きもあった。

当初においては様々な国際的な課題への強い影響力を有していたが、近年では新興諸国の政治的・経済的影響力の上昇に伴う相対的な影響力の低下とともに、形骸化や単なるセレモニー化が指摘されている。一方で、国連総会などの外交官レベルの会議に比べ、主要各国の首脳会議であるサミットは決断力・実行力に格段の優位性をもつほか、拒否権のような制度的問題がなく、国連を補完する意味で一定の役割を果たしているという指摘もある。

2014年3月25日オランダハーグで開かれた核セキュリティーサミットとあわせ、臨時のG7サミットが開かれた。その議場において、ロシアのウクライナに対する軍事介入やクリミア半島掌握などを非難したG7の首脳陣は、2014年6月にロシア・ソチで行われる予定だったG8サミットを中止し、会場をベルギーブリュッセルに変更する決定をした。また同会議において、「ロシアが態度を改め、G8において意味ある議論を行う環境に戻るまで、G8への参加を停止する」という内容のハーグ宣言[29]を発表した。これにより、G8としての活動は事実上停止し、冷戦当時のG7へと戻った[30]


注釈

  1. ^ ドイツ・フランス・イタリアの3国は更にEU加盟国
  2. ^ サミットとは | サミット情報 | 伊勢志摩サミット”. www.mofa.go.jp. 2023年2月6日閲覧。
  3. ^ 参加資格の停止であって、メンバーから除外ではない。
  4. ^ 1900年に義和団の乱で出兵した連合軍は、の8か国軍である。カナダは当時、英国の自治領であった。 その事を踏まえると、G7は八カ国連合軍の後継組織といえる。
  5. ^ 1991年の第17回ロンドンサミットにはソビエト連邦ミハイル・ゴルバチョフ大統領がゲスト参加した。

出典

  1. ^ 「G7」と「G8」と「G20」の違いとは?意外と知らない成り立ちと加盟国”. dime.jp. 2021年8月17日閲覧。
  2. ^ a b G7サミット開かれる → 民主主義の先進7カ国を覚えよう|一色清の「このニュースって何?」|朝日新聞EduA”. www.asahi.com. 2021年8月17日閲覧。
  3. ^ McHugh, David (2019年8月23日). “After 45 years, G-7 endures despite the Trump tweets”. AP. https://apnews.com/article/donald-trump-financial-markets-ap-top-news-financial-crisis-france-131ee4ca2e6e41909d871cfdef74020f 2021年6月4日閲覧。 
  4. ^ G20とは何ですか? G7とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan”. www.boj.or.jp. 2021年8月17日閲覧。
  5. ^ Report for Selected Countries and Subjects”. 国際通貨基金. 6/13/2021閲覧。
  6. ^ World Economic Outlook Database”. 国際通貨基金 (2017年10月). 6/13/2021閲覧。
  7. ^ Research Institute – Global Wealth Databook 2018[リンク切れ]
  8. ^ The G7: Frequently Asked Questions”. France Diplomacy – Ministry for Europe and Foreign Affairs (2019年8月26日). 2021年6月12日閲覧。
  9. ^ G7対中議論 日本期待もジレンマ”. 産経新聞. 2021年8月17日閲覧。
  10. ^ Shear, Michael D. (2021年6月11日). “G7 News: A Return to Face-to-Face Diplomacy” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/live/2021/06/11/world/g7-summit 2021年6月12日閲覧。 
  11. ^ データで見る国際秩序(1) ~「G7の結束」は必然か、経済力と軍事力のパワー・シフト~ | 石附 賢実 | 第一生命経済研究所”. www.dlri.co.jp. 2021年8月17日閲覧。
  12. ^ WWFジャパン. “生物多様性と気候変動の観点から見たG7コーンウォールサミット”. WWFジャパン. 2021年8月17日閲覧。
  13. ^ G7サミット、途上国の経済活動再開を後押し 背後に中国への対抗心”. 毎日新聞. 2021年8月17日閲覧。
  14. ^ Shear, Michael D. (2021年6月11日). “G7 News: A Return to Face-to-Face Diplomacy” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/live/2021/06/11/world/g7-summit 2021年6月12日閲覧。 
  15. ^ What is the G7?” (英語). G7 UK Presidency 2021. 2021年6月12日閲覧。
  16. ^ What are the G7 and the G8?”. www.g8.utoronto.ca. 2021年6月12日閲覧。
  17. ^ 男女格差、日本は120位でG7で最下位 政治・経済分野の遅れが影響し最低水準に:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2021年8月17日閲覧。
  18. ^ G7サミットに象徴される帝国主義時代とたいして変わっていない統治の仕組み[橘玲の世界投資見聞録]”. 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン. 2021年8月17日閲覧。
  19. ^ Scrap the G7 and its summit – it is hopeless, divided and outdated | Larry Elliott” (英語). the Guardian (2015年6月7日). 2021年6月13日閲覧。
  20. ^ もはや民主主義国が少数派に転落した世界の現実 | アメリカ”. 東洋経済オンライン (2021年6月30日). 2021年8月17日閲覧。
  21. ^ G7首脳会談 「ロシアのG8参加停止」を採択 G7と対立 「新たな冷戦時代」に突入2018-11-02閲覧
  22. ^ 「日本こそがアジアで正真正銘の先進国」と言われるのは一体なぜか=中国報道 (2020年5月5日)”. エキサイトニュース. 2020年6月20日閲覧。
  23. ^ サミットに注目! そもそもなぜこの7カ国? | 就活ニュースペーパーby朝日新聞 - 就職サイト あさがくナビ”. asahi.gakujo.ne.jp. 2020年6月20日閲覧。
  24. ^ a b G7サミットに象徴される帝国主義時代とたいして変わっていない統治の仕組み[橘玲の世界投資見聞録]”. 橘玲×ZAi ONLINE海外投資の歩き方 | ザイオンライン. 2020年6月20日閲覧。
  25. ^ a b Shultz, George P. (1993). Turmoil and Triumph: My Years as Secretary of State. p. 148. ISBN 0-684-19325-6.
  26. ^ Bayne, Nicholas; Putnam, Robert D. (2000). Hanging in There. Ashgate Pub Ltd. 230 pages. ISBN 075461185X. p. 20.
  27. ^ Farnsworth, Clyde H. (8 May 1977). "A Secret Society of Finance Ministers," New York Times.
  28. ^ 日本・アメリカ以外の全メンバー国が欧州共同体構成国。
  29. ^ 内容全文 外務省
  30. ^ ロイター 2014年3月25日配信版
  31. ^ 「G7拡大を」トランプ発言に日本困惑 避けたい米中対立激化 守りたいアジア代表枠
  32. ^ G7敵に回す戦狼外交と歴史改変、習近平氏の意外な目的”. 日本経済新聞 (2021年5月12日). 2023年9月6日閲覧。
  33. ^ a b 「G7は北京侵攻した8カ国連合」…中国、安保理招集し攻撃”. 中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします. 2023年9月6日閲覧。
  34. ^ Times, Global. “G7 no longer has the domineering power of Eight-Nation Alliance: Global Times editorial - Global Times”. www.globaltimes.cn. 2024年4月21日閲覧。
  35. ^ ウクライナに兵器を供与し続けることが正義なのか 「停戦」を呼びかけた意見広告から考える”. 東京新聞. 2023年6月4日閲覧。
  36. ^ 北朝鮮、米のミサイル供与非難「ウクライナの代理戦争が狙い」”. 北國新聞. 2023年10月21日閲覧。
  37. ^ よくわかるG7 世界シェアと勢力”. 日本経済新聞社 〜ビジュアルデータ. 2020年6月20日閲覧。
  38. ^ G7の名目GDP(USドル)ランキング - 世界経済のネタ帳”. ecodb.net. 2020年6月20日閲覧。
  39. ^ イギリス経済、G7で唯一のマイナス成長見通し=IMF”. BBCニュース (2023年1月31日). 2023年2月6日閲覧。
  40. ^ 開催迫るG20大阪サミット、G7とは何が違う? 坂東太郎のよく分かる時事用語(THE PAGE)”. Yahoo!ニュース. 2020年6月20日閲覧。
  41. ^ 形骸化が進むG7とG20機能強化の必要性 | 2019年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)”. www.nri.com. 2020年6月20日閲覧。
  42. ^ 日本放送協会. “「G7サミット開幕 存在問われる会議に」(時論公論)”. 解説委員室ブログ. 2020年6月20日閲覧。
  43. ^ “情報BOX:イカルイトG7、景気刺激措置と出口戦略に関する要人発言”. トムソン・ロイター. (2010年2月7日). http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-13759420100207 2010年12月24日閲覧。 
  44. ^ 中ロの領土変更を批判 G7結束、サミット閉幕 - 日本経済新聞、2015年6月8日版
  45. ^ 岸田外務大臣会見記録”. www.mofa.go.jp. 外務省. 2020年2月19日閲覧。
  46. ^ 欧州、トランプ氏の中国包囲網「わな」警戒-G7欠席は最終手段だが”. Bloomberg.com (2020年6月15日). 2020年6月24日閲覧。
  47. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2020年6月2日). “【主張】G7の延期 拡大より結束を優先せよ”. 産経ニュース. 2020年6月24日閲覧。
  48. ^ トランプ氏、ロシアをG7に招待 英・カナダは…(写真=ロイター)”. 日本経済新聞 電子版 (2020年6月2日). 2020年6月24日閲覧。
  49. ^ 中国メディア「韓国はたいしたことないのに、なぜG7参加? 」(WoW!Korea)”. Yahoo!ニュース. 2020年6月28日閲覧。
  50. ^ トランプ氏の韓国G7招待に中国が「その国は大した力もない。意味ない」と上から目線(西岡省二) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2020年6月28日閲覧。
  51. ^ 日本、拡大G7の韓国参加に反対 対中、北朝鮮外交に懸念:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2020年6月28日閲覧。
  52. ^ 日本が、拡大G7の韓国参加に反対”. Pars Today (2020年6月28日). 2020年6月28日閲覧。
  53. ^ 日本、拡大G7の韓国参加に反対 対中、北朝鮮外交に懸念 | 共同通信 ニュース”. 沖縄タイムス+プラス. 2020年6月28日閲覧。
  54. ^ 米はG7枠組み変える権限なし、EU外相が批判 - SankeiBiz(サンケイビズ)”. www.sankeibiz.jp. 2020年7月6日閲覧。
  55. ^ トランプ氏にG7の枠組みを変える権限はない、EU外相”. www.afpbb.com. 2020年7月6日閲覧。
  56. ^ 日本に続きドイツも、韓国など含めるG7拡大に反対=韓国ネット落胆「外交力はゼロ」|ニフティニュース”. ニフティニュース. 2020年8月4日閲覧。
  57. ^ 日本政府、G7の枠広げる英国の提案に反対-外交公電で懸念示す”. Bloomberg.com. 2021年8月17日閲覧。
  58. ^ G7首脳 オンライン会合 ウクライナに防空システム供与へ調整 | NHK”. NHK NEWS WEB. 2023年2月6日閲覧。
  59. ^ 米議会、ロシアのG7復帰に反対 ParsToday2019年12月4日
  60. ^ トランプ米大統領、6月のG7首脳会議をテレビ会議で実施へ ロイター2020年3月20日
  61. ^ “トランプ氏、G7サミットの通常開催検討 「正常化の象徴に」”. 産経新聞. (2020年5月21日). https://web.archive.org/web/20200604034825/https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200521/mcb2005211035025-n1.htm 2020年5月27日閲覧。 
  62. ^ G7サミット、通常開催せず 75年以来初、協調発信逃す 共同通信2020年12月29日
  63. ^ UK to host G7 Summit in Cornwall”. Prime Minister's Office, 10 Downing Street (2021年1月23日). 2021年1月25日閲覧。
  64. ^ G7広島サミットが閉幕 ゼレンスキー氏が討議に参加、岸田氏が成果を説明  BBC 2024年3月27日
  65. ^ ドイツがG7の拡大に反対「現状が合理的」 韓国「合意必要」 聯合ニュース2020年7月27日
  66. ^ 日本政府、G7の枠広げる英国の提案に反対-外交公電で懸念示す Bloomberg 2021年1月27日
  67. ^ サミット集合写真、実はシンプルな立ち位置ルール”. 日本経済新聞 (2016年5月26日). 2017年11月7日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「主要国首脳会議」の関連用語

主要国首脳会議のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



主要国首脳会議のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの主要国首脳会議 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS