ロースター (MLB)
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登録リスト
ロースター内の選手が特定の理由により試合出場不可能となった場合、以下の各種リストに登録することで該当選手は出場メンバーから一時的に離脱し、ロースターの人数勘定から外れる。これにより枠が空き、代替選手を40人枠や傘下マイナー組織などから補充することができる。なお代替選手の登録や再降格に際しては特別な優遇措置は無く、通常と同じくCall-up/Option等の手順を踏む必要がある。
負傷者リスト (Injured List)
「10日間ILまたは15日間IL」に登録中の間、選手はアクティブ・ロースターの人数勘定から外れる(他選手をアクティブ・ロースターに補充することができる)。「60日間IL」に登録中の間、選手は更に40人枠の人数勘定からも外れる(他選手を40人枠に加えることができる)。
忌引リスト (Bereavement List) / 家族救急リスト (Family Medical Emergency List)
アクティブ・ロースターの選手の家族(2親等内の血族、配偶者およびその両親)に不幸があった、または救急医療の必要が生じた場合、選手は最低3日間・最高7日間一時離脱できる。各リストに登録中の間、40人枠の他選手をアクティブ・ロースターに補充することができる。なお離脱期間が7日間を超える場合、制限リスト(後述)への登録に移行する必要がある[14]。
父性リスト (Paternity List)
Paternity List(直訳:父性リスト) は2011年シーズンから導入された。アクティブ・ロースターの選手が家族の出産に立ち会う、産後に母子の世話をするなどの理由で24時間から72時間の一時離脱が許可され、離脱中は40人枠の他選手をアクティブ・ロースターに補充することが可能になった。MLBでは家族の出産に立ち会うため試合を休む選手は珍しくないが、この制度が出来るまでは代替選手の登録などは不可能だった。
初適用は、2011年4月15日にレンジャーズのコルビー・ルイスで、第2子の出産後にチームから一時離れた[25][26]。
制限リスト (Restricted List)
薬物規定違反や事件関与などによりMLB機構から出場停止処分を科された選手は、自動的に制限リスト (英: Restricted List) に登録される。また、選手の私的な事情(卒業まで学業優先、無断離脱や行方不明、チーム内での不祥事や揉め事、アルコール依存症のような本人の責に帰する病気など)により、各チームが制限リストへの選手登録をMLB機構に申請する場合がある。登録された選手は40人枠の人数勘定から外れ、登録期間の日数分はサービスタイムに加算されず、球団側に賃金の支払い義務も発生しない。加えて、選手はチーム帯同や練習への参加、球団保有施設の利用が制限される場合もあるが、選手の保留権は球団が引き続き保持した状態となる。[27]
管理休職 (Administrative leave)
特定の理由(事件や事故の事実調査、制限リスト登録の妥当性調査など)により、MLB機構は選手を7日間休職させることができる。制限リストとは異なり、休職期間中もサービスタイムは加算され、賃金も支払われる。なお、選手およびMLB選手会は、この措置に異議申し立てを行うことができる。また、MLB機構は調査終了まで休職期間を延長できるが、その際はMLB選手会の同意が必要となる[28]。近年では、トレバー・バウアー(2021年)、ワンダー・フランコおよびフリオ・ウリアス(ともに2023年)などの適用例がある[29]。
注釈
- ^ a b 40人枠(メジャー契約)と、40人枠外(マイナー契約)では最低保証年俸に大きな差がある。2020年時点で、メジャー契約選手の最低保証年俸は563,500ドル。マイナー契約では10,000ドル未満となることも。“Transaction Glossary” (英語). Cot's Baseball Contracts. 2019年12月4日閲覧。 / “あまりの格差に3A選手が給料明細公開 年俸約88万円が米で話題「夢へと近づく一方で…」”. Full-Count. (2019年10月9日) 2019年10月9日閲覧。
- ^ ただし、8月31日の時点で60日間の負傷者リスト入りした日から60日以上経過している選手がいる場合は、その選手の代わりに8月31日に40人枠に入っていない選手の登録をコミッショナー事務局に請願できる。2014年のポストシーズンにブランドン・フィネガンがこの例外を適用した[2]。また、2014年までは、8月31日時点で当該チームの25人枠に入っていないとポストシーズンには原則出場できなかった(負傷者リスト入り選手発生時には40人枠の選手が代替出場可能)が、2015年から本文記載の規定に変更された[3]。
- ^ 2022年シーズンでは、延長戦又は(勝敗・イニングを問わず)6点差以上開いていることが要件だった。
- ^ MLB公式サイト (David Adler) は「TWPを作りたい場合、まずは投手枠で登録し、試合出場を重ねるのが妥当な手段になる。しかし投手力がMLBレベルに達していない未熟な選手の場合、TWP区分を取得するまでの間はチームの投手枠を1人分圧迫することになるため、真に有能でないTWP候補選手はその価値を失う」という旨の解説もしている。
- ^ ただし、同じく2022年シーズンから定められた「先発投手の指名打者との同時起用」についても「Ohtani rule」と呼ばれているので注意が必要である。
- ^ 例えば、2018年は186日間。
- ^ このため、マイナー降格させられない選手をアクティブ・ロースターから外したい場合はDFA、負傷者リストの利用といった手段で枠を空けることになる。
- ^ ベースボール・アメリカ、ESPN、MLB Pipeline(MLB.com)のうち、2つ以上の「Top100 プロスペクト」に選出され、且つサービスタイム0.060以下で、且つ年俸調停権取得前の新人王有資格選手。よって例えば、NPBで活躍し、FA権を取得した後に特例契約でMLBへ移籍した選手などは対象外となる。
- ^ 各年において、メジャーリーグおよび傘下マイナーリーグ各フェイズでアクティブ・ロースター入りしていた日数の総和が90日間以上だった場合、プロ在籍1年とみなされる。
- ^ 例外的に、一定条件下でオプションできる条項をFA選手などとの契約時に盛り込むことは可能。- RICARDO SANDOVAL (2023年5月14日). “Angels News: Jake Lamb Optioned Down as Chess Move by Phil Nevin”. Sports Illustlated 2023年6月20日閲覧。
- ^ なお、40人枠から外れた選手は同じく飼い殺し対策として制定されたルール5ドラフト(12月開催)において他球団から指名される可能性が発生する。
- ^ 計算上、2020年レギュラーシーズン期間66日のうち61日以上アクティブ・ロースターに登録されていれば、1年分のMLSを得られることになる。Jeff Passan (2020年6月27日). “Inside MLB's 2020 season plan to play through a pandemic -- and where it could go wrong” (英語). ESPN.com 2020年6月29日閲覧。
出典
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- ^ a b David Adler (2020年8月6日). “Team rosters can stay at 28 through season”. MLB.com 2020年9月11日閲覧。
- ^ “A guide to the 2021 MLB season”. MLB.com. (2021年4月3日) 2021年4月8日閲覧。
- ^ “New rules for '22 to affect 2-way players, extra innings” (英語). MLB.com. (2020年3月31日) 2020年4月1日閲覧。
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