ナトリウム・硫黄電池
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 09:02 UTC 版)
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ナトリウム・硫黄電池は、活物質であるナトリウムや硫黄を溶融状態に保ち、β-アルミナ電解質のイオン伝導性を高めるために高温(約300[1] - 350 ℃[2][3]) で運転される。負極の溶融ナトリウムは、β-アルミナとの界面でNa+に酸化され電解質を通って正極に移動する。正極ではNa+が硫黄によって還元されて五硫化ナトリウム(Na2S5)となる。電池反応(放電反応)は次の通り。
- 負極:
- 正極:
- 全反応:
放電初期では上記の反応が進行するが、放電が進行して未反応の硫黄がすべて消費されると、Na2S5は次第に、より高い原子価の硫黄の組成(Na2Sx, x=2~5)の多硫化物に転化していき、やがて二硫化ナトリウム(Na2S2)となる。ただし、Na2S2は内部抵抗が高く充電特性が悪いため、通常はNa2S2を生成しない範囲内で作動させる。充電反応は、上記放電反応の逆反応が進行する。
特徴と用途
長所
従来の鉛蓄電池に比べて体積・質量が3分の1程度とコンパクトなため、揚水発電と同様の機能を都市部などの需要地の近辺に設置できる。また出力変動の大きな風力発電・太陽光発電と組み合わせ出力を安定化させたり、需要家に設置して、割安な夜間電力の利用とともに、停電時の非常時電源を兼用できる。また構成材料が資源的に豊富かつ長寿命[1]、自己放電が少ない[1]、充放電の効率も高い[2][1]、量産によるコストダウンも期待できる[1]などの長所を併せ持つ。
短所・課題等
常温では動作しないため、ヒーターによる加熱と放電時の発熱を用いて、作動温度域(300 ℃ 程度[1])に温度を維持する必要がある。充放電特性が比較的長い時間率(6 - 7時間[1])で設計されている。また現状では、一定期間内に満充電リセットの必要がある[1]。
火災事故を起こした場合、通常の水系の消火薬は金属ナトリウムと反応してしまうため使用できない(乾燥砂等を用いる)。このため一般の消防では火災への即応が難しい。
劣化要因
内部抵抗増加(効率低下)の原因として単電池内容器の腐食、金属硫化物が挙げられる。
また容量低下の原因としてナトリウムと電池容器内表面の金属元素が一部溶出して分解しにくい化合物が生じることによる残量低下が挙げられる。
もっとも耐蝕性にすぐれた材料の使用、正極電極材の構造や充電方法の改善によって8000サイクル以上使用しても大きな性能劣化が無いことが確認されている。[4]
- ^ a b c d e f g h “系統安定化に向けた蓄電池技術の動向と課題 (PDF)”. 独立行政法人産業技術総合研究所 ユビキタスエネルギー研究部門 辰巳国昭 (2008年8月8日). 2011年6月30日閲覧。
- ^ a b “基礎講座「電気エネルギー 蓄積技術の現状と適要」 (PDF)”. 社団法人 建設電気技術協会 (2003年3月). 2011年6月30日閲覧。
- ^ 野村栄一, 松井一真, 高嶋皓一郎, 飯島繁, 松尾康史「電力貯蔵用1000kWナトリウム-硫黄電池の開発」『電気化学および工業物理化学』第61巻第8号、電気化学会、1993年、 968-971頁、 doi:10.5796/electrochemistry.61.968、 ISSN 0366-9297、 NAID 130007707346。
- ^ 日本ガイシ株式会社 NAS 技術部 大坂 伸一郎 (9 2015). “コンテナ一体型ナトリウム・硫黄電池”. Safety & Tomorrow 163: 34-43 .
- ^ “2010年02月18日 NAS電池の火災発生のお知らせとお詫び”. 日本ガイシ株式会社. 2011年6月30日閲覧。
- ^ “2011年09月22日 NAS電池の火災発生のお知らせとお詫び”. 日本ガイシ株式会社. 2011年9月22日閲覧。
- ^ “NAS電池の火災事故に関するご質問”. 日本ガイシ株式会社. 2012年7月9日閲覧。
- ^ “NAS電池の火災事故の原因、安全強化対策と操業再開について”. 日本ガイシ株式会社 (2012年6月7日). 2013年8月6日閲覧。
- ^ “NAS電池を年産150MWに増強”. 日本ガイシ株式会社 (2008年7月28日). 2011年6月30日閲覧。
- ^ “日本ガイシ、NAS電池を用いた電力調整事業に参加”. 畑陽一郎,EE Times Japan (2010年2月10日). 2011年6月30日閲覧。
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- 2 ナトリウム・硫黄電池の概要
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